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市議団の実績

どうみる橋下大阪市政
大阪市だけでなく暮らし守る施策も破壊へ

北山良三共産党市議団長に聞く

 橋下徹大阪市長が就任して間もなく5カ月になります。この間の橋下「改革」や政治手法の問題点をどうみるのか、日本共産党の活動や主張について、同党大阪市議会議員団の北山良三団長に聞きました。

 

ハンドルもブレーキも利かぬ暴走

 ――橋下市長の就任以来の動きをどう見ますか。

北山 橋下市長は昨年12月の着任早々から、ものすごいスピードで「改革」を行っているとマスコミは描き出しています。まさに急発進・猛スピード≠ナすが、大事なことはまず、安全運転なのかどうか。この点では「思想調査」や「職員基本条例案」などでもの言わぬ職員づくりを狙い、人の言うことを聞かない。ハンドルもブレーキもほとんど利かないという暴走、ファッショ的な政治手法です。

 もう一つは市民が願う方向、目的地に向かっているかどうか。橋下・維新の会はダブル選で「大阪の経済を良くして暮らしを安定させる」と宣伝しましたが、実際には「大阪都構想」を前提に「府市統合本部」や「市政改革プロジェクトチーム」を発足させ、市営地下鉄や柴島浄水場など市民の財産を売り飛ばし、市民の福祉をとことん削る方向です。大阪市という形を壊すだけでなく、市民の暮らしを守る施策を壊そうとしています。

 ――違憲・違法な「思想調査」では、回収データは廃棄しましたが、橋下市長は「問題ない」と居直り続けています。

北山 調査を凍結し、データ廃棄に追い込んだのは市民の世論と運動や日本共産党の論戦の力があったことは間違いないし、一連の経過を通じて、憲法や法を無視する橋下市長の手法のひどさが、市民にも知られるようになったと思います。「思想調査」の理由の一つになった交通局の「職員リスト」の捏(ねつ)造問題で、橋下市長は「謝罪は必要ない」などと開き直っていますが、到底許されるものではありません。

 閉会中継続審査となった「教育行政基本条例案」「市立学校活性化条例案」と「職員基本条例案」は、関係委員会でわが党議員が問題点を追及し、撤回を求めて正面から論戦しています。

 

「大阪都構想」前提に大阪市解体へ

 ――橋下市長は「大阪都構想」で「統治機構を変える」と叫び、大阪市政でも「グレート・リセット」を打ち出していますが。

北山 重大な問題は、「統治機構を変える」と言いながら、「大阪都構想」はまだ具体化していないのに、実態をいまからつくろうとしていることです。「府市統合本部」を設置し、特別顧問・参与を任命して自分の言いなりになる行政執行体制を組んでいく。

 「職員基本条例」は市議会で未成立ですが、管理職の「原則公募」を前倒しするような形で、交通局長に京福電鉄副社長だった人物を任命する。大阪市音楽団の廃止問題でも、職場変更を認めず、分限免職にしようというひどさです。

 PT試案も「大阪都構想」が前提です。現在の24行政区を8〜9の「特別自治区」に減らすのに合わせて、区民施設の統廃合などを進めるだけでなく、全体の財源との関係も問題です。「大阪都構想」では、大阪市を解体し、8〜9に再編された各区が独立した基礎自治体になるとしています。

 固定資産税や法人市民税はいま、大阪市独自の財源ですが、「都」に4割が吸い上げられる。市民向けの行政サービスに向けられるのは、残りの6割の中からです。

 橋下・維新の会は「特別自治区になっても、住民サービスは低下させません」と宣伝してきましたが、まだ大阪市であるいまのうちに、その6割の財源の水準に合わせて住民サービスを低下させれば、公約違反にならないという、ペテン的な狙いがあると私は思います。

 

「収支不足」にもペテンとごまかし

 ――PT試案では「年間500億円の収支不足」を施策・事業の見直しの理由にしていますが。

北山 ここにもペテンとごまかしがあります。第1は収支不足の「500億円」という数字です。平松前市政でも、「2018年ごろまで収支不足≠ェ生じる」としていましたが、その額は年間100億円程度となっていました。ところが、今回はその5倍にはね上がっています。

 どうしてこうなるのか。「収入の範囲で予算を組む」と言いますが、まず、その「収入」に含まれる「補てん財源」の額を計算から外して、「収入の範囲」を小さく見せている問題があります。

 「補てん財源」で大きなものは土地売却収入。大阪市は八百数十カ所、甲子園球場の約80倍に相当する遊休地を所有していて、契約管財局が各局と調整しながら、計画的に売却しており、これが年間百数十億円入ってくるのですが、これを外しているのです。

 逆に、形式上支出が大きく膨らむ操作もしています。退職手当債がそうです。一般企業では退職引当金を積み立てて退職金を支払いますが、自治体の場合は借金して支払います。これは退職金の増減が市民施策などに影響を与えないよう、後年度に均して負担するためです。

 ところが橋下市長は、退職手当債を認めないとし、その年の退職金を全額その年の支出にするとしています。

 

市民の犠牲なしに財政立て直せる

 ――では、収支不足の本当の原因は何でしょうか。

北山 橋下市長がまったく説明していないのは、まさにその点です。福祉をぜいたくにやりすぎているとか、高齢者人口が増えることが「財政危機」の原因であるかのように印象付けていますが、実際は違います。最大の原因は阿倍野再開発事業の破たん。バブル崩壊後の90年代に大きく失敗したツケを、いま払わなければならないからです。

 阿倍野再開発事業の借金返済で市が補てんする額は2033年度までに計2200億円で、そのピークが今後10年間。今年度190億円、13年度195億円、14年度231億円などとなっています。ですから敬老パスや新婚家賃補助、水道料金減免の経費が収支不足を生んでいるのではなく、これを削って補うのは筋が通りません。

 逆に言えば、この10年間の財政運営を市民の立場で工夫すればいいわけで、方策はいくらでもあります。大阪市が借金返済のために積み立てている公債償還基金は約4千億円に達し、積立額が取崩額を上回り、残高は今後も増え続ける見通しです。一般会計で年間100億円程度の収支不足が生まれるなら、この基金から一時的に借り入れをして、財政状況が好転する10年後以降に計画的に返済すれば何も問題ありません。

 

福祉を守り、大阪経済立て直しへ

 PT試案のようなやり方で福祉を削れば市民の生活が苦しくなり、購買力を低下させ、景気悪化の悪循環を招き、市民税収も落ち込むという悪循環に陥ります。

 他方、橋下市長は、柴島浄水場の売却と跡地の開発、ベイエリア地域へのカジノを中心としたリゾート施設の誘致、「関空アクセスの改善」の名でなにわ筋線や関空リニア、淀川左岸線延伸部建設などを進めて、世界から「人・モノ・カネ」を呼び込んで「都市間競争」に勝つという「成長戦略」を描いています。こうした「大規模型」「呼び込み型」の路線は、これまでことごとく失敗しており、展望のないものです。

 いま必要なのは、こうした方向ではなく、市民が望む方向で施策を展開することです。防災対策は急務です。待機児解消の本流である認可保育所の増設、国民健康保険料や介護保険料の負担軽減、住宅リフォーム助成制度で中小業者に仕事をつくること、みんなが憩える公園を増やすことなど、「生活密着型」「地域循環型」の経済対策、経済成長戦略に切り替えていくことです。

 わが党議員団として、橋下市長のファッショ的な市政運営にきっぱりと対決するとともに、市民の福祉を守り充実することで大阪経済を立て直すために、積極的な対案を示して奮闘します。

(2012年4月29日・5月6日付大阪民主新報合併号)