緊迫 住吉病院廃止条例案 |
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「市民病院がなくなると安心して子育てができない」「赤ちゃんが産めなくなる」―。「日本維新の会」を率いる橋下徹大阪市長が強引に進める市立住吉市民病院(住之江区)の廃止計画に、周辺各区の住民の不安が高まっています。廃止条例案の閉会本会議(29日)での採決が狙われ、事態は緊迫しています。(北野ひろみ) 「産科・小児科は残ると聞いていたのに」。22日の「住吉市民病院を充実させる市民の会」の宣伝。若い男性やベビーカーを押した女性などが次々ビラを受け取り、足を止めて署名しました。「病院廃止条例が採決の危機」と書かれたビラに目を通し、引き返してペンをとる人も。 「知り合いにも書いてもらいたいから、署名用紙をもらえませんか」。会のメンバーに声をかけた女性(54)は「本当に住吉市民病院をつぶしてほしくないんです。赤バスもなくなるし、車のない人は(統合先の)府立病院まで行くのも簡単じゃありません。橋下さんは、自分勝手すぎる」と憤ります。 地域の連合町会も力を入れた現地存続を求める署名の合計は7万を超え、橋下氏が最近、「ミクロの部分でそういう声が沸騰している」(15日)と市民の感情を逆なでしたことにも、新たな怒りが広がっています。 「大阪都」構想実現のために橋下氏が設置した「府市統合本部」が「府市病院経営統合」計画を発表したのは昨年5月でした。地域にとって必要な病院まで「二重行政」と決めつけ、府立5病院と3市民病院の経営統合を目指すとしています。 その「ステップ1」として打ち出されたのが住吉市民病院を廃止し、府立急性期・総合医療センター(住吉区)に統合する計画です。同病院で現在13ある診療科のうち、産科・小児科系以外は今年秋をめどに外来診療を停止、2015年度末で閉院するとしています。すでに3月で入院の受け入れ停止を通知しており、患者から不安の声が上がっています。 分娩施設 ほぼゼロに住吉病院 急速に広がる存続運動
住吉市民病院のある大阪市南部地域は、市立母子センターの廃止や民間病院、診療科の撤退で小児・周産期医療が不足しています。住之江区、西成区、住吉区を中心に地域医療を担ってきた同病院は1950年に開設され、施設の老朽化から、小児・周産期医療に特化して現地で建て替えることになっていました。廃止されると、分娩(ぶんべん)できる施設は住之江区では取扱件数の少ない民間1診療所、西成区ではゼロになります。 小児2次救急の機能を持つ同病院の廃止は、患者受け入れを依頼している周辺の開業医にとっても困難をもたらします。 橋下徹市長はこれまで、府立への統合で「確実に機能はアップする」と主張し、市側も、住之江区が住民の再三の要望を受け初めて開いた意見聴取会(1、2月)で「機能充実・強化」を宣伝してきました。 しかし、実際に統合案で示されているのは「強化」や「充実」と言えるものではありません。二つの病院の現行分娩数と統合後の分娩数はほぼ現状維持とされていますが、小児・新生児科のベッド数は、現行105床(府立50、住吉市民55)に対し、統合案では79床。26床も減少します。 橋下氏は2月、「小児・周産期医療の空白化に区民の不安が多数ある」と認め、「民間病院の誘致」を打ち出しました。しかし、橋下氏はその狙いを「単純に(病院廃止条例案を、反対の多い)議会で通すための条件」と自ら語っています。
「充実させる会」は、市病院局が「市民病院の役割は、採算性の面で民間医療機関では対応が困難な小児・周産期医療や救急医療など、地域に不足する医療を提供していくこと」と議会で答弁したことを指摘し「いまこそ公立病院の存続が必要」と主張。公立のままで現地存続を求める世論が、再び急速な広がりを見せています。 統合先の府立急性期・総合医療センターでも、患者から「こちらの病院では今でも待たされる。統合されれば、さらにかかりにくくなるのでは」との声が上がっています。 住民無視は許されない参院総務委員会で公立病院の充実を求めてきた日本共産党の山下よしき書記局長代行の話 橋下市長は「大阪全体で考えればいい」と言いますが、大阪府ではかつて300あった一般救急を担う2次救急の病院が269に減少しています。本来、2次救急で受け入れられるべき患者が、高度な医療が必要な3次救急の病院に回っているため、3次救急病院の負担が大きくなっています。小児救急も担う住吉市民病院が廃止となれば、事態はいっそう深刻になります。住民の声を無視して病院を廃止することは絶対に許せません。住吉市民病院の充実・存続のために地域のみなさんと力を合わせて、国会でも頑張ります。 (2013年3月27日付しんぶん赤旗) |