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「大阪民主新報」2004年2月1日付掲載 大阪市の三セク特定調停について 日本共産党大阪市議団政調会長の瀬戸一正市議に聞く | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
大阪市が筆頭株主となり、大企業などと共同出資して設立した第三セクター3社(ATC=アジア太平洋トレードセンター、WTC=ワールドトレードセンター、MDC=湊町開発センター)が、多額の赤字と借金を抱えて破綻状態におちいり、3社は昨年6月、大阪地裁に特定調停を申し立て、1月13日に裁判所の調停委員会による調停案が提示され、先日開かれた市議会決算特別委員会の質疑でも最大の焦点になりました。1月26日には調停案への同意を求める議案が提出され、30日に議会の承認が得られれば、関淳一市長は2月13日にも調停案に同意しようとしています。 調停案の内容(資料@)は、金融機関には貸付金2064億円の45%にあたる926億円の債権放棄を求め、大阪市には貸付金591億円のうち329億円を株式化して返済免除することや追加出資104億円などを求め、会社には金融機関の残りの貸付金1138億円を向こう30年間・40年間で返済し、それから後に大阪市の貸付金残225億円を返済するよう求めています。さらに大阪市には、会社がおこなう金融機関残債務1138億円の返済についてその損失補償を求めています。これは、三社の会社再建計画が失敗し二次破綻した場合には、大阪市民が借金返済の肩代わりをすることを意味します。 さて今回の決算委員会では私の質疑によって、「特定調停によって三社は膨大な借金が減って身軽になり、あとは大阪市からの公金支援なしに自立的経営で残りの借金を返済する」との説明は事実をごまかすもので、自立的経営どころか大阪市が引き続き巨額の公金をつぎ込み、市民の税金で銀行借金を返済する調停案になっていることが明らかになりました。 決算委員会で大阪市は与党議員の質問に答えて「調停案による大阪市の負担は、104億円の追加出資や350億円の補助金、WTC等での市部局の家賃1086億円の計1540億円」だと説明しましたが、私の質疑によって、これは大阪市の負担を小さく見せかけるもので、実際には家賃とともに払う共益費や外郭団体の家賃共益費を加えれば2289億円にもなることが明らかになりました(資料A)。その上で私は、大阪市は隠そうとしているが、大阪市と外郭団体が払っている家賃は民間が払っている家賃にくらべWTCで1.68倍、ATCでは2.71倍にもなること、その結果、調停案どおり大阪市が家賃を払い続けると600億円も民間より高額な家賃を支払うことを、当局が提出した資料にもとづいて明らかにしこれを大阪市に認めさせました。マスコミ五大紙もこの点を大きく報道しました。これは「家賃支払いという形をとった公金支援」にほかなりません。三社は、追加出資・補助金・高額家賃の1054億円がなければ、金融機関の残借金1138億円が返せないわけですから、まさに市民の税金で銀行借金のほとんどを返そうというのが調停案であり、会社の自立的経営で返済するなどと言えるものではありません。 また、調停案に盛り込まれた三セク会社の残借金にたいする大阪市の損失補償では、会社が二次破綻すれば市の税金負担はふくれ上がるばかりか、会社に出資した資本金や貸付金などもすべてを失うことになります。 さらに私は、調停案は、大阪市の方は法的整理に比べてはるかに大きな負担をするものになっている一方、金融機関が得る元金と利子の合計は法的整理にくらべはるかに大きな金額であり、それは当初からの貸付金総額をすべて回収するものであることを明らかにし、到底市民の理解は得られないと指摘。福祉や教育にこそ予算をふりむけるべきだと、特定調停への不同意を主張しました。 ところが関市長は、会社再建への最後のチャンス、市民のためにどう活用するかという観点をふまえるなどと、事実をごまかした従来の大阪市の立場に固執する答弁をおこないました。 これら三つの3セク事業は、全国的に見ても巨大開発の無謀さとその破綻の典型です。3つのビルのテナント床面積は甲子園球場の14倍にもあたる54万7千u、事業費の総額は3136億円、その事業費の7割以上を銀行借金でまかなうものでした。過大な施設建設でゼネコンが大もうけをし、大銀行は何かあれば大阪市がついていると最初から目論んでいた事業です。 開業後は、当初からテナントはうまらず、「輸入卸売基地」(ATC)、「国際交易促進拠点」(WTC)、「関西新空港への搭乗窓口」(MDC)などといった公共性も絵にかいた餅になり、赤字だけがどんどんふくらんでいきました。 大阪市は「三セク会社への出資の範囲だけ」の責任しか持たないはずなのに、まるで裏保証でもしているかのように、98年以降の経営支援と称する509億円の公金貸付(ほとんど銀行借金返済に回されました)や、WTCへの水道局・建設局をはじめ五つの市部局や外郭団体の入居、ATCでの経済局などの事業展開など「高額な家賃支払いという床支援」をしてきました。これまでの三社にたいする大阪市の公金持出しは1354億円にもなります。それでも再建のメドがたたず、今回の特別調停に至ったものです。 このような大きな被害を市民にもたらした大阪市の責任はきわめて重大であり、これを支持しあるときは督励してきた与党各派もその責任をまぬがれることはできません。市民にさらに大きな負担を押し付ける特定調停案はきっぱりと拒否し、巨大開発優先の姿勢を抜本的に改めることこそ今求められています。 わが党議員団は、市民のみなさんとともに、「くらし、福祉第一の市政」実現へ、ひきつづき全力をあげます。
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