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2005年度大阪市公営企業、及び、準公営企業会計の

決算認定に反対する討論

2006年10月13日 矢達幸市会議員

 

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表し、2005年度大阪市公営企業、及び、準公営企業会計の決算認定に反対する討論をおこないます。

5年半にわたる小泉内閣が推進した「構造改革」路線は、日本の経済と国民生活の矛盾をあらゆる分野で深刻にし、社会的格差の広がりが重大な社会問題になっています。

こうしたもとで、大阪市には、国の悪政の防波堤になると共に、市民の暮らしを守り支援するという地方自治体としての役割が、いっそう求められています。

ところが、関市長は、構造改革の大阪市版とも言うべき「市政改革マニフェスト」を、しゃにむに進めようとしています。このマニフェストは、「大阪市政への経営の仕組みの導入」を「基本的な考え方」に位置づけ、事業の民営化・独立行政法人化・株式会社化の方向を打ち出すとともに、巨大開発優先・乱脈同和による財政破綻のつけを、市民におしつけるなど、自治体の公的責任を投げ捨てようとするものです。

 今回の決算審議においても、地下鉄・バス・水道・市民病院・中央卸売市場など、各事業の経営形態見直しが最大の焦点となり、民営化の推進と市民サービスの切り捨てに走るとともに、大型開発とその破綻処理には力を入れる一方、市民の切実な願いに背を向けている大阪市の姿が明らかになりました。このような2005年度公営・準公営決算は、断じて容認できません。

 以下、具体的に指摘いたします。 

 反対理由の第一は、「公共の福祉を増進する」という地方公営企業の目的や「市民の足を守り、安全に徹する」という公共交通の役割に反する問題が明らかになるとともに、市民の貴重な財産を関西財界の言うままに企業の利益追求に供しようとしているからであります。 

まず、交通事業の民営化問題です。

関市長は、昨年の市長選挙の公約で市営交通の「公設民営方式」を打ち出し、マニフェストでそれを追認しましたが、その後、地下鉄に関しては、「完全民営化」に大きく舵をきりました。その背景に、関西経済同友会が5月に発表した完全民営化を求める提言があることは明らかです。市政改革推進会議の上山信一委員長も「施設を市が保有したままだと、経営の多角化が難しい」と民営化の旗を振っています。

地下鉄事業は、2005年度196億円の黒字を出しており、関西財界のねらいが、自らの利益のため、大阪市の地下鉄をいわば乗っ取ることにあることは明白です。また、2005年度の一日乗車人数は、前年度より2万5000人増の235万人、ニュートラムを含め126キロ、100年の歴史を誇る貴重な市民の財産です。公営企業として拡充をはかることこそ大阪市の責務ではありませんか。

民営化議論の行きつく先の一つに、8号線の延伸凍結問題があります。

8号線は、「東部地域の移動を円滑にするとともに、地域の街づくりを促進し、地域の活性化に寄与する」と交通局が位置づけている路線であり、いよいよこの12月、井高野から今里までの12キロが開通をむかえます。湯里6丁目までの計画どおりの延伸は、住民の願いです。ところが、関市長は、「経営形態の検討が先だ」などと、無責任な答弁に終始したのであります。

井高野バス営業所の南海バスへの委託にも、民営化の問題点があらわれています。

理事者は、今回の委託の目的が、コストの削減にあること、その中心は「人件費の削減にある」とあからさまに述べました。つまり、この委託事業は、南海バスの運転手の低賃金と長時間勤務が前提となっているのであります。人間らしい労働環境を壊し、雇用のルールを破壊することに公営企業が手を貸して良いのですか。

また、わが党委員が、奈良交通や近鉄バスなど民間バス会社で、過労が原因と思われる事故が起こっていることを示し、安全対策についてはさらに念をいれて「南海バスと協議するよう」求めたのに対し、当局は、この最低限の要望にさえ応えようとはしませんでした。到底許せません。 

