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市議団の実績

2024年度大阪市一般会計等予算案への
井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2024年3月27日

  私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2024年度大阪市一般会計等予算案に反対する討論を行います。

 内閣府は3月22日、「社会意識に関する世論調査」の結果を公表しましたが、調査において現在の社会で満足していない点を複数回答で尋ねたところ、63.2%が「経済的ゆとりと見通しが持てない」と答え、この質問を始めた2008年以降で過去最高となり、内閣府は、「物価高の影響がある」としています。

 また、ある民間研究機関によると(みずほリサーチ&テクノロジーズ)、生鮮食品を除く総合消費者物価指数を予測し物価変動を推計した結果、2022年度〜2024年度の3年間の物価高騰により、2021年度とくらべた2024年度の年間家計負担は1世帯(2人以上)当たり28万円増えるとのことです。

 こうした状況を踏まえ、地方自治体としてあらゆる手立てを尽くし市民生活を守らなければなりませんが、本予算案に見られるのは、夢洲を舞台としたインフラ整備など大型開発の数々には惜しみなく税金をつぎ込む一方、市民のくらしを守る責務を果たしているとは到底言えない中身であります。

 

 以下、具体に指摘いたします。

 第一は、くらしや営業をめぐり、市民の切実な声に応えるものとなっていない点です。

 まず国民健康保険料、介護保険料、および物価高対策についてです。

 本市の国保会計は、後期高齢者医療制度が実施された2008年度からほぼ毎年、単年度黒字を重ね、2022年度末には国保基金に83億円の残高を積み立てるまでに至っています。ところが、2024年度からは府内統一保険料率の完全実施により、本市独自の任意繰り入れによる国保料の軽減が原則できなくなります。来年度、国保料の11.4%もの過去最大の引き上げが強行されれば、国保の都道府県単位化前の2017年度から、実に33%も引き上げられることになります。物価高騰で苦しむ市民に追い打ちをかけるように、耐えがたい痛みを押し付けるのではなく、逆に国保料を引き下げ市民生活を支援すべきであります。

 介護保険料の高さも異常であり、第9期の一人当り月額基準額9249円、14.3%の改定が示されました。本市の介護保険料は政令市比較でも突出しており、第8期からのアップ率は政令市平均が4.9%のところ本市は14.3%とケタ違いであり、いかに引き下げの努力をしていないか数字が端的に示しています。全国一高い介護保険料の引き下げに、真剣に取り組むべきであります。

 また、本市独自の物価高対策は極めて乏しく、昨年10月から12月にかけて上下水道の基本料金は免除されましたが、物価が高騰し続けている状況に鑑みれば、3ヶ月で打ち切るのではなく継続すべきであります。加えて、燃料代の高騰で苦境に立たされている公衆浴場に対し、固定資産税三分の二の減免制度を今こそ復活し、公衆衛生事業を行政の責任で支援するべきです。

 

 第二は、医療・教育・公共交通など様々な分野で、公共の役割の大切さが改めて認識されているにも関わらず、「新・市政改革プラン」においても、民営化・民間委託や統廃合、職員減らしが市民サービスを低下させているという、改革のマイナス面をまともに検証せず、ますます民間活力の活用を推進するとしている点です。

 まず、医療についてです。

 新型コロナウイルスの拡大という危機を経験したことにより、公的医療の重要性が改めて浮きぼりになりました。昨年12月、住吉市民病院跡地に整備する新施設の概要および建設工事についての説明会が開催されました。そこでは、「住之江区内に出産できる病院がなくなってしまった。住吉市民病院のように小児周産期医療を整備するとともに、認知症の患者さんだけではなく、誰もが診てもらえる総合病院とするべき」との意見が多く出されました。本市として「産科10床、小児科10床」という当初の約束を守るとともに、住吉市民病院が担ってきた公的医療の継承を前提に新病院計画を見直すべきであります。

 

 次に教育についてです。

 こども達や保護者に寄り添った教育活動を実践するとともに、全国でも突出して多い不登校・いじめへのきめ細かい対応を行うためにも、また教員の負担軽減のためにも、正規の教職員や講師を増やし少人数学級の推進を図ることは喫緊の課題です。ところが、教育現場の人手不足は解消されず、小中学校の少人数学級についても、20政令市の中で国基準への上乗せに背を向け続けているのは本市を含め2市だけであり、断じて許せません。教職員や講師を増やし、不十分な国基準を上回る少人数学級の実施に踏み出すべきであります。

 また、天王寺中学校と文の里中学校の夜間学級を廃止し、2024年度から不登校特例校として開校する心和中学校の夜間部に統合するとしています。夜間中学の関係者は今も両校の存続を強く求めていますし、不登校特例校の設置についても現場の声を十分踏まえたものとは言えません。夜間中学は、学ぶ権利を保障されなかった人たちが、やっとの思いでたどりついた学び舎であり、国も夜間中学を増やす方針にある中、既存の実績ある夜間中学を廃校にする理由はありません。そのまま存続し、一人ひとりの生徒の学ぶ権利を保障し続けるべきです。

 続いて、公共交通について申し上げます。

 大阪メトロは昨年7月から、駅改札窓口への駅員の非常駐化を進めており、特に視覚障がい者団体をはじめ、障がいのある方からは「駅員を減らすなど本末転倒だ」といった声が上がっています。公共交通の最大の使命である安全を確保するためにも人員削減は止めるべきであり、本市として大阪メトロに厳しく改善を求めるべきであります。

 

 第三は、ムダな大型開発を立ち止まることなく推し進める一方、環境に配慮した緑の多いまちづくりには逆行している点です。

 建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を今年受賞された山本理顕氏は、大阪・関西万博について、「あれほどひどい計画は建築家から見たらありえない。日常生活を阻害するような施設がカジノ。社会貢献することを前提にしている博覧会に対して、明らかにカジノのための万博になっている」と厳しく批判されました。まさに本質を突く発言であり、多くの国民・市民感情を代弁するものと確信します。

夢洲での万博開催の意図は、公金によるインフラ整備をはじめとした、IRのためのありとあらゆるお膳立てを行なうことにあります。

万博・カジノは中止し、市民のくらしの応援と能登半島地震の復旧・復興に全力を傾けるべきであります。 

 また、淀川左岸線2期事業についても、災害対策に逆行し環境に与える負荷も大きいため、本事業は中止するべきであり、淀川左岸線延伸部事業についても同様に中止すべきと申し上げておきます。

 

 この間、公園樹・街路樹を大量に伐採・撤去する「安全対策事業」が問題になっています。

 本来、安全対策というのは、恒常的に取り組むべき仕事であり、今回短期集中で事業を進めたことにより、本市の委託した樹木医が健全と診断した樹木まで建設局が「総合的判断」と称し、拙速に伐採・撤去されていきました。「総合的判断」の根拠が極めて不明確なため、その説明を求める市民を中心に大きな市民運動が起こり、この間くり返し議会には多数の陳情書が提出されました。

 1964年に「一本でも多く木を植え、みんな大切に育てます」と誓った、本市の「緑化100年宣言」にも地球温暖化対策にも逆行する、公園樹・街路樹の大量伐採はすみやかに中止し、この間の教訓を踏まえ樹木の剪定、維持管理は日常的にキメ細かく行うとともに、安全対策として伐採・撤去が必要な場合は、専門的知見と合理的根拠にもとづき、市民への丁寧な説明を双方向で行いながら進めるべきであります。

 

以上反対討論といたします。