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大都市・大阪で住民自治をどう発展させるか

共産党市議団開催の懇談会

森裕之 立命大教授の講演(要旨)


 「大阪都」構想による市解体ではなく、都市内分権で住民自治をどう発展させるのか―。日本共産党大阪市議団が12日に開いた懇談会に招かれた森裕之・立命館大学教授の講演の要旨を紹介します。


 「都」構想は荒唐無稽(こうとうむけい)です。歴史的に形成された大都市である大阪市をつぶすなんてありえません。ただ、「都」構想が投げかけた今の政令市のままで市民の声が市役所に十分届くのかという問題提起は傾聴に値します。

 もっとも、橋下氏がよくいう“市長1人では260万人の大阪市民をみることができない”という主張は完全な誤りです。住民自治とは、首長だけでなく、議会、行政職員、住民参加の仕組みなどさまさまな回路を通じてのみ機能するものだからです。大阪市にも区政会議という都市内分権の制度がありますが、現状では住民の権限があまりにも小さい。だから、大阪市なんか廃止してバラバラにしてしまえばいいという勢力が出てくるのです。

 世界の都市や他の政令市では、都市政策の主体である市と住民自治をどう両立させているのでしょうか。

NY市の委員会三つの勧告権が

 代表的な例が二ユーヨーク市のコミュニティー委員会です。人□800万の同市には五つの行政区の中に59のコミュニティー地区が設けられ、各地区にコミュニティー委員会が置かれています。地区人口は5万〜25万人。コミユニティー委員会には、最大50人の無給の委員が地区選出市議や住民団体の推薦に基づき任命されています。委員会は@土地利用計画の審査A行政サービスの監視B予算優先順位の策定という三つの勧告権を持っています。

 最終決定機関は市議会でコミュニティー委員会はあくまでも諮問機関ですが、実際に建物の高さ制限を実現するなど具体的な役割を果たしています。予算要求の採択率も過去10年で平均30%台とかなり高い。地区要求を採択しなければ市には説明が求められます。

 日本でも、新潟市の区自治協議会は、施設の廃止など一定の事項については市長が意見を聞かなければならないし、協議会の意見と異なる対応をとる場合、説明の必要があるとされています。

住民の合意形成プロセスが大切

 大阪市の区政会議は住民ではなく区長の主導であり、権限の乏しい区長との話し合いでは市の政策にほとんど影響を及ぼせません。

 大都市の市民は互いに無関心になりがちです。同じ市民として協力していくためには、合意形成のプロセスが大切です。地域の住民が予算の優先順位を決められるようになると、議論を通じて他者を理解し、地域全体の状況を把握できるようになります。

 私はこういった取り組みこそ本当の意味での市民をつくっていくと思います。市民が都市の主人公になっていくためには、市民の要求をきちんと行政に反映させていく仕組みをつくっていかなければなりません。そうすれば、自分たちの市をつぶす構想など通用するはずがありません。

(2014年6月19日付しんぶん赤旗)