そもそも、移動の権利、交通権は、基本的人権の一つとして定着しており、ヨーロッパ諸国では、地下鉄などを大半は公共団体の責任で運営しています。民営化は、こうした流れに逆行するものであり、営利追及が目的となって、もっとも重要な安全性がそこなわれ、不採算路線は切り捨てられて市民の足が奪われ、公共交通手段の拡充にもブレーキがかかります。

名古屋市交通事業経営検討委員会は、本年7月、経営改善に関する提言をだしています。そこでは、「市バス・地下鉄事業を一体的に運営していくことが最適である」、「市民の日常生活に不可欠な、これら廃止することのできない赤字路線を維持することにより、市民の足を守るという重要な使命・役割を果たしている」とのべています。大阪市交通局もこういう立場を堅持するよう、求めておきます。 

次に、地下鉄駅の可動式ホーム柵設置の問題です。

視覚障害者をはじめ、駅利用者の転落事故を防ぐのに大きな役割を果たす可動式ホームドアについて、わが党議員団は10年前の当決算委員会で取り上げたのをはじめ、過去24回にわたって、早急な設置を議会で求めてまいりました。すでに、京都が地下鉄の新路線に設置し、大阪市においても8号線に設置されることになりました。問題は、既設路線への設置でありますが、東京、福岡につづき、仙台でも実現のはこびになりました。2003年からは、新設方式と同様に、国の補助金がつくようになり、国土交通省からは、「ホーム柵設置可能性の報告」を2004年5月までに提出するよう求められました。もはや、一刻も遅らせることができないところに来ております。ところが市長は、「有効な手段ではあるが、御堂筋線など混雑度の多いところで別の問題が発生する可能性がある」などと、消極的な答弁に終始したのであります。

なお、敬老パスについてでありますが、「敬老パスがあるので老人は外出も気軽にできている」など、高齢者にとってなくてはならないものです。ICカードの導入が予定されていますが、その費用を高齢者に転嫁することなく、無料で存続するよう強く求めておきます。 

次は、水道事業についてであります。

当局は、水道事業についても、今年度中に民営化問題についての方向を出すとの態度をとっていますが、ここでも、経営形態を検討する必要性の第一に経済性、効率性が上げられており、国際的な流れである安全な水の安定的な供給が国と地方自治体の使命であるとの認識から、ほど遠いものと言わなければなりません。

公営企業の責任を放棄し、市民のいのちや安全を利潤第一の民間に任せるようなことがあってはなりません。

このように、経済性・効率性を追及する一方、膨大な無駄には一向にメスを入れようとしないのであります。それは、過大な水利権問題であります。

周知のように、本市水需要は、ここずっと低迷し、2005年度の一日平均給水量は、133万トンであるにもかかわらず、水利権は267万トンと大きく乖離しているのであります。そして、この無駄な水利権の取得にともなう琵琶総負担金を毎年数十億円、総額1000億円、市民の税金と水道使用料で払い続けているのであります。到底、認めることはできません。 

分譲マンションの水道メーター取り換えの問題についても、わが党は、一般住宅と同じように公費でおこなうよう繰り返し求めてきました。

大阪市内では、高層マンションの建設ラッシュをむかえるなど、マンションの急増は大阪市の人口回復に大きく寄与しています。わが党委員の追及に、理事者は、「検討を進めている」と答弁しましたが、いつまで検討を続けるつもりですか。マンション住民への差別的扱いはただちに改めるべきです。 

続いて、水道、交通の生活保護世帯への減免問題です。

大阪市は、最後のセーフティネットといわれる生活保護世帯に対して適用してきた水道料・下水道料の福祉減免制度と交通料金の2分の1減免の制度を、年度途中に廃止しました。

当局の言い分は、生活扶助費の中に、水道料も交通費も含まれている、したがって、この支給は「二重払い」となっているというものです。とんでもありません。この二重払い論が正しいとすれば、大阪市は1973年以来、過去33年間に渡って「正しくないこと」をやって来た事になります。

