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市議団の実績

2025年度大阪市一般会計等予算案への
井上議員の反対討論
 

井上ひろし市会議員

2025年3月27日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2025年度大阪市一般会計等予算案に反対する討論を行います。

 実質賃金はこれまで3年連続マイナスで、30年間もの長期にわたり低下傾向が続いており、ピーク時の1996年から年収で平均74万円も減少しています。

 物価は上がり続けているのに、働く人たちの収入は増えない、年金も上がらない。物価上昇のペースに収入は追いつかず、市民生活はいっそう厳しさを増しています。

 くらしと家計が押しつぶされそうな今こそ、地方自治体本来の役割を発揮し、市民生活と中小企業の支援に全力を挙げるべきですが、本予算案に見られるのは、上振れ続きの大型開発には惜しみなく税金をつぎ込む一方、市民のくらしを守る責務を果たしているとは到底言えない中身であります。

 以下、具体に申し上げます。

 

 第一は、厳しさを増す市民のくらしに寄り添うものとなっておらず、物価高対策も皆無であるという点です。

まず国民健康保険料についてです。

 国民健康保険は、2017年度まで各市町村が独自に財政を運営し、国保料を決める仕組みでした。しかし大阪府は、2018年度から全国に先駆けて「府内統一化」を進め、全市町村に対し、2024年度までに大阪府が示す「統一国保料」を導入するとともに、市町村独自の国保料減免制度や一般会計からの任意繰り入れを解消するよう求めてきました。

今年度からの「府内統一化」の本格実施により、本市の一人当たり平均保険料は今年度から1万8443円(11.4%)も値上げされ、来年度もほぼ横ばいと、その過酷な負担に変わりはなく、保険料引き下げの努力は全く払われていません。

 法的には、統一化後も自治体独自の保険料の軽減や減免は可能とされているのであり、各自治体が主体的に判断できることを福祉局も認めています。

 国が思い描くように統一化が進まないのは、急激な国保料の値上げにつながる仕組みだからであり、本市としても社会保障としての国保法の主旨にそって、独自の任意繰り入れと減免を継続するべきであります。

 物価高騰に苦しむ市民の窮状などおかまいなしに、率先して統一化を進めた大阪府・市の責任は重大であり、高すぎる国保料の軽減にこそ努めるべきであります。

 

 続いて介護保険料についてです。

 本市の65歳以上の介護保険料、基準月額は、昨年4月の改定で9249円となり、全国一高額となりました。

 介護保険財政の国の負担割合は、2000年の制度導入時から25年経った今でも、25%のままであり、現在の制度はすでに限界にきています。本市として、国庫負担を大幅に増やすよう、もっと強く国に要請すべきであります。

 同時に、健康寿命を延ばしていくための介護予防事業は必要ですが、市民に自助努力を求めるだけでは十分な効果は期待できません。

 財源投入によって介護保険料を引き下げるという、本市独自の具体的な手立てこそ求められているのであり、介護保険料軽減のための財政支援は、行政として当然の責務であると申し上げておきます。

 

 また、近年見られない程の異常な物価高騰により、市民がこれまで以上に家計を切り詰め、生活設計の大幅な見直しを迫られている今こそ、財政調整基金は活用されるべきであり、市民の窮状に寄り添ったきめ細かい物価高対策を講じることが、自治体の責務です。

 例えば、上下水道料金の減免について、一昨年10月から12月にかけて行われて以降は行われていません。厳しい市民生活の現状に鑑みれば、上下水道料金の減免をはじめ、有効な物価高対策を実施すべきです。

 加えて、来年度から一般公衆浴場入浴料の上限額が、現行大人520円が600円へと、大きく引き上げられることになりました。客足への更なる影響が懸念されるところですが、燃料代の高騰で苦境に立つ一般公衆浴場に対し、固定資産税三分の二減免を今こそ復活すべきであります。

 埼玉県八潮市の下水管破損に伴い、下水道使用制限地域の方々に対し、公衆浴場の入浴料を無料とする緊急対応が取られています。公衆浴場は、日常の公衆衛生事業に不可欠な存在であるばかりか、緊急時・災害時にも重要な役割を果たす施設なのであり、恒常的かつ積極的な経営支援を行政の責任で行うべきであります。

 

 第二に教育についてです。

 大阪市立学校活性化条例の改正により、来年度から学校統廃合に関する規則が、小学校のみならず中学校にも拡大されることになります。

 学校施設は、教育活動のみならず、地域活動の拠点、災害時の避難場所でもあり、地域の大切な宝です。また、小規模校の将来像については、何より子どもたちと保護者、そして地域に寄り添った、丁寧かつ慎重な議論が重要であることは言うまでもありません。

 ところが本市では、生野区での大規模な統廃合計画が、関係者・住民の反対で思うように進まなかったことを契機に、学校統廃合の基準等の条例化を強行したのであります。

 学校統廃合の事項を条例化すること自体、前代未聞であり改めて撤回すべきと申し上げます。

 また、他都市に比べ異常に多いテスト回数の是正、ほとんどの政令市で行われている不十分な国基準を上回る少人数学級の実施などに今こそ踏み出し、教員の長時間労働と生徒・保護者とのコミュニケーションの低下を改善すべきであります。

 加えて、万博への児童生徒招待事業について、学校現場から児童生徒の安全確保や下見の制限等々、多くの懸念材料が表明されたことを真摯に受け止めるべきです。学校行事は一般行政の都合で上から決められるようなものではなく、児童生徒の学びと成長にどのようにつなげるかの検討の上に、学校が主体的に判断するものであると改めて申し上げておきます。

 

 第三に、万博と夢洲まちづくりについてです。

 万博事業について、増加の一途をたどってきた建設費・運営費が、市民・国民に転嫁される危険性を抱えたまま、来月からの開幕を迎えようとしています。

費用の極端な増嵩、急ピッチの工事による現場労働者の安全確保への懸念をはじめ、万博開催とIRのための夢洲大型開発を疑問視する声に対し、立ち止まろうともせず突き進めてきた姿勢に全く道理はありません。

 またこの間、関西電力子会社の関西電力送配電によって、夢洲北東部に建設中である変電所の市有地売却が難航しています。その大きな要因は、IR用地と地理的条件や周辺環境がほぼ同じであるにもかかわらず、IR用地の1平方メートル当たり約12万円に対し、変電所は約33万円と3倍近くも高い算定価格が出たことによるものです。

 まさに、IR用地を大値引きしたことによる“ひずみ”の表れであり、その影響は万博跡地の開発にも及ぶことは避けられません。

 そもそも、廃棄物の最終処分場である夢洲を開発の拠点にし、万博開催やTRを中心としたまちづくりを進めようなどという発想自体が誤りなのであり、きっぱり中止すべきです。

 

 最後に、市政改革の名のもとに、この20年間で市長部局で1万2000人の職員削減が行われてきた点です。

 他都市並みになったので近年は削減していないとのことですが、本市には万博推進局、IR推進局、副首都推進局など、他都市にはない部署が数多くあります。

 とりわけ万博開幕を控えて他局からの異動で万博推進局への増員が続くなど、多くの部署では深刻な人手不足と職員の疲弊が常態化しています。業務の多様化、複雑化もあり、限界を超えているとの悲鳴が上がり、ミスの増加など市民サービスへの影響も否定できない事態が起きています。

 来年度も万博推進局が増員される予定ですが、増員に舵を切らず、他部署へのしわ寄せで乗り切ろうとすることは許されないと申し上げ、討論とし致します。