医療費助成を就学前まで拡大し、

所得制限も撤廃を

99年10月19日 稲森豊議員が乳幼児医療費助成条例を提案

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表してただ今上程されました議員提出議案第22号「大阪市乳幼児医療費助成条例」案について、提案理由とその内容について説明致します。
 内容は現行の乳幼児医療助成制度の対象を就学前まで拡大するとともに、所得制限を撤廃する等の改善を行うものです。乳幼児医療助成制度に関する条例提案は今回で15回目であります。
 提案理由についてご説明致します。

      助成制度によって間違いなく乳幼児の医療は向上している

  私はこの制度がいかに大阪市における幼児医療にとって重要で効果の大きいものであるかを検証するために、論より証拠、平野区内の幾人かのお医者さんから現場での実態と意見をお聞きしました。近所の小児科の開業医の先生は、「ゼロ歳から2歳、そして4歳未満までと拡大されてきた大阪市の乳幼児医療助成制度によって間違いなく乳幼児の医療は向上している、そして開業医の営業上もありがたい制度だ」と率直にこの間の助成制度が有効であると評価されています。
 一方4歳までの年齢制限について、例えばある医院では「受付で薬を受け取るとき『この前まではお金は要らなかったのに』とお母さんが4歳になって助成がなくなったことにため息をつくような光景が多く見受けられる」とおっしゃっています。

           4歳になると医療費抑制で受診が減少

 またお医者さんたちは異口同音に「4歳になると際立って受診が減ります。これは病気をしなくなったというからでなく、たとえば流行性感冒の場合でも初期には来診せず、発熱や咳が続くようになって初めて受診する」というのであります。
 また予防接種について言えば、3種混合、日本脳炎、ツベルクリン、BCGなどは無料ですが、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)約5000円、水痘(水ほうそう)約7000円と高額で,保育園児などはこの病気で1週間近く登園できず共働きの家庭などは大変で、すべて予防接種は無料にすぺきとの意見もお聞きしました。
 乳幼児に多いアトピー性皮膚炎のアルゲン検査あるいは感染症の新しい細菌や耐性菌の検査なども不可欠であるが、細菌培養が必要で費用が高くつくため事前に親の了解を得てから行ったり、同意されない場合は検査ができず症状から病気を予測して見込みの投薬治療を行わざるを得ない実態もあると述べておられます。

          所得制限は子どもたちの健康に重大な影響

 また所得制限については上限があるため、年間所得、数千円の差で医療費助成が受けられなくなり費用負担が原因でやむなく子どもに医療上の差別をしなければならないのは人権問題ではないかとの意見もありました。これらの証言はいずれも医療負担が子どもたちの健康にとって重大な影響をもっており、乳幼児医療費助成制度の拡大改善の必要性を証明するものではないでしょうか。

        府下では44市町村中、28市町村が所得制限なし

  進んだ自治体の例としては、まず東京都23区のうち20区が既に就学前まで無料、17区が所得制限なしとなっています。また京都園部町が子育て支援策として98年度から中学校卒業まで、今年度(99年度)からはなんと高校生まで医療費助成制度を実施しているのであります。また所得制限については、全国47都道府県中、半数を超える28都道府県が所得制限なし、政令指定都市では札幌、千葉、名古屋、京都、福岡の各市で所得制限なし、大阪府下では44市町村中、28市町村が所得制限なしとなっており、今後なお拡充される状況であります。
 大阪市の立ち遅れは明らかではないでしょうか。
 大阪市は最近発表したΓ大阪市まちづくりレポート’99」において、子育て支援・児童健全育成をかかげ、子どもを安心して生み育てられる環境の整備を力説しています。

         大阪市は子どもを生み育てる事が困難な都市

 この点でいえば、大阪市が人口の低迷、平均余命の短さ、加えて出生率が95年度でみれば全国平均1.42に比べ1.29と落ち込んでいることをみたばあい、大阪市がいかに健康都市という点で遅れをとっていること、とりわけ子どもを生み育てる事が困難な都市であることを物語るものであります。
 「最近心身ともに弱い子どもが増えている。この要因として元気―杯遊べる公園が少ない、幹線道路による大気汚染、騒音などで子どもの健康、基礎体力形成にとって不利な条件が大阪では多い。だからこそ大阪市においては他都市並のレベルに甘んじていることは許されない。一歩先んじた、進んだ乳幼児医療制度が求められるのではないか」とある医師がおっしゃいました。まさに的を得た指摘ではないでしょうか。

