「21世紀は中小企業が主役の時代」へ支援策の確立を 

 99年10月19日 江川繁議員が中小企業等振興基本条例を提案

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただ今上程されました議員提出議案第23号「大阪市中小企業等振興基本条例」について、提案説明をいたします。

 商店街や地場産業に活気が失われることは「大阪の街」の崩壊そのもの

 まず、本条例の提案理由です。
 今、周知のように戦後最悪の不況が続いており、その中でも大阪の経済は、府内工業生産指数が1995年を100とした場合、この6月では90.2%にまで落ち込み、近畿の完全失業率も7月で6.1%を記録するなど、全国最悪の状態です。
 とりわけ中小企業のおかれている状況は深刻です。経済企画庁の10月月例経済報告では、消費税増税にともなう家計消費の落ち込みと民間設備投資の中小企業での大幅な減少基調が指摘されています。金融機関の中小企業への貸し渋りも、いぜんとして改善されておりません。そのうえ、来年6月からは現行の「大規模小売店舗法」に代わって「大型店舗立地法」が施行されます。これは、大型店の進出をいっそう容易にするものであり、中小小売業、商店街の苦境がさらに深刻となることは明らかです。
 実際、私どもは、街の中で「1ヶ月仕事がない。どないしょ」「ものが売れない。家賃も払えない」「このままでは商売を続けることができまへん」など、大変深刻な声を次々と聞きます。また、商店街での空き店舗などが、目立って増えてきています。「大阪市商店街空き店舗調査」によれば、調査票を回収した商店街の67.5%で空き店舗が生じています。
 商店街や地場産業に活気が失われることは、単に経済的な影響ばかりでなく、子どもたちやお年寄りをはじめ、私たち市民が安心して生活できるくらしの拠点が失われていくという重大な意味をもっています。いいかえれば、「大阪の街」の崩壊そのものです。

 大阪市の中小企業への官公需発注率は、政令指定都市の中で最低

  こうしたなかで、消費を直接あたためる消費税の減税や、大企業の身勝手な海外進出、無謀なリストラを規制することなど、国の対策とともに、地方自治体としても、中小企業の営業を守るための施策に全力をつくすことが強く求められています。
 ところが大阪市においては、中小企業への官公需発注が1997年度42.7%、98年度は40.9%とさらに後退し、政令指定都市の中で最低ランクとなっています。
 事業所数では、製造業は1991年4万1065だったのが96年には3万6912、卸売・小売業、飲食店は13万276から12万2718へと大きく減少しています。
 
従業員数についても、製造業が39万7300人が35万4396人、卸売・小売業、飲食店が77万887人から74万9519人とこれまた大きな減少です。

       東大阪市では実効ある対策へ全事業所訪問で実態調査

  こうした方向を転換し、中小企業への抜本的な対策を強めることを市政の大きな柱にすえるべきであります。お隣の東大阪市においては、実効ある中小企業対策へ、3万をこえる全事業所の実態調査を開始しています。市長を先頭に、課長級以上の全職員が直接、事業所を訪問し、聞き取りと調査票の回収をおこなうというものです。
 「21世紀は中小企業が主役の時代」といわれています。ご承知の通り、大阪市では事業所数で99%、従業員数で75%にも達しています。今こそ、中小企業を支援し、21世紀の大阪市が活気あふれる人と緑と産業の調和した街づくりをすすめるため、本条例の制定が強く求められています。
 すでに中小企業振興条例が実施されているところでは、たとえば、全会一致で成立させた東京都墨田区では、条例制定にあたり、区内の中小企業を一軒一軒訪問する「しつかい調査」で、全業者の実態把握を行いました。また、「墨田区中小企業振興対策調査委員会」が設置され、第1に早急に着手すべき施策、第2に中長期に展開すべき施策の二つに分け、その具体的施策を順次実現しております。
 墨田区はじめ東京都の各区や長野県伊那市などの条例制定から大いに学ぶことが、中小企業の街、大阪市としてとりわけ重要なことであります。

 条例案は、中小企業の支援へ市の行政力をフルに活用などを明記

  次に、条例案の具体的内容について説明します。
 条例は、第1条(目的)から第10条(委任)までで成り立っていますが、第4条の中に基本的な施策の柱を示しています。大企業への民主的な規制や指導は、第3、第4、第5項に、中小企業への官公需の拡大は第6項に、中小企業・業者とその団体への研究・開発など多様な支援策については第7項に、大きな悩みとなっている後継者問題は第8項に、切実な要求になっている融資に関しては第11項に、それぞれ集約しています。中小企業を支援するために、大阪市の行政力をフルに活用することが大切です。そのための市長の責務を第5条に明記しました。また、この条例の円滑な実施にかかわる事項については、第9条で審議会を設けることとしました。
 議員各位に、21世紀にむけて、大阪市の中小企業への支援と街づくりのための賛同を強く訴えて、提案説明とします。

        

    大阪市中小企業等振興基本条例案

(目的)
第1条 この条例は、大阪市における中小企業並びに小規模事業者(以下「中小企業等」 という)の果たしている役割の重要牲に鑑み、中小企業等の振興の基本となる事項を定めることにより、中小企業等の健全な発展と大阪経済の活性化、市民福祉の向上に寄与することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 (1)中小企業中小企業基本法(昭和38年法律154号)第2条各号に定める規模及び業種の企業をいう。
 (2)小規模事業者中小企業基本法(昭和38年法律154号)第23条で小規模企業と定める規模及び業種の事業者をいう。
 (3)大企業前2号に該当するもの以外の企業をいう。

(基本方針)
第3条 中小企業等の振興は、大阪市の人と緑と産業の調和したまちづくりの実現を目標に、その基本となる位置づけのもとに、市内中小企業等の自主的な努力を尊重し、その特性に応じた総合的な施策を、国その他の機関の協力を得ながら、中小企業等、市民及び市が、自治と連帯のもとに一体となって推進することを基本とする。

(基本的な施策)
第4条 前条の基本方針に基づく中小企業等の基本的な施策は次のとおりとする。
 (1)中小企業等の経営基盤の強化を助長し、地域経済の健全な発展に寄与する施策。
 (2)中小企業等の振興に寄与する地域環境の整備改善に関する施策。
 (3)市内にある工場、事務所、店舗等、大企業が保持する経営拠点を縮小、閉鎖、移転、拡大、又は新規展開する場合の中小企業等及びその従業員が受ける影響調査。 
 (4)下請取引の適正化に関する市内の大企業の遵守事項及び下請業者の振興基準についての実態調査。
 (5)前2号の調査で、中小企業等及びその従業員に重大な損害を与え、又は、与えるおそれがある場合、それを未然に防止するための市内の大企業に対する指導、勧告及び要請。
 (6)市の物品、役務などの調達に関し、中小企業等の受注機会の恒常的な拡大を図るための施策。
 (7)中小企業等及びその団体が行う仕事おこし、研究、開発、イベント、交流、共同研修、技術取得及び継承に対する助成、支援及び設備補助又は提供。
 (8)青少年に中小企業等の優れた特質と地域での役割に対する理解を広め、あわせて後継者を育成するための施策。
 (9)市内の中小企業等の従事者の福祉の向上に関する施策。
 (10)中小企業等に関する調査及び情報の収集、提供等に関する施策。
 
(11)中小企業の街にふさわしい開業、金融等の支援に関する施策。

(市長の責務)
第5条 市長は、前条の施策を具体的に実施するに当たっては、次の措置等を講ずるとともに、消費者の保護に配慮しなければならない。
 (1)財政その他の措置を講ずること。
 (2)中小企業等及びその従事者に対して必要な考慮を払うこと。
 (3)国その他の関係機関と協力して施策の推進を図るとともに、必要に応じて、国等の施策の充実及び改善を要請すること。
 
(4)中小企業等の実態を定期的に調査し、意見を聴取すること。

(中小企業等の努力)
第6条 中小企業等を営む者は、経営基盤の強化及び従業員の福利厚生のための、自主的努力を払い、流通の円滑化及び消費生活の安全確保に努めるとともに、地