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世論と運動で大阪市政に変化

暮らし充実へ前進

大阪市政座談会

 

 大阪市の3月予算議会では、子どもの医療費助成が入院で小学校卒業までに拡充、敬老パス無料化を継続、地下鉄駅可動式ホーム柵の実現など、市民の運動と日本共産党の議会での奮闘で、いくつかの前進が見られました。その内容やこれまでの活動を市議団、各分野代表に振り返ってもらいました。

 出席者(五十音順、敬称略)=垣内健(かきうちけん・全日本年金者組合大阪府本部副委員長)、亀甲孝一(きっこうこういち・大阪視覚障害者の生活を守る会大阪市支部長)、杉本和(すぎもとかず・新日本婦人の会大阪府本部事務局長)、辰巳コータロー(たつみこうたろう・此花生活と健康を守る会生活相談室長)、矢達幸(やだつこう・日本共産党大阪市会議員)。司会=大阪民主新報編集部。 


矢達 大阪市政は今、様変わりしています。まず、これまでは住民から請願や陳情が出されても、ほとんど否決されてきましたが、昨年4月の選挙で日本共産党の大阪市議団が改選時の12人から16人に増えたこと、そして昨年11月の市長選挙で自民・公明・民主のオール与党体制が崩れたことで、頭から否決できなくなってきた。

 市長選挙では、大阪市の同和事業や無駄な大型開発の失敗、そしてその失敗の穴埋めにまた市民の税金をと、二重三重の無駄遣いをする市政への市民の怒りが現職市長を打ち破りました。

 残念ながら平松市長は基本的な部分では関市政を踏襲しており、中学校給食や国民健康保険料の軽減の問題をはじめいろんな面で公約を投げ捨てていますが、市民要求無視と無駄遣いという、これまでの大阪市政を市民の世論と運動が大きく変えつつあることは確かだと思っています。まさに国政も地方政治も激動の時期を迎えていて、住民の運動次第で要求が実現する展望が開けてきています。

 

子ども医療費・妊産婦健診助成拡充

 

杉本 子どもの医療費助成拡充については、私たちは、これまで毎議会ほとんど請願を出してきました。そんな中で少しずつ前進し、今回は入院を小学校3年生から卒業までに拡充することができました。まさに共産党と新婦人や市民運動がつくり出してきた到達点だと思います。

 入院すると1日の食事代やベッド代などいろんなお金がかかってくるので、特に子どもが入院を重ねている家庭には、安心して病院にかかれると大変喜ばれています。

 通院はまだ小学校就学前までだけなので、助成をもらえない世代のきょうだいがいたら、もらえる子と薬を分け合っているという話もあります。

 東京23区では中学校卒業までが当たり前。ぜひ大阪市でも広げていかなければと思っています。

 妊婦健診の公費助成も、これまで2回でしたが、08年から7回になりました。私たちがとったアンケートでも、妊婦健診は特に後期にお金がかかって1回1万5千円、2万円払わなければならないこともあるとのことで、今回、後期にも2回助成がついたというのは大変喜ばれています。厚生労働省からは14回までが望ましいという通達が出ているので、さらに要望を続けていきたいと思います。

矢達 特に子どもの医療費助成の問題は、私たちも議会で毎回取り上げ、19回にわたって条例提案を行ってきました。

 大阪市は全国的にみても子どもの数が少なく、私たちはまちの活性化と子育てしやすい環境を一体のものとして取り上げてきました。「また乳幼児医療制度か」と言われながらも、一貫して取り上げてきたことが実ってきました。

 

学校トイレの改修

 

矢達 学校のトイレ改修については、子どもたちの要求だということで、教職員の皆さんから必ず市政要求として出されて、私たちも、「壊れて使えない」などのトイレを放置しているのは人権侵害だと批判し、改修を求め、今年度から5カ年計画で(流水のための)センサー設置、洋式、照明を明るくするなど、全面改修がされることになりました。これも新たな前進です。

杉本 私たちも「トイレは人権」「学校のトイレはピカピカに」と運動して、毎回要望を出してきました。

 家庭ではほとんどが洋式トイレなのに、学校はほとんど和式で、汚い、臭い、暗いの3Kで、子どもたちも「汚いから行きたくない」と言い、学校に行きたくない理由の一つがトイレなんですね。きれいで、行くのが気持ちいい、行くとホッとするような学校のトイレに是非してほしいと思います。

 

敬老パスの無料化

 

司会 地下鉄・大阪市バスの敬老パスは、2005年以来、有料化をストップさせてきていますね。

垣内 04年10月ごろに見直しの話が出て、12月までの3カ月足らずで10万近い署名が集まりました。あれはすごい力でした。それで05年度については現行のままでとなり、さらに私たちは四天王寺のお大師さん(21日)や市役所のある淀屋橋で1年間で13回宣伝し、決起集会も2回やって、06年度も食い止めました。

 そこで出てきたのが地下鉄民営化で、民営化に伴って3千円のカードにするという話が持ち上がりました。

 私たちは、それも無料のままでと一生懸命運動し、忘れもしませんが06年1月20日、一般決算特別委員会で矢達さんが関市長にこの問題で質問し、市長が「大阪市の誇るべき制度。なくしません」と回答した時、私らもうわーと喜んで、あくる日のお大師さんの宣伝でビラにして知らせたら、「ありがとうございます。これで毎月子どもに遠慮せんとお大師さんに来れます」と言われ、感激して涙が出てきました。

