府大・市大統合問題 |
“強権的な続合おかしい” 問題の背景に「大阪都」構想 市大卒業生で立命館大学教授の森裕之氏が講演。統合問題の背景に橋下・維新の会が掲げる「大阪都」構想=大阪市の廃止・解体計画があり、「政治権力を得るために大学統合を利用しているだけ。こんなことに我々の暮らしや学術が翻弄(ほんろう)されている。こんなことを許していいのか」と話しました。 森氏は、「慰安婦」暴言や公募区長・校長の不祥事、堺市長選での敗北などの影響で、最近の「朝日」の世論調査でも橋下氏の支持率が49%にまで低下、「大阪都」構想への賛成も32%に落ち込んでいることを示し、「彼らが実行力を示すために、『大学改革』を成果にしようとしている」と述べました。 経済成長貢献だけが目的か 両大学の統合へ「新大学ビジョン案」(ことし4月)をまとめた「新大学構想会議」のメンバーは府市特別顧問の上山信一慶応大学教授らで市大・府大の関係者はおらず、「強い大阪を実現する知的インフラ拠点」などと、「経済成長」への貢献が大学の唯一の目的になっていると指摘。「当事者のいないところで、まともな大学はあり得ない。広い教養や豊かな精神的土壌がいろんなアイデアを生み、暮らしを豊かにする。その大学の役割はいらないというのが、このビジョンのメッセージだ」としました。 さらに「新大学ビジョン案」の一番の問題は、理事長・学長の権限強化や評価制度の導入、外部人材の登用など人事制度にあると強調。 教授会人事もトツプダウン パブリックコメントを経てことし10月に出た「新大学案」では学長は副理事長で、トップの理事長は市長が任命するなど、「明らかに首長が大学に入り込んできている。教授会人事もトップダウンで決められる恐れがある」と述べました。 森氏は、大学関係者には、拒次ぐ予算削減の下で統合に活路を見出す論調があることに触れ、「大学の内発的な要求による統合ではなく、形式的に組織を変えるだけでいいのか」と問い掛け、大阪市立大学の歴史を振り返りました。 市立大は日本 初の公立大学 前身の大阪商科大学が日本初の公立大学として誕生した1928年当時、関一市長が大阪市を発展させる人材を育成し、市民生活を向上させる知的機関として大学を設立した志を詳しく紹介。「統合は関係者の声を欠いたもので、教員や学生の営為の積み重ねがない。大学を支えるのは人。市大と府大の共同ではなく、政治目的に利用する上からの『改革』には反対」と結びました。
根拠のない「二重行政」 学生・府民が声上げよう 学習会では日本共産党の井上浩大阪市議(住吉区選出)が、11月の決算委員会で市大問題を取り上げたことを報告。橋下市長は知事時代から、東京は首都大学東京の運営費交付金は180億円なのに対し、大阪は市大・府大で計230億円だとして「二重行政の象徴」などと攻撃してきたが、何も根拠はないと力説しました。 井上議員は、運営費交付金から地方交付税の相当額を除くと、府と大阪市が各大学に支出している純経費は2010年度計約40億円で、12年度はマイナス6億円だと指摘。市大では教員1人当たりの研究費が00年度200万円だったのが、いま60万円に低下するなど、予算削減で十分な教育研究活動ができないような状況に追い込んできたことが根本問題だとしました。 参加者からは、「統合されれば、どんな学部でどんな勉強をすることになるか分からない」(市大卒業生の府立高校教員)、「統合問題で学内にある『諦め感』もあるが、動きたい教員もいる。学生や市民・府民からも、大いに声を上げてほしい」などの意見が相次ぎました。 (2013年12月15日付大阪民主新報) |