就学前までで19億円、所得制限の撤廃で13億円、年間32億円で可能

 財政的な裏づけでありますが、制度改善のために要する新たな費用は、就学前まで助成するために19億円、所得制限を撤廃するために13億円で、年間32億円もあれば可能と試算されております。住宅施策として、新婚向け家賃補助制度が功を奏して子育て層の市内定着に役立っているという報告を聞いておりますが、これは対象世帯3万3千500世帯、年間84億4千300万円であります。今回の乳幼児医療助成制度の改善は、これ以上の子育て層の市内定着の効果を及ぼすものと私は確信致します。
 また、巨大開発支援の赤字穴埋めに投入する945億円のたった3%で、やる気になれば十分可能であります。
 健康都市大阪を目指し「だれもがあこがれ、住んでよかったと思う大阪」「市民の皆様が誇れる大阪」をスローガンに終わらせる事なく、市民が実感できるものとするためにも、全国に誇れる進んだ医療行政が求められるのではないでしょうか。今回の乳幼児医療においては、乳幼児医療助成制度の改善がその1つであります。

 与野党の立場、思惑を超え、公約実現、市民の幸せにつながり役立つことには賛成を

 最後に議員の皆さんに訴えます。
 私はこの条例案を提案するにあたり、府市会議員の皆さんの4月の選挙公約、99年の各党代表質問、予算質疑などを改めて読ませて頂きました。
 代表質問では自民党さんは「最近の子育ては、身体的・心理的負担のみならず、養育費や教育費、医療費などの経済的負担が相対的に重くなっていることから、負担軽減策の推進も必要です。現在、児童手当の支給や乳幼児医療費助成事業などが行われていますが、これらは比較的所得の低い方を対象とした事業であるため、とりわけ影響の大きい所得制限額に近い中堅所得層がその恩恵を受けることができないという状況になっており、何らかの配慮が必要ではないでしょう」と述べられ、公明党さんは「乳幼児医療費助成制度のさらなる拡大」と大変力強い発言をなさっておられます。
 また、今年度予算委員会では「乳幼児医療費の無料化でございます。一昨年12月から通院の分につきまして3歳児まで充実して頂いた。やはり今後さらに拡充をして頂きたいと思うんですが、石部局長いかがでしょうか」と具体的に拡充を求められております。ちなみにこれは公明党さんの発言であります。
 選挙公約という点で言えば、府会議員の場合もっと具体的で「乳幼児医療費の6歳までの無料化(入・通院)、「乳幼児医療費の無料化を拡大します」これはいずれも公明党の府会議員の公約であります。市会議員の皆さま方の公約については、るるご紹介申し上げるまでもなく皆さまご存じのとおりで、多くの方が「少子高齢化対策」「子育て支援」「保険・医療・福祉の更なる向上と充実」等、異口同音に述べておられます。
 この際、与野党の立場、思惑を超え、公約実現、市民の幸せにつながり役立つことには賛成という立場で、今回わが党が提案しております条例案にご賛同いたたき、可決成立させていただきますようかさねてお願い申し上げ、私の提案説明と致します。

           大阪市乳幼児医療費助成条例案

 (目的)
第1条 この条例は、乳幼児に係る医療費の一部を助成することにより、乳幼児の健全な育成に寄与し、もって児童福祉の向上を図ることを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 乳幼児本市の区域内に住所を有する者で6歳に達した日以後における最初の3月31日を経過するまでの者
(2) 保護者乳幼児を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父若しくは母(父及び母がともに当該父及び母の子である乳幼児を監護し、かつ、これと生計を同じくするときは、当該父又は母のうちいずれか当該乳幼児の生計を維持する程度の高い者)又は父母に監護されず若しくはこれと生計を同じくしない乳幼児を監護し、かつ、その生計を維持する者
(3) 医療保険各法 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)、国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)及び地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)
(4) 自己負担費用 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)により世帯主若しくは組合員(世帯主又は組合員であった者を含む。以下「世帯主等」という。)が負担すべき額又は医療保険各法その他の法令により医療を受けた者が支払うべき額(国民健康保険法又は医療保険各法に規定する標準負担額に基づき現に負担した額を含む。)

(対象者)
第3条 乳幼児医療費(次条の規定により助成するものをいう。以下同じ。)の助成を受けることができる者(以下「対象者」という。)は、国民健康保険法の被保険者(被保険者であった者でなお継続して医療に係る給付を受けているものを含む。)又は医療保険各法の被保険者(健康保険法の日雇特例被保険者を含む。以下同じ。)若しくは組合員の被扶養者(被保険者又は組合員の被扶養者であった者でなお継続して医療に係る給付を受けている者を含む。)である乳幼児の保護者とする。
2 第1項の規定にかかわらず、乳幼児が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その保護者は、乳幼児医療費の助成を受けることができない。
(1) 生活保護法(昭和25年法律第144号)の規定により保護を受けている者
(2) 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第27条第1項第3号に規定する児童福祉施設(知的障害児通園施設を除く。)に入所している者
(3) 前2号に掲げる者のほか、国が実施する医療費公費負担制度に基づき、自己負担費用の負担を免れることができる者
(4) 大阪市重度障害者医療費助成規則(昭和48年大阪市規則第119号)の規定により医療費の助成を受けることができる者
(5) 大阪市母子家庭及び父子家庭医療費助成規則(昭和55年大阪市規則第80号)の規定により医療費の助成を受けることができる者