わが党委員が、生活保護受給者の声を紹介し、最低限の健康で文化的な生活を保障する水準からは支給される扶助金が低いために、一ヶ月1576円の水道基本料免除額は大きな比重を占めていること、交通費の半額負担があるから、人との付き合いも可能であることなどを明らかにして、減免制度の復活を求めましたが、当局は冷たくこれを拒否しました。

この福祉減免制度を維持するために必要な予算は、せいぜい7億円程度であります。2005年度、地下鉄は196億円、水道局も83億円の黒字です。やりくりが付かないような金額ではありません。

しかも、一方で大阪市は、芦原病院への貸付金・補助金合計138億円の債権放棄、いわば、だれにも返済を求めない、棒引きにすると言う案件を本議会に出しております。138億円は、減免制度を維持するために必要な金額のなんと20倍であります。復活をはかるよう強く求めておきます。 

最後は、浸水対策についてであります。

8月13日、豊中市で1時間の雨量が110ミリという猛烈な雨が降りました。

この時、城東区など、大阪市内でも浸水被害がおきています。ところが、大阪市の「60ミリ対応」事業の進捗率は、2003年76.8%、2004年76.9%、2005年77.4%と、遅々として進んでおりません。本決算での公共下水道事業費は420億円と前年度に比べ56億円、2003年度からは159億円も減っているのであります。

1時間で50ミリを超す雨を観測した回数は、2004年、全国で実に470回、100ミリ以上は73回となっており、「今後、地球温暖化で雨はさらに降りやすくなる」と専門家は見ています。「想定外の大雨」などという言い逃れはもはや通用しなくなっています。

ところが、理事者は、「第9次下水道整備5ヵ年計画はほぼ達成した」などと答弁し、浸水被害のない、安心して暮らせる街に、一日も早くしてほしいという市民の願いにまともに応えようとしなかったのであります。

反対理由の第二は、巨額の市税を注ぎ込んで行われてきた港湾局の大型開発事業や交通局の土地信託事業の破綻と矛盾がいっそう鮮明になったことであります。

港湾局は、1964年度からの埋め立て事業会計について収益収支を一括して計上し、その結果、差し引き1437億円の剰余金を計上しました。

ところが、これらの剰余金は巨大開発による起債の返済や開発者負担金、WTCへの支援など無駄遣いの結果、全く資金余力がなくなり、今や、残地売却に狂奔しなければならない実態におちいっています。

たとえば、コスモスクエア地区では、「咲洲コスモスクエア地区立地促進助成制度」と称し、30%、22億円も超値引きし、3万7000平方メートルを大手不動産業者などに売却しました。ここにも、大企業奉仕の姿勢があらわれています。

もともとコスモスクエア地区は、先端技術開発や国際交易、情報・通信、物流などのゾーンとして設計され、住宅計画などは全くなかったのであります。ところが、なりふりかまわず、「土地さえ売れればよい」と、1400戸ものマンション用地を分譲したのであります。その結果、大型車両がひんぱんに通過するこの地域の子どもやお年寄り、障害者の通行の安全をどう確保するかという大問題が発生しています。学校までの距離も遠く、子どもの足では通学に30分近くかかります。安全対策をはじめ、住民の要求にこたえる対策を強く求めておきます。

また、大正区鶴浜地域では、大型商業施設への土地売却を計画していましたが、近隣商店街などの厳しい反対運動により、大型商業施設は出店断念に追い込まれました。港湾局が、市民の意見を聞かず、暴走した結果だといわなければなりません。大正区商店街は住民から広く提案を公募しており、今、街づくり計画が市民の手で準備されています。大阪市は、かかる地域住民の提案を真摯に受け止め、街づくりに生かすべきであります。

