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廃止あかん 大阪市

災害考慮しない「都」構想

京都大名誉教授 河田惠昭(かわたよしあき)さん

 

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 南海トラフの巨大地震が起こると、大阪府内全域が停電、断水し、電車が動かなくなる。大阪市内だけでも100カ所から出火する。消火ができない。液状化で道路が通れない。津波による浸水が起こる。日中であれば交通渋滞が起こる。風が強ければ、全市丸焼けになるということなんです。

 大阪府の水道の断水に関する資料では、大阪市は地震の初日、百パーセント断水する。火が出たら消せないんです。

 南海トラフ巨大地震がやってくると、いったいどれぐらいの人が亡くなるのか。湾岸区では14・9%ですが、東区とか南区ではほとんど犠牲が出ない。こういう凹凸が出てきている。つまり、全く災害のことを考慮せずに区割りを決めたということじゃないですか。

 大阪市は、津波、高潮、洪水による水没の危険性が高い。だから水没対策を先行しなきゃいけない。しかし維新は何もやっとらんのですよ。地下鉄ホームの落下防止柵もちょっとずつしかやってない。もっと早くやれって。

 水道事業では、浄水場が地震で断水します。それを少なくするために水道管の耐震性を高めないと全市断水するぞという話なんです。

 大阪府にはもともと消防局がない。府の危機管理室は、堺市とか東大阪市のことをやらなきゃいけない。そんな中で「大阪都」構想をするのは、消防の指揮命令系統が複雑になるだけなんです。

 東京都には中核市は八王子市ぐらいです。けど大阪市は違う。隣に政令指定都市の堺市がある。中核市は東大阪市や豊中市など四つもある。そんな中で広域行政できるんですか。できるわけがないんです。

 堺市長選挙で負けた時点で、この構想はもうだめだったんです。二重行政なんて大したものじゃない。どこにでもある問題なんです。それを針小棒大に言う。これを「捕らぬタヌキの皮算用」っていうんですよ。(10日、大阪市で)

(2015年5月16日付しんぶん赤旗)