市民のくらし・福祉・教育を

最優先にした市政に 

99年9月29日 瀬戸一正議員が補正予算案に反対討論

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま上程されました1999年度大阪市一般会計等補正予算案に反対の討論をおこないたいと思います。
 申し上げるまでもなく、今、日本の経済は、国内総生産の6割を占める個人消費が低迷していることに加え、300万人をこえる失業者の増大が、一層その深刻さを増しています。
 こうした中で、今求められていることは、今日のぼう大な失業者をうみ出した要因である大企業の身勝手なリストラを規制し、福祉・教育分野などで雇用の拡大をはかるとともに、消費税3%への引き下げで消費を回復させ、福祉・医療を拡充することです。260万市民のくらしに責任を負う大阪市としては、国に対して国民本位の経済政策への転換を求めるとともに、みずからは、市民のくらし・福祉・教育を最優先にした市政運営に努めることです。
 このような立場からわが党議員団は、補正予算の編成にあたっては、「深刻な雇用問題の解決など不況対策に全力をあげる」「地方自治体本来の役割を発揮し、市民の安全・健康・福祉を守る」「大企業と『解同』優先をやめ、市民のくらしを優先する」こと、などを強調してきたところでありますが、本補正予算はまったくそうなってはいないのであります。 以下、本予算の内容に即してのべたいと思います。

    緊急に求められている雇用対策としては極めて不十分なもの

  まず第一に、国の緊急地域雇用特別交付金事業を具体化するものとして、創業支援センターの開設、学校教育情報化促進事業、都市美化対策、防災対策事業など、計7億4100万円が提案されていますが、これは今緊急に大阪市に求められている雇用対策としては極めて不十分なものと言わなければなりません。今回の都市美化対策は、公園や道路の清掃にあいりん地区などの失業者を募集する事業を、これまでの一日45人から105人増やして150人にしようというものにしかすぎず、もっと抜本的な、公共就労・雇用対策を、大阪市・大阪府・国の三者で実行すべきであります。
 さらに抜本的な野宿者対策とするために、大阪市が余っている簡易宿泊所を借り上げて宿泊券を配ってまず野宿者に住まいを提供する、そして体が弱っている者には生活保護を適用して健康を回復させる、その上で働き場所を提供するというところまで、踏み込まなければなりません。現に東京都や横浜市では簡易宿泊所で生活する者に対して生活保護を適用し厚生省もこれを追認しているのに、大阪市は今回の民生保健委員会の我が党議員の要求にも背を向けたのであります。
 また今回の雇用対策の補正予算の財源がすべて国からの交付金のみであり、全国一の野宿者、全国一の失業率なのに国からあてがわれた財源の範囲でしか仕事をしないという点にも、大阪市の雇用対策の不熱心ぶりが現れていると言わなければなりません。

         鳥取県では制度を活用し、小人数教育の試行

 さらに全国的な雇用特別交付金事業の例を見れば、鳥取県ではこの制度を活用して、小人数教育の試行をやろうとしています。これは県内の小学校1年生で36人以上のクラス、14校に21名の非常勤講師を配置して、複数担任制を実現して、事実上の35人学級を目指そうというものであり、これに、11年度2650万円、12年度5300万円、13年度5300万円、計1億3250万円が予定されているのであります。
 文教経済委員会では我が党議員がこの例も示して、「大阪市教育委員会自身が30人学級・35人学級の実現に前向きの姿勢を示すべきだ」と求めたのに対しても、教育委員会は消極的な答弁に終始したのであります。