 みんなの要求に基づいて運動すれば必ず実るということを実感しましたね。

矢達 本当にこの問題は、市民の皆さんの運動と共産党の議会活動がかみあったものになりました。私たちは議会で何度も繰り返し取り上げ、老人会などにすべて申し入れをしましたが、私らも立ち上がろうと思っていたという署名予備軍がたくさんおられて、大きな世論の広がりを感じました。

 この問題では、自民・公明・民主のオール与党会派は当局側にべったりでしたが、市民の世論が市長や与党を追い詰めていったんですね。

辰巳 生健会も頑張りました。70歳になっていない人も、この間、医療制度などもどんどん改悪されて、唯一楽しみにしていた敬老パスさえなくなるのかと立ち上がりました。署名しながらも半信半疑で、ほんまに継続できるのかという声もありましたが、運動が盛り上がっていくと、与党の議員も敬老パスを守りますと言わざるを得ないところまで追い込んだ。

 今でも、思い出したように署名を持って来られる方がおられます。それだけ敬老パスは強い要望なんですね。

亀甲 老人の無料パスの有料化の方向が出された時、次は障害者だと思いました。老人の次は障害者、母子家庭というのが制度改悪の流れ。それが高齢者のところで存続でき、われわれに火の粉が飛んで来ずに済み、私たちも運動の盛り上がりに感謝しました。

 

地下鉄駅可動式ホーム柵実現

 

司会 地下鉄ではホームからの転落が毎年40件前後起きているそうですが、現在整備中の長堀鶴見緑地線に続いて、08年度にはほかの路線の設置調査予算もつきました。

亀甲 この問題では私たちもずっと要求し、一昨年は6千人分の陳情署名を大阪市議会に提出しました。市会では共産党市議団が機会をとらえて、長年にわたって市に対して質問をしていただいてきたことが力になりました。

 可動式ホーム柵が初めて大阪で実現したのは、一昨年に開通した今里筋線でした。私たちは既設路線にも設置してほしいと市に求め、ホームの幅や階段とホームとの距離など全部測って、長堀鶴見緑地線なら一番運行本数も少ないし、工事も比較的楽だろうと言ってきました。そんな中で昨年11月の交渉で、そういう方向で検討しますという話が出て、ことしの2月発表の予算で長堀鶴見緑地線の工事費とその他の既設路線での調査費が予算化されて、喜んでいます。

 ホームからの転落では、実際に視覚障害者の死亡事故が起きているし、車いすの人が転落して列車に巻き込まれる例もあります。駅のホームは「欄干のない橋」と一緒。私たちは「橋には欄干があって当たり前。ホームには柵があって当たり前」と言ってきました。可動柵ができることは、私たち視覚障害者だけでなく、最近増えている自殺や事故を食い止める上でもメリットがあると思います。

矢達 「欄干のない橋」という障害者の皆さんの言葉は、議会で紹介した際も相当説得力がありましたね。

亀甲 私たちが長年言ってきたことがようやく実現するということで、これからは先延ばしにするのではなく、一刻も早く設置されるように求めていきたいと思います。

 

ムダ使いやめ市民の暮らしに

 

矢達 共産党は、無駄な大型開発の中止を一貫して主張してきましたが、その一つで、夢洲のさらに沖にある新人工島の建設について、大阪市も近畿2府4県の廃棄物処分場以外は中止することを決めました。しかし市は大型事業優先の姿勢を改めず、依然として巨額の開発予算を計上しています。今度の議会でも、貧困と格差が広がる中、市民の暮らしを守るためにこそ全力を尽くすよう求め、私たちは予算を市民本位に組み替えるよう主張しました。

辰巳 中学校給食の問題では、選挙の時、民主党がチラシまで作って、北九州では民主党が頑張って中学校給食を実現させましたと宣伝してましたが、平松市長が後退した案を出すと、だんまりを決め込みました。

杉本 お弁当を持って来れず、ダイエットだからと教室から出て行ったりする子もいます。全国で8割の自治体が中学校給食をやっているのに、大阪市がこれまでやっていた12校も廃止したことは、本当に腹立たしいです。何にお金を使うかというところで、私たちも引き続き要望していきたいし、共産党の議員団に頑張ってほしいと思います。

辰巳 大阪市は生活保護の夏季・年末一時金も廃止し、生保世帯への水道料金福祉減免を廃止してしまいました。生活保護の母子加算も来年4月にはなくなってしまいます。国がさまざまな制度を削っていく中で、市が独自に補助していかなければ、貧困と格差が広がる中で、本当に先が見えなくなる人がどんどん増えていくんですね。

杉本 後期高齢者医療制度の見直しを求める意見書が大阪市で全会一致で採択されたことは、すごいことだと思います。

矢達 国に対する意見書は、ほとんど私たちの提案ですからね。

杉本 私たちも今までいくら要望書を出しても、なかなか実ってこなかったことが多かったですが、共産党の議員が16人に増えた力で、これからも引き続き共同の運動をしていきたいと思います。

矢達 無駄な開発を押し付け、借金を市民犠牲で返せという自民党政治を乗り越えていくたたかいが必要となっています。一貫してそのことを追及してきた日本共産党議員団も引き続き、頑張る決意です。

(大阪民主新報:2008年5月4・11日)