「大阪都」構想とは… 大阪市の廃止・解体、府に従属 森裕之・立命館大学教授の講演から |
「大阪都」構想は四つの要素からなります。 第一は、大阪市の廃止です。大阪市は、地図上、歴史上から消えます。 第二は、大阪市の解体です。バラバラにして、五つの別々の特別区になります。 第三は、特別区は府の従属団体になります。 特別区は、権限と財源を府に吸い上げられ、府の意向によって動く中途半端な自治体(特別地方公共団体)です。府のさじ加減一つで特別区の財政が弱められたり、条例が自由につくれなかったりすることが起きます。 第四は、「大阪市民」の解散宣言です。大阪市民は存在しなくなります。 橋下市長は、府と市の役割分担だといって、大阪市の広域行政機能、交通や大学、産業政策などを府に移すといいます。しかし、大都市が広域行政機能を持っているのは当たり前のことです。世界の大都市はだいたい大学を持ち、成長戦略、交通、地下鉄を持っています。 遠くなる行政 「都」構想では、大阪市の国保、介護事業、水道、児童施設など福祉・暮らしに関係する100を超す事業を一部事務組合でやります。ちなみに、東京都の特別区の一部事務組合等は、競馬や清掃などの五つしかなく、「都」構想の異常さがわかります。 一部事務組合は、一つの自治体だと効率が悪い事業を自治体同士が一緒にやる団体です。組合長(首長)、議会もあります。 例えば、大阪市民が国保料や介護保険料の値下げを要求したとき、それを市が受け入れ、値下げすることが可能です。しかし、一部事務組合では、組合を構成している各特別区が一致しないとできません。事実上値下げは不可能です。行政が住民から遠くなります。 府財政で左右 「都」構想では、現在の大阪市の財産(基金などを含む)の4分の1が府に取り上げられます。さらに、これまで大阪市に入っていた固定資産税や法人住民税など普通税と国が特別区のために計算じて配分する地方交付税を府が集めて、財政調整財源とします。その一部(23%)を府が召し上げた上で、残りを特別区に再配分するしくみです。(2012年度の大阪市一般会計決算に基づく試算)この他にも、目的税の都市計画税などを含めて約2300億円を大阪市から府に吸い上げる制度になっています。府は、それらを財源にしながらカジノ誘致関連開発などにまわすわけです。 いま紹介した23%という府の取り分も、府が「都」構想の計画にある巨大公共事業をやっていくと、引き上がっていきます。東京都では約45%を都が吸い上げています。 結局、特別区は、府の意向によって財政が左右されることになり、市民サービスは低下します。今でも、橋下市長は、施設の廃止、サービスの削減、使用料・手数料の引き上げをやっています。 地方自治体の首長は、全知全能の神ではありません。議会があり、いろんな会派が議論します。維新は「実行する」といいますが、政治はとことん議論することです。 首長、議会とともに大事なのは自治体職員です。公務員が住民の医療や福祉、教育、街づくりなどいろんな声を聞いてきます。その声を絶えず行政の中に持ち込んで議論し、施策としてつくりあげる。それが、行政から提案される条例とか制度改正につながっていきます。こういう役割分担があって初めて地方自治は機能します。 「首長をみて仕事をせよ」というのは地方自治をゆがめてしまうのです。 (2015年2月21日付しんぶん赤旗) |