|
2023年度大阪市一般会計等決算および 大阪市公営・準公営企業会計の決算への 井上議員の反対討論 |
井上ひろし市会議員 2024年11月29日 |
私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2023年度 大阪市一般会計等決算および、公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。
厚生労働省が、11月7日に発表した9月の毎月勤労統計調査によると、名目賃金に物価の変動を反映させた実質賃金のマイナスは2か月連続、前年同月比でも0.1%減となり、依然、物価上昇のペースに給与の伸びは追いつかない状態が続いています。物価は上がり続けているのに、働く人たちの収入は増えない、年金も上がらない。市民生活はいっそう困窮の度合いを強めています。くらしと家計が押しつぶされそうな今こそ、地方自治体本来の役割を発揮し、市民生活と中小企業の支援に全力を挙げるべきです。
ところが、公共の役割とくらしの応援は後景に追いやりながら、万博やIR・カジノ誘致など、大型開発は前のめりで推し進めてきた本決算は到底容認できません。 以下、具体に申し上げます。 第一に、くらし・福祉に関わる問題です。 まず国民健康保険料についてです。
国民健康保険は、今年度から府内統一化となり、本市の一人当たり平均保険料は昨年度から1万8443円、11.4%の値上げとなりました。国保の府内統一化は、市町村が独自に一般会計から任意繰り入れによって実施してきた、保険料の軽減や減免ができなくなるとしています。
本決算委員会において福祉局は、「法的には、統一化後も自治体独自の保険料の軽減や減免は可能」と、各自治体の「主体的判断」までは否定できないことは認めつつも、これら市民負担の軽減策には否定的な答弁に終始しました。国保は、国保法第1条に規定されている通り「社会保障」なのであり、制度の本来の主旨にそって、本市独自の任意繰り入れと減免を継続するべきであります。国の思う通りに統一化が進まないのは、多くの自治体において急激な国保料の値上げにつながる仕組みだからです。にもかかわらず、大阪府・市は市民の窮状などおかまいなしに、率先して統一化を進めたのであり到底認められません。 続いて介護保険料についてです。
本市の65歳以上の介護保険料、基準月額は、今年4月の改定で9249円となり、全国一高額となりました。 介護保険財政の国の負担割合は、2000年の制度導入時から24年経った今でも、25%のままであり、現在の制度はすでに限界にきています。
本市として、国庫負担を大幅に増やすよう、国に強く要望すると同時に、本市独自に直接介護保険料を引き下げる具体的な取り組みを行ない、「全国一高い保険料」の汚名を返上すべきであります。
ところが市長は「早急な対応が必要」としつつも、「保険料を軽減するために一般財源は投入できない」と答弁しました。しかしながら、地方自治体による一般財源からの繰り入れを禁じる法律も、法令上の規定も罰則も一切ないのであり、「一般財源を投入できない」のではありません。
介護予防事業に積極的に取り組み、健康寿命を延ばしていくための様々な施策は当然必要ですが、ただただ自助努力を説くだけでは、介護保険料の高騰に歯止めがかからないのは自明のことです。
今こそ、一般財源の投入を含め、あらゆる知恵と力を出して市民負担の軽減に努めるべきであります。 次に、生活保護行政についてです。
本市は、生活保護利用者に就職支援を行う「総合就職サポート事業」を、パソナやアソウなどの大手派遣会社に民間委託しています。
同事業は、各行政区の保健福祉センターに派遣された社員が、利用者への就職アドバイスを行ない、派遣会社保有の求人を紹介するものです。保護廃止とならなくても就職につながれば、3ヶ月分の就労収入認定額の5%が加算され、廃止の場合は2倍の10%が加算される仕組みであり、2023年度の委託料は、約6億2400万円、加算額は1400万円にものぼります。
派遣会社社員の「成果」に応じて、「報酬」が上がり下がりする仕組みが、利用者の意に反する強引な就職支援につながっているとの現場の声も聞かれ、生活保護行政にまで大手派遣業者のもうけ口を拡大することは到底認められません。そもそも「総合就職サポート事業」は公務として行政が責任を持つべきであり、一人ひとりの利用者に寄り添えるよう、人員不足の福祉現場に専門資格をもつケースワーカーを増員すべきであります。 第二に教育についてです。
教育委員会によると、2023年度の本市の小中学校における不登校児童生徒数は、7144人でありますが、本決算委員会において、「スクールカウンセラーによる週1回の相談体制では予約が取りにくい状況となっている。」という、不登校の中学生の保護者から私が直接お聞きした声を紹介し、スクールカウンセラーの体制強化を求めました。
スクールカウンセラーの体制強化はもとより、少人数学級を進め一人ひとりの児童・生徒に寄り添える教育環境を整備することが大前提です。ところが、小中学校の少人数学級について、20政令市の中で、不十分な国基準への上乗せに未だに背を向けているのは、本市を含め2市だけであり、クラスサイズを小さくすることを検討せず、条例までつくって統廃合を進める本市の教育行政は異様というほかありません。
この保護者は、「大阪市の教育は、レールに乗っている子のことしか考えていないように感じることがある」ともおっしゃっていましたが、異常にテスト回数を増やし、児童・生徒を過剰な競争に駆り立て、教員の長時間労働と児童・生徒とのコミュニケーション低下にも拍車をかけている現状こそ改善すべきと申し上げておきます。 最後に、万博とIR・カジノについてです。
万博事業について、巨額の建設費・運営費が増加の一途をたどっていることは周知の事実です。
会場建設費は、当初の約2倍の2350億円となっており、大幅な増額の原因は物価・人件費の高騰だけでなく、「大屋根リング」への344億円もの投入をはじめ、そもそも無謀な計画自体にあります。また、運営費は1.4倍の1160億円に膨れ上がっており、このうちの969億円を入場券収入で賄うとしています。ところが、現在の販売ペースでは目標の2300万枚の達成も危ぶまれるだけでなく、避難所もなく食事は1日2食など、極めてずさんな避難計画の練り直しは必至であり、さらなる運営費負担の増加が市民・国民に転嫁される危険性を抱えたままです。
そもそも、廃棄物の最終処分場である夢洲には、道路や鉄道、上下水道の整備は必要なかったのであり、万博とその後のIR・カジノのための巨額のインフラ整備が、まさに市民生活と財政を圧迫しているのであります。
工事の大幅な遅れと費用の極端な増嵩、急ピッチの工事ゆえの安全性への懸念をはじめ、万博開催とIR・カジノ誘致のための夢洲大型開発を疑問視する声に対し、立ち止まろうともせず突き進む姿勢に全く道理はありません。 無謀で危険なカジノ・万博はきっぱり中止すべきと、改めて申し上げ討論とします。 |