         小子化対策は国の交付金の範囲で中身も不十分

 第二は、少子化対策臨時特例交付金事業による補正予算であります。ここには、保育所待機児童解消策、保育所・幼稚園などにおける子育て支援の充実、少子化対策推進基金の設置など、38億7300万円が組まれていますが、これも国の交付金の範囲だけで、しかも中身も不十分なものと言わなければなりません。
 待機児童数について言えば、大阪市は横浜市に次いで、全国2番目に多いのが実態です。ところが大阪市は、待機児童数を1082名とカウントし、これを3年間で解消するとしていますが、実際の待機児童数は1547名なのに、各区の待機児童と定員割れ数を差し引いて、1082名と低くカウントするなど、作為的なものと言わなければなりません。そしてその解消策の多くは、民間活力の導入などといって、少しばかりの設備改善と引き替えに民間保育所の定員枠を緩和して、子どもを詰め込むというものであります。公立保育所の増改築により、低年齢児枠の拡大で、大阪市が責任をもって対処すべきであります。
 さらに、少子化対策としては、現在もっとも劣悪な保育環境におかれている学童保育に、あたたかい援助をすることこそ必要なのではないでしょうか。
 また我が党が繰り返し要求している、すべての子どもたちを対象にした、乳幼児医療費助成制度の適用年齢を通院も就学前まで引き上げること、所得制限を撤廃することこそ必要であります。強く求めておきます。

         予算を積み増し、一刻も早く浸水被害の解消を

 第三に、下水道事業として浸水対策に35億円が組まれていますが、市民が安心して住める町づくりという観点から見れば、これも極めて不十分なものであります。
 9月17日の夕方の集中豪雨で床上浸水が97戸、床下浸水が4662戸、計4759戸の被害者が出たのをはじめ、今年すでに8000戸を越える浸水被害が出ており、なかには今年になって3回も4回も被害に遭われた市民の方もおられるのであります。
 下水道局は2年前の平成9年夏の集中豪雨の被害が1万2千戸にも及んだときに、被害者住民の怒りの声を前に、全市的に一時間60ミリの雨に対応できる抜本対策を進めつつ、浸水被害の常習地域311箇所については緊急の局地対策を平成12年度末までにメドをつけると約束したのでありますが、今回の建設港湾委員会の我が党議員の質疑で、この計画が遅れ気味であり、12年度末までに達成見込みが危うくなっていることが明らかになりました。安心して住める大阪市にするためには、もっと予算の積み増しを行って、一刻も早く浸水被害を解消しなければなりません。

          学校校舎の補修費は5年間で30%も減額

 第四に、補修費の追加として、学校校舎、市営住宅、舗装道の補修費が、59億7000万円計上されていますが、このうち、校舎の補修費の問題であります。
 今回の補正予算としては例年並の金額でありますが、本予算と合わせてみれば、今年度は8年度に比べると、その28%にあたる19億2200万円も減少しているのであります。これは、委員会質疑で当局が答弁したように「教育予算もマイナスシーリングの例外にはされていない」結果であります。平成7年度からの前年比5%、10年度からの前年比10%というマイナスシーリングの結果、この5年間で比べれば実に30%近くも減額されているのであります。
 こうした結果、校舎整備で言えば、児童生徒から大変な不評を買っている学校の「臭い・汚い・暗い」と言われているトイレの計画的な補修が、未だに昭和40年代後半のトイレを平成14年度までかかって改修するというものになっているのであります。もっと増額すべきであるのはあきらかであります。

       巨大開発へは借金までして急ぐ夢洲・舞洲連絡橋建設

 以上述べたような、市民の暮らし、福祉、町づくり、教育など今緊急にやらなければならない事業はやらないでおいて、削るべき巨大開発推進の予算を追加しているのであります。補正予算では、夢洲〜舞洲の連絡橋建設に29億4千万円を計上していますが、これまで何度も我が党が指摘して来たように、この浮体橋は総事業費635億円というべらぼうなものであり、また夢洲の不必要な15メートルバースの供用開始にただ間に合わせようというものであります。
 さらにこの連絡橋は、国補助金が4分の1、一般会計が2分の1、港営事業が4分の1を負担して建設される事業ですが、今回は港湾局の埋立地が売れずに港営事業の金が無いために、一般会計から借金までしてやろうとしているのであります。ここまでして進める事業でないのであります。

