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大阪市 維新が「家庭教育条例案」
特異な子育て思想押しつけ

 

 「大阪維新の会」大阪市議団が市議会に提出するために検討している「家庭教育支援条例案」(原案)の全容が明らかになりました。条例案は、「伝統的子育てによって発達障害は予防できる」などと科学的根拠もなしに、特異な子育て思想をおしつけるものとなっています。

 条例案は前文で「児童虐待の背景」にある根本的問題として「親心の喪失」を強調。改悪教育基本法の「家庭教育の独立規定(第10条)」を根拠に明記し、第1条(目的)では、「保育、家庭教育の観点から、発達障害、虐待等の予防・防止に向けた施策を定める」などとしています。

 具体的には、「発達障害、虐待等の予防・防止」(第4章)で、「乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する大きな要因である」などと主張。「わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できる」などとしています。

 また、「家庭教育支援」と称して、特定の思想に基づく「親の学び」をおしつけていることが特徴で、保護者対象の「家庭用道徳副読本」を高校生以下の子どものいる全家庭に配布するほか、「一日保育士体験、一日幼稚園教諭体験」を義務化。市長直轄の「家庭教育推進本部」を設置し、「家庭教育推進計画」を策定することなどを盛り込んでいます。

 「支援体制の整備」(第5章)では「親になるための学びを支援、指導する『親学アドバイザー』など、民間有資格者等の育成を支援」と記しています。

 「維新」市議団は、この「親学」について、「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長も務めたことがある高橋史朗「日本教育再生機構」理事・明星大教授らが提唱してきたものだと認めています。


 解説

  政治介入家庭教育にまで 背景に侵略戦争美化勢力

 「大阪維新の会」大阪市議団による家庭教育支援条例案は、教育への政治の介入を、家庭教育にまで広げるものです。

 しかも、発達障害を「伝統的子育てで予防できる」などと非科学的な主張を掲げ、発達障害などの問題を「親の責任」とする点でも重大な内容となっています。

 条例案の内容が一部報道(1日)されて以来、ネット上では「義務や強制で親がマトモになる…雑すぎやしませんか」「『発達障害』を親の責任としている」「それが親を追い詰めてんだよ」などといった批判が噴出しています。

 条例案の背景には、高橋史朗「日本教育再生機構」理事の考え方があります。同氏は、侵略戦争を美化する教育右傾化の中心的推進者の一人で、「自分以外の何かに責任を転嫁せず、まずは親自身が自覚することが基本」「増やすべきは保育所ではなく『親学』を学ぶ場」などとする特異な子育て論を展開してきました。

 ネット上での批判を受けて、「維新」代表の橋下徹大阪市長も「発達障がいの主因を親の愛情欠如と据えるのは科学的ではない」(3日のツイート)と認め、「僕の考えを市議団長に伝えた」ことを明らかにしました。

 その一方で橋下氏は、市議団の市政方針について「僕には決定権はありません」などと責任逃れをはかっています。(藤原直)

(2012年5月6日付しんぶん赤旗)