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市バス・地下鉄の民営化に反撃、市民の足を守るたたかい 日本共産党大阪市会議員団政調会長・瀬戸一正 |
100年の歴史誇る市営交通網
ところがこの間、規制緩和や「官から民へ」という国の「構造改革」路線を全面的に受け入れてきた オール与党の側もコスト削減論の立場から「(市バスの)赤字路線を維持するのか否かも議論すべきだ」などとこれを後押ししてきました。
この流れを一気に加速して、『市政改革』の名前で、“地下鉄を民営化してしまえ”という乱暴な議論がいま、
市営交通の完全民営化を「市政改革」の重点施策に
同年秋の市長選挙をへて、昨年2月に、「市政改革マニフェスト(市政改革基本方針)」を策定しました。それは国の「構造改革」路線に沿って、「
2006年3月に設置した市政改革推進会議の委員長に就任した上山氏が、「(05年市長選挙後の)12月からは財界人を交えての『都市経営会議』が始まる。その場を通じて市政改革をガイダンスし、監視しなければならない」「 関淳一 その中でも一番の重点施策にした市営交通は、昨年2月のマニフェストで「公設民営化を基本として経営形態を見直す」とされました。ところが5月になって関西経済同友会が「市営交通は完全民営化(株式会社化)すべし」との提言を市長におこなうやいなや、市長は「完全民営化」に大きく舵を取り、交通局に検討を急がして、12月には「改革型地方公営企業」と「公設民営化」「独立法人化」「株式会社化」の4つの形態の経営シミュレーションを発表して「株式会社への移行も可能だ」などと言い出しました。 さらに今年1月22日には、交通局が、「今後の持続的発展が見込まれる方式」として「現行の地方公営企業の改革方式」と「完全民営化も含む株式会社方式」の「2案が望ましい」と提案をしました。
民営化の問題点あきらかにする論戦で、慎重論広がる
これにたいして日本共産党市議団が民営化に強く反対する論陣を張り、オール与党の議員の中にも民営化慎重論が広がった結果、 今後について、新聞は「新年度から私鉄経営者や金融専門家、交通政策研究者などを含むプロジェクトチームで実現性を検討する」(毎日新聞2月10日)と報道しました。
市民が100年以上にわたって築き上げてきた市営交通が財界に乗っ取られかねない重大な危機にあるというのが、今の局面だと言わなければなりません。
「赤字論、株式会社案は公共交通を後退させる」と反論 わが党議員団は、この間、民営化反対の全面的な議論を展開してきました。
また、上山氏が、“市営交通には8000億円の借金があり、市の一般会計からも多額の補助が出ている”ことなどを完全民営化への理由にあげていることについては、8000億円の借金は、民間では絶対にできない交通ネットワークを長年にわたって築き上げてきた結果であり、2005年までの10年間で、交通局が4300億円の元金返済をしたことも明らかにして、これを経営の失敗の証というのはとんでもないことだ、と批判しました。 また、「地下鉄は民営化するべきだ」などと主張する関西財界のねらいは、大きな黒字を出している優良企業である地下鉄を自らの新たな儲け口にすることにあると指摘しました(経済同友会提言は「将来は株式配当が見込まれる」と主張し、現に株式会社化に必要な資金提供について外資系金融会社までが触手を伸ばしている、との報道もある)。 交通局がまとめた「改革型地方公営企業方式」「株式会社化方式」についても、両方とも、大幅なリストラや給与のカットで職員の働く意欲を低下させるとともに、バス路線を縮小して市民の足を奪い、地下鉄の延伸はまったく検討しないなど、いずれも後ろ向きであり、どうして“発展性のある経営形態”だと言えるのかと批判しました。 とりわけ、株式会社化については、公共の福祉の増進を目的にした企業体から営利を目的にした組織に変えることになり、地下鉄の施設改善や安全運行の設備投資も今に比べて困難になるばかりか、市バスの赤字路線はすべて切り捨てられると指摘しました。
さらに「株式会社案」は、移行にさいして1400人もの“余剰人員”を
今後
市民との矛盾広げるコスト縮減によるサービス低下 民営化推進の議論とあわせて、市営交通をめぐる動きのもう一つの大きな特徴は、「コスト縮減」「経営の効率化」が、市営交通の安全性や市民サービスの問題で、市民との矛盾を大きく広げていることです。