次は、夢洲のスーパー中枢港湾づくりについてであります。

これまで、港湾局は、外貿コンテナ貨物の増大とコンテナ船の大型化に備えるとして、夢洲に、水深15メートルの大水深コンテナ埠頭、C10、C11の建設を進めてきました。ところが、5万トン以上の大型船は、C11に南港からエバーグリーンの船が週4便移ってきただけで、C10にはただの1船も入っておりません。それもそのはずで、この間、増えたのは、アジア・中国向けの1万トン未満の船であって、5万トン以上の大型コンテナ船は、2000年362隻から2005年307隻と、逆に55隻も減っているからであります。

したがって、もうこれ以上、大水深コンテナ埠頭の必要性がないにもかかわらず、今度は、スーパー中枢港湾づくりだとして、何と、230億円もの巨費を投じて、C12の建設を進めようとしているのであります。しかも、南港のR岸壁、C6、C7の5バースのコンテナ埠頭を廃止して、無理やり夢洲に移そうとしているのであります。夢洲・咲洲間の地下鉄・自動車の海底トンネル建設同様、無駄な開発の極みと言わなくてはなりません。

さて、交通局の土地信託事業でありますが、いかに、無謀な事業であったかが、あらためてうきぼりになりました。

200億円もの損害をこうむったフェスティバルゲートは、土地建物を一体で売却した場合、再利用の困難な施設があるために、鑑定評価でわずか8億円にしかならないことが明らかとなりました。「資産の有効活用」などという当初の名目が、いかにでたらめであったかを証明するものです。

住之江区のオスカードリームでありますが、受託者であるみずほ信託銀行は、一方的に信託を打ち切り、負債額223億円を立替払い処理し、交通局に請求するという態度にでました。今や、この事業の破綻が決定的な局面をむかえています。交通局は、フェスティバルゲートの轍を踏まず、受託銀行の責任において解決をはかるべきです。

また、土地信託とは別途に、交通局は、オスカードリームの金利負担の軽減をはかるため、2002年12月、日本政策投資銀行の借金を借り替える財源として、交通基金から50億円の特定金銭信託を行いましたが、今回の私の追及で、みずほ信託銀行がオスカードリームの債務立替に際して、この特定金銭信託50億円も取り込み、実質相殺をねらっていることが明らかとなったのであります。直ちに解約するべきです。

さらに、市民代表として、市政をチェックする立場にある議会の責任の問題もあいまいにできません。わが党は、市民の貴重な財産を投機の対象として土地信託することには、断固として反対を貫いてきました。ところが、与党各会派は、このような土地信託を高く賞賛し、推進の旗振り役を果たしてきたのであります。その責任は大であると指摘しておきます。

 最後に、同和問題について指摘しておきます。市長は、芦原病院問題については監査委員会の特別監査報告等の過去5年間の補助金についての調査でもって、飛鳥会事件については財政局の過去の資料を並べただけの調査報告書でもって、それぞれ「全容は解明された」として、特別職の減給と職員105人を処分し、それ以上の調査を拒否しています。これは、部落解放同盟の無法な要求と大阪市がそれに屈服して部落解放同盟の言いなりになったことに二つの事件の真の原因があることを隠して、事件の幕引を図ろうとするものであり、とんでもないと言わねばなりません。

同和問題については未解決、未解明の問題は山積みであります。たとえば、浪速区の旧同和地区の一部のバス停は他の行政区のバス停とはまったく違います。立派な長イスが設置されており、しかも、太鼓がイスの両端に設置されております。こういう特別扱いがまだ残っています。

元下水道局の職員が昇任・昇格問題で大阪市を相手に裁判を起こしたことがありましたが、これには同和問題が関連しています。この問題についても、当局は反省の言葉をのべたことはありません。

 港湾局では、現業職員の採用に、「同和枠」があったことが職員間で公然の秘密になっております。

 二、三の例をあげましたが、人権協会への事業委託の中止をはじめ、同和行政の終結にただちに向かうよう、強く求めておきます。

  以上、反対討論といたします。