title


異議あり!大阪市解体

市民病院廃院 地域の将来奪う

住之江区医師会会長 松嶋三夫さん


 住吉市民病院の廃院は、医療という社会共通資本が住之江・西成地域からなくなることで、住民に多大な不安と不利益をもたらす以外に、将来子どもを産み育てようとする若い人たちが区外へ転出し、過疎化に拍車がかかり、人口減少の悪循環に陥ってしまいます。橋下市長の「都」構想は、この社会共通資本を奪うことで、地域の将来の繁栄をも奪う不毛の構想と言えるでしょう。

「都」構想の象徴

 南部医療圏は、もともと小児救急医療が不足がちで、その小児救急の不足を補い、地域の唯一の分娩可能な入院施設を確保するために、産科・小児科病院を現地建て替えするという方針がありました。

 しかし、橋下市長になった途端、無駄を省くという理由で、「都」構想の象徴として府立病院との統廃合が決定されました。その際、病院存続の署名が7万超集まり、これを無視することはできず、付帯決議を約束しました。付帯決議は、住吉市民病院が担っている産科・小児科等の機能存続と南部医療圏の小児・周産期医療の充実のために責任を持って民間の医療機関を誘致するというものでした。

 民間病院は2回公募されましたが、応募病院は医療内容が乏しく、誘致は失敗に終わりました。2度の失敗から学んだことは、小児救急そのものが不採算部門であり、小児科医の確保が困難である、よって民間病院の誘致は無理だと判断すべきだということです。

 病院の統廃合後は、病床数が従来のベッド数の3分の2になってしまいます。救急病床が不足すると、満床のために診療できないという救急診療拒否が生じ、たらいまわしが常態的に発生します。府立病院が少ない小児救急ベッドを短期間で無理に回転させるため、十分に治りきらない乳幼児を早期退院させ、退院翌日には病状悪化のために入院できる病院を再度救急隊に依頼するというような例も出てきています。結局、しわ寄せは区民が被ることになります。

 小児救急で搬送される患者は、発熱、下痢、脱水等の感染症がほとんどで、難病を救急外来で治療することはありません。「都」構想が実現すると南部医療圏の病床数が確実に激減し、小児救急医療は衰退の一途を歩むことになります。

民にはできない

 住吉市民病院が現在担っている医療内容は多岐にわたっており、これらの機能を百パーセント担保できる病院を民間で誘致できるとは思えません。「都」構想で、民にできることは民に、とよく叫んでいますが、民にできないことは官に、と叫んでいただきたい。医療荒廃を来す「都」構想に反対、住吉市民病院をなくす「都」構想に反対であることを住之江区医師会は理事会で決議しました。

(2015年3月27日しんぶん赤旗)