大阪地裁で争われていた大阪市平野区長吉出戸三丁目の高層マンション建設差し止め訴訟が六月二十七日和解しました。
和解内容は、被告建設会社が建設戸数を24戸減らし、解決金を3千万円支払い、周辺住民へのプライバシー保護など環境悪化への対策を実施するというもの。
大阪市が準工業地域に日影規制の条例を定めていないことから、長谷工コーポレーションが14階建、高さ41bの高層マンションを計画。真北の住宅では冬至日に七時間以上も日影になることから、周辺住民は、大阪市議会に建設が強行されないよう可能な手だてを求める陳情を提出。併せて「6時間以上の日影を生じさせる建物を建てるな」と工事差し止めを求めて提訴していたものです。
建設業者は、当初「違法でないから」と住民の訴えにいっさい耳をかさず着工。日本共産党の稲森豊大阪市議は、2001年12月の大阪市議会計画消防委員会で、住民の陳情採択を求め質問しました。磯村隆文大阪市長は、「準工業地域であっても住宅地域化しているところでは、住宅地域に準じた扱いが常識」「建ててしまえば勝ち
という姿勢は困る」と業者の態度を批判しました。
日本共産党大阪市議団は与党各派がこの陳情を持ち帰り検討という消極姿勢の中、他の政令指定都市なみの日影規制が必要として、独自の「日影規制条例」(案)を提案し、業者の横暴と大阪市の指導行政の遅れを具体的に指摘するなど奮闘しました。
その結果、準工業地域でも日影規制を行うという条例が今年3月18日の大阪市議会本会議で可決し、10月から施行されます。施工されるまでの間は、四月から指導を強化するとしています。
一連の動きの中で、状況不利と見た建設業者は、建物の形状は変えないままで1億円の解決金の支払い、あるいは戸数の削減案を示してきましたが、住民側は根本解決にならないと無記名投票で妥協を拒否しました。その後数回の弁論や業者との協議を重ねて今日の和解に至ったものです。
原告住民代表の笹野敏彰さんは、「マンションから24戸を削らせ、周辺整備も勝ち取り、なによりも条例を変えることが出来たのは大きな成果。『建てられるから建てる』というゼネコンの横暴に歯止めをかけた。稲森市議には条例化につながる市長答弁を引き出してもらった。いまでも、その追及の姿は忘れられない」と話します。
稲森市議は、「国の規制緩和乱開発の大波の中で、大阪市の条例不備のもとでそれに屈せずがんばってこられた地元のみなさんの大きな成果、残念ながら工事差し止めに至らなかったが今日の日本における日影訴訟の到達点から見た場合、環境への一定の配慮と金銭補償を約束させ、なによりも条例制定という大きな財産を残した運動は歴史に残る偉業、そのお手伝いをさせていただいたことによろこびを感じています」と語っています。
(7月4日「しんぶん赤旗」大阪のページ)
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