昨年は16年ぶりの新路線・地下鉄8号線(今里筋線)が、12月24日に開業しました。これを機に 関係行政区のわが党議員は、交通局への緊急要望(「守口から杭全行き直行便を復活すること。守口〜関目間は今里筋線の開通とは無関係でありバス便を減らす根拠はなく、バス便を復活すること」など)をおこないました。 年が明けてからも、各行政区で、議会への陳情署名が展開されるなど、市民の運動はさらに広がりました。「地下鉄ができたからといって停留所間の距離が短く利用しやすいバス便の削減は納得できない」「新線開通にともなう変更のはずなのに、新線と関係のない路線まで便数を大幅にへらしたのはおかしい」「地下鉄と市バスが一体となった交通ネットワークをそこねるもの」などの声が上がりました。
わが党議員団は、現地調査と利用者との対話をもとに、守口方面に向かう今里停留所では到着バスが遅れると乗り継ぎがうまく行かず20分以上の時間待ちをしなければならないこと、また
きめこまかいネットワークへバス路線の改善を提案 市民にとっての市バスの利便性は、地下鉄の駅間距離が平均1100メートルなのに対し、バスの停留所間距離は435メートルであり、地下鉄よりもネットワークがよりきめこまかいという点にあります。市民の運動とわが党のとりくみで、高齢者にも乗り降りが容易なノンステップバスや車椅子で乗車できるバスも、年々増えています。 わが党議員団は、バス路線の再編成にあたっては、路線の切り捨てをおこなわず、高齢者などに配慮したきめ細かな路線の新設・拡充をはかることを、くりかえし求めてきました。 2001年から一部の行政区で試行がはじまり、現在24全行政区に路線が拡充された料金100円の小型バス・「赤バス」(通常の路線バスは200円)については、地域利用者の声を尊重し、コースや回数を増やし、運行コースを循環型から双方向に改善して利便性を高めるなど、利用者の増加をめざす具体策を提案してきました。 また、バス事業の民間委託については、わが党議員団は、利益第一の民間バス会社で、長時間過密労働や人件費の圧縮などにより、運転手の急死や重大事故が相次いでいることを指摘し、「市民の足であるバスの安全性が低くなることは明白だ」と、民間委託を批判してきました。 委託推進派が、バス事業の赤字を問題にしている点については、環境への貢献や高齢者の社会参加など、市バスの果たす役割を総合的に考えれば、市の一般会計からの補助は当然であり、市バスが地下鉄を補完しつつ、地下鉄と一体に整備されていることから、黒字の地下鉄会計からの援助も検討すべきだ、との提案もしています。
増加する地下鉄駅ホームの転落事故=安全確保を この間の交通局職員の大幅削減で、ほとんどの地下鉄駅のホームから職員がいなくなったことから、乗客の安全が懸念される状況になっていることも大問題です。 駅ホームからの転落事故は2001年からの5年間で217件発生しており、死亡事故も起こっています。視覚障害者をはじめ、市民から、ホームは「欄干のない橋」だと不安と心配の声があがっています。 視覚障害者団体などからの要望を受け、わが党議員団は、他都市の状況も視察し、ホームへの可動式柵の設置と職員の配置をくりかえし求めてきました。可動式ホーム柵の設置問題は、数えてみると、この間24回も議会でその実現を迫ってきました。 新規開業した地下鉄8号線には可動式ホーム柵が設置され、既設線の7号線(長堀鶴見緑地線)全駅にも設置(事業規模35億円、2010年度末完了予定)されることになりました。
市民とともに無料敬老パス守り、高齢者の足を確保 最後に、地下鉄・市バスの敬老優待乗車証(通称・敬老パス)の無料継続を守ったたたかいについて、ふれておきたいと思います。 地下鉄・ニュートラムと市バスが無料で利用できる敬老パスは、30万人を超える70歳以上の市民に交付されています。この制度は、1972年、高齢者の生きがいと社会参加を促進し、福祉の増進に寄与する目的でつくられました。
以来、高齢者にとってはなくてはならないものになり、「有料になったら閉じこもる人が多くなる」「病院や買い物にも行けなくなる」「
わが党議員団は、「敬老パスは、長年
わが党議員団の呼びかけに応えて、「 市民の大きな運動と結んだわが党議員団の奮闘で有料化を阻止し、2005年、6年に続き、7年も無料での継続が決まりました。本年秋にはパスがICカード化されますが、その作成費用(一枚3150円)も本人負担としないことになりました。 敬老パスを守ったたたかいは、市営交通が市民生活のなかで大きな位置を持つこと、市民要求を前面にかかげて戦えば市政を動かすことができることを示しました。
今年11月には、
わが党議員団は、 <『議会と自治体』6月号に掲載> |