(助成の範囲)
第4条 本市は、対象者に対し、次の各号のいずれかに該当する場合に乳幼児医療費の助成を行い、その助成の額は、乳幼児に係る医療については、入院医療及び通院医療に係る自己負担費用(医療保険各法の被保険者若しくは組合員(被保険者又は組合員であった者を含む。以下「被保険者等」という。)に対し保険者若しくは組合から家族療養付加金が支給される場合又は法令の規定により乳幼児に対し国若しくは地方公共団体から自己負担費用について医療費助成金が支給される場合はその額を控除した 額とする。以下同じ。)とする。
(1) 国民健康保険法の規定により、乳幼児が療養の給付を受けたとき又は世帯主等が乳幼児に係る疾病若しくは負傷について入院時食事療養費の支給、特定療養費の支給若しくは療養費の支給を受けたとき
(2) 医療保険各法の規定により、被保険者等が乳幼児に係る疾病若しくは負傷について家族療養費の支給を受けたとき又は入院時食事療養費の支給を受けたとき
(3) 前2号に掲げるもののほか、乳幼児が他の法令の規定による医療に関する給 を受けたとき

(助成の方法)
第5条 乳幼児が乳幼児医療費の助成に関し本市と契約を締結した医療機関(以下「契約医療機関」という。)において医療を受けたときは、乳幼児医療費の助成は、自己負担費用を当該契約医療機関に支払うことによって行う。ただし、当該乳幼児が契約医療機関以外の医療機関で医療を受け、自己負担費用の支払があったとき又は市長が特別の理由があると認めるときは、当該乳幼児の保護者に支払うことができる。

(助成の申請等)
第6条 乳幼児医療費の助成を受けようとする者は、その資格について市長の認定を受けなければならない。
2 前項の認定を受けようとする者は、前条第1項本文に規定する助成を受けようとする者にあっては所定の乳幼児医療証交付申請書に、前条第1項ただし書及び第2項に規定する助成を受けようとする者にあっては医療費支給申請書に、次に掲げる書類を添えて市長に提出しなければならない。ただし、市長が特別の理由があると認めるときは、添付書類を省略することができる。
(1) 医療保険証
(2) その他市長が指定する書類
3 市長は、前項の申請があったときは、その資格を審査し、資格を認定したときは、乳幼児医療証又は医療費支給決定通知書を交付する。
4 前条第1項ただし書及び第2項に規定する助成を受けようとする者は、乳幼児が医療を受けた日の属する月の翌月の初日から起算して1年以内に申請をしなければならない。

(医療証の提示)
第7条 乳幼児の保護者は、契約医療機関において当該乳幼児に診療、薬剤の支給その他の医療を受けさせようとするときは、当該契約医療機関に乳幼児医療証を提示しなければならない。

(届出義務)
第8条 乳幼児医療証の交付を受けた保護者は、第6条第2項の規定による申請の内容に変更が生じたときは、所定の異動届により、速やかに市長に届け出なければならない。
2 乳幼児医療証の交付を受けた保護者は、その資格を失ったときは、所定の資格喪失届に乳幼児医療証を添えて、速やかに市長に提出しなければならない。
3 乳幼児の保護者は、乳幼児医療費の助成事由が第三者の行為によって生じたものであるときは、所定の第三者行為による傷病届により、速やかに市長に届け出なければならない。

(譲渡等の禁止)
第9条 乳幼児医療費の助成を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することはできない。

(助成金の返還)
第10条 市長は、乳幼児医療費の助成事由が第三者の行為によって生じたものである場合において、当該乳幼児が同一の事由につき損害賠償を受けたときは、その価額の限度において、助成金の全部若しくは一部を支給せず、又は支給した助成金の全部若 しくは一部に相当する金額の還を命ずることができる。
2 市長は、偽りその他の不正な手段により乳幼児医療費の助成を受けた者があるときは、その者から当該助成金の全部又は一部に相当する金額を返還させるものとする。

(施行の細目)
第11条 この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。
   附 則
 この条例は、公布の日から施行する。