|
2022年度大阪市一般会計等決算に対する 山中議員の反対討論 |
山中智子市会議員 2023年11月22日 |
私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2022年度大阪市一般会計等決算の認定に反対の討論を行います。
本決算年度である2022年度は、新型コロナ危機による景気の低迷、失業、倒産など、市民生活が困難を極めるなか、ガソリン、食料品、電気料金をはじめとした物価の高騰が襲いかかり、市民のくらしや営業に深刻な影響を及ぼしました。岸田政権は、アベノミクスと「異次元の金融緩和」に固執し、物価高騰への手立てはごくごく一部にとどまり、多くの国が物価高騰対策として踏み切った消費税減税は一顧だにしませんでした。また、厳しい経営状況にある中小企業への支援も非常に乏しく、帝国データバンクによれば物価高による倒産が前年度の3.4倍に増加するという深刻さでした。一方で、「敵基地攻撃能力」の保有と大軍拡を宣言した「安保3文書」を閣議決定し、「軍事費2倍化」とそのための大増税を打ち出し、国民を一層不安に陥れました。
こうした無為無策の国の政治から、市民の命、くらし、中小業者の営業を必死で守るべき大阪市が、その役割を果たすどころか、相も変わらずIRカジノや万博に血道をあげ、夢洲関連のインフラ整備に惜しげもなく公金をつぎ込む一方で、物価高騰に苦しむ市民の命、くらし、営業を守る施策は極めて乏しいものだったと言わざるをえません。国の交付金を活用した学校給食費の無償化、上下水道料金の減額、プレミアム付き商品券などはありましたが、「食べていけない」という悲鳴に応えるものではありませんでした。財政調整基金はまた積み増しして、2022年度末2,452億円となりましたが、こんな非常事態にこそその一部を活用して、日本一高い介護保険料や国民健康保険料の軽減など、なすべきことはいくらでもあったのに、やらないどころか国民健康保険料にいたっては物価高騰の最中、値上げさえしたのです。市民の命を守り、暮らしを支えるものとは程遠く、とうてい認められません。
以下、具体に申し上げます。
第一に、市民の命、くらしを守る問題です。
大阪では、新型コロナ感染拡大でもっともたくさんの方が命を落とされました。本決算年度も第7波、第8波の流行で、保健所はパンクし、医療はひっ迫、高齢者施設のクラスター、救急搬送困難など救える命が救えない事例や悲鳴が満ち満ちていました。現在、5類に移行したとはいえ、コロナ感染症が終息したわけではなく、新たな波の襲来や、強毒化する可能性も指摘されています。悲劇を繰り返さないためには、小手先の対応策ではなく、保健所体制の抜本的拡充をはじめ、市民に接する職場やケア労働者を思い切って増やさなければ、いざという時に、どうにもならないことがはっきりいたしました。保健士さんの増員はわずかで、感染症拡大の際はまた他部署からの応援などで乗り切ろうとしていますが、応援を出したら市民サービスに影響が出かねないところまで職員が減らされていることへの深刻な反省がない姿は、市民の命を軽んずるものだと言わざるを得ません。
第二に、教育についてです。
コロナ感染が広がり始めたころ、密を避けるための分散登校が全国的に実施されました。何人かの先生から、「子どもが半分になった教室で、こんなに子どもの顔が見えるんだと驚いた」という話を聞きましたが、あらためてクラスサイズを小さくすることのメリットが実感され、ほとんどの都道府県・政令市が、国基準を超える少人数学級を実施するようになりました。福岡市は今年度から小中学校全学年を35人学級以下としましたが、そんなふうに、小中学校の全学年を35人以下とか32人以下などとしている政令市も少なくありません。教員の長時間労働が大問題となり、全国的に教師不足が深刻化するなかだからこそ、教員の負担軽減のためにも、より良い教育のためにも、少人数学級は最低限必要な教育条件の整備である、という認識が広がっているからです。この流れに背を向け続け、クラスサイズを小さくすることをまったく検討しないで、現在の学級数を前提に条例までつくって統廃合を進める大阪市のあり様は異様というほかありません。
