異議あり!大阪市解体 「都」構想で大阪再生はない 革新自治体時代に学べ 奈良女子大教授中山 徹さん |
今、大阪の暮らしと経済で一番の問題は、賃金が上がらず雇用が安定せず将来が不安でモノが買えず、福祉は不十分で、中小企業は一生懸命に働いても全然利益が出ないということです。そこを解決しない限り、暮らしと経済は変わりません。 思い出していただきたいのは、1971年に黒田革新府政ができた時のことです。当時、住民の大問題だったのが公害です。光化学スモッグが出たら運動会が延期され、学校の校庭に旗が立っていたら校庭で遊べないという状況でした。 革新府政以前は、府は「公害行政は国の役割だ」と言い、国は「公害対策は経済と調和する範囲でやります」と言っていました。何もしないということです。 個人消費温める 黒田府政は、府民の命と暮らしを守ることが自治体の最大の役割だと、一番府民が困っている公害問題に立ち向かったのです。国がやっていなかった大気汚染の「総量規制」に踏み込みました。大阪、東京、京都、当時の革新自治体が国以上の公害行政に進んだ結果、「公害国会」といわれた1974年に政府が公害対策をせざるをえなくなりました。 今も同じことが言えます。大手企業に偏在している富を広く住民に行きわたらせ、中小企業が適切な収益を上げられるようにしていく。そうすれば個人消費を温めて、大阪の暮らしと経済はぐっとよくなります。 市の権限で解決 大阪市は都道府県なみの権限を持っている政令指定都市ですから、やろうと思えばいろんなことができます。 たとえば、大阪市の強い権限を使ってブラック企業規制条例をつくる。ひどい企業は名前を公表し、ちゃんと賃金を支払わせるようにすれば、大阪市内のブラック企業の問題がかなり解決できます。 大阪府・大阪市が事業・仕事を企業に発注する場合、安ければいいということではなく、下請け企業・業者にどれだけ単価を保障しているのか、どのぐらいの正社員を雇用しているのか、そういうことを発注の判断材料に入れることで、大手企業にためこんだお金を中小企業や従業員に還元させる。大阪市は大きな財源を持っていますから、そういうことをやるだけでもかなり変わっていきます。 こうしたことは、大阪市を解体してはできません。むしろ、政令市の権限、財源をフルに活用して、根本的な問題にメスを入れていく。そういう自治体にしていくことが重要です。 (文責 大星史路) (2015年3月20日付しんぶん赤旗) |