 現在のオリンピック招致計画は、巨大開発計画を推進するテコになっている

 また今回の補正予算では、オリンピック招致委員会への出捐金5千万円が計上されていますが、我が党は、現在のオリンピック招致計画そのものが、巨大開発であるテクノポート計画を推進するテコとなっているという点から、この予算案には反対であります。 我が党は、この間、2008年大阪五輪招致計画は断念すべきだという見解を明らかにしてまいりました。招致計画は、「国際集客都市」づくりの名の下に、舞洲、夢洲を中心とする巨大開発の延長線上にオリンピックを位置づけています。これは、北港テクノポート線、トンネル道路、夢洲の開発など関連事業に少なくとも7000億円もの巨費をつぎ込み、市の財政を破綻に導きかねない無謀な計画であります。「開発型」ともいうべきオリンピックの招致・開催が膨大な赤字と新たな財政負担の拡大を招き、市民生活に重くのしかかることは、長野オリンピックの結果を見ても明らかではありませんか。
 したがって、2008年オリンピック招致は断念し、夢洲・舞洲の開発を見直し、市民のくらし、中小企業の営業を支援することにこそ、今全力をそそぐべきであります。

        オリンピック予算の情報はすべて全面的に公開を

  オリンピック招致委員会を法人化するという問題そのもについても、これは経理を公開する保証にはなり得ません。この間大阪市は、「市役所見張り番」からの五輪経費についての公文書公開要求に対しても、肝心な部分はみんな真っ黒に塗りつぶしてしまうという不誠実な対応を行って来ました。この姿勢そのものを正さなければなりません。オリンピック予算についても情報はすべて全面的に公開するという姿勢に立つべきであります。

    自治体として独自に介護保険料減免制度や利用料減免制度を

  なお介護保険の申請受付が始まるこの時期にどうしても大阪市が明らかにしなければならないことを、この議会でも、やらなかった問題点について最後に指摘をしておきます。
 いま介護保険の実施を前に、市民の間には「保険料を払っても介護が受けられるのか」、「保険料が高すぎて払えない」などの不安の声が日増しに高まっています。全国的にはすでに、自治体として独自に保険料減免制度や利用料減免制度をつくることを明らかにしたところも生まれています。市民が安心して十分な介護を受けられるために、今の時期にこそやらなければならないことは沢山あるのに、大阪市は今回の民生保健委員会での我が党議員の質疑に対して何も明らかにしなかったのであります。

市社協ヘルパー廃止方針は撤回し、公的ヘルパーこそもっと充実を

  さらに、全国でも高く評価されている大阪市社会福祉協議会の常勤ホームヘルパー体制をもっと充実させるべきだとの主張に対しても、介護保険実施後は民間事業者並の扱いにする、事業としては縮小することもあるなどと答弁し、しかも民生保健委員会が開かれている当日に、大阪市の公的ホームヘルプサービスを廃止する、市社協への委託は打ち切る、事業は大幅に縮小するなどを社会福祉協議会に通知したのであります。ヘルパー事業をすべて民間事業者にゆだねて、公的ヘルパーは廃止するというこういうやり方は、この分野での公的責任を放棄するものであり、サービスの低下をまねきかねません。また、これまでの市社協ヘルパーさんたちの技能の蓄積やご苦労を踏みつけにするものであり、断じて許せません。廃止の方針は撤回して、公的ヘルパーこそもっと充実させることを強く求めるものであります。
 市民の介護に対する不安の声に答えて、介護保険料や利用料の減免制度の確立、入所施設や在宅介護支援の基盤整備を急いで必要な量まで整備すること、実態に即した認定審査制度にすることなどを、一日も早く明らかにすることを求めておくものであります。
 以上述べましたように、地下鉄第8号線にかかわる高速鉄道事業予算など賛成できるものもあるものの、補正予算全体としては、巨大開発は推進する一方、市民の福祉・暮らし・教育にかかわる仕事には不熱心なものと言わなければならず、全体としては反対であることを改めて表明して、討論といたします。