また、ここ数年、夏の暑さは酷暑としか言いようのないものであり、小学校の体育館にもエアコンがなければ教育活動に支障をきたすほどとなっており、多くの方面から切望する声が上がっていますが、これも言を左右にして踏み出そうとはしませんでした。「誰一人取り残さない」などと言いながら子どもたちをテスト漬けにするより、子どもたちが安心して心豊かに過ごせる教育環境をつくることが肝要だと申し上げたいと思います。
第三に街づくりについてです。
万博やIRに関わるインフラ整備の費用が折からの資材高騰や工賃の引き上げで、あれもこれも上振れする現象が続いています。万博会場へのシャトルバス専用道路にするとされる淀川左岸線2期事業は当初1,162億円だった事業費が2020年度には1,918億円となり、本決算年度にはなんと2,957億円と2.5倍にも増嵩しました。工法の変更で完成も大幅に遅れ、万博開幕に間に合わないため、トンネル未完成の部分は仮設道路を建設することになったわけですが、たった半年間で撤去する仮設道路に50億円です。いま問題となっている万博会場建設費の上振れといい、IR事業者のいいなりに土壌対策費を負担するはめになりかねない夢洲のIR用地といい、とんでもない“金食い虫”にほかなりません。
2,350億円に膨れ上がった万博の会場建設費は、いうまでもなく国と府市そして経済界が三分の一ずつの負担ですから、国民でも、府民でも、市民でもある大阪市民はトリプルで負担がのしかかり、一人当たり1万9,252円、4人家族なら7万7千円もの負担です。物価高騰で、なにを削ろうか悩みながら暮らしている市民の理解を得られるはずがありません。そのうえいったい工事が間に合うのかどうか、建設業界からも否定的な声があがっているではありませんか。あらためて、万博は中止すべきと申し上げておきます。
IRカジノについても同様です。
コロナ禍など、この間の内外情勢の変化ともあいまって、大阪のIRカジノに来訪する外国人観光客がほとんど望めないということがはっきりいたしました。いよいよカジノのターゲットは大阪周辺の一般市民ということになります。しかも、2030年秋ごろ開業という実施協定を結んでおきながら、事業者側はIRを開設するかどうかの最終判断を下していないというではありませんか。
要するにカジノ事業者側は、すでにオンラインカジノにシフトしていることから1兆2700億円もの莫大な投資を要する大阪IRから撤退したいということではないでしょうか。
にもかかわらず、府と市の側が必死につなぎとめようと、3年先まで事業者側の最終判断を待つというわけです。言語道断といわなくてはなりません。
人を不幸にしてやまないカジノ、キッパリと中止するよう強く申し上げておきます。
こうして、街づくりのためのお金も人も、巨大開発に集中させるなかで、270万人市民が住み暮らす街はどうなっているでしょうか。
この間、ただでさえ緑の少ない本市で、「安全対策事業」の名で公園樹や街路樹が次々に伐採され、各地で驚きの声が上がりました。建設局が繰り返す「台風などの自然災害に備え、市民の安全・安心を守るため」という説明に疑問をもたれた市民の皆さんが樹木医に鑑定を依頼され、樹木医が撤去対象樹木から抽出して調査をしたところ、そのうちの83%が「専門的な見地から撤去の理由がまったく見当たらない」という鑑定書を出されたのです。しかも逆に、「撤去対象外の樹木に倒木などのリスクの点で問題があるものも少なからず確認され」、したがって、「『安全対策事業』における撤去・植え替え対象樹木の選定は、その根拠に合理性を欠いているものが多く含まれている可能性が高い」と鑑定しておられます。撤去する必要のないものを伐採することも、危険な樹木を放置して、災害の際、市民に被害を及ぼすことも、どちらも許されません。専門的な見地に基づき慎重に進めるべきところを、維持管理にかかるコストを抑制するために、安易に樹木を減らそうとしているのではないか、と疑念を抱かざるをえません。とんでもない話です。 以上、反対討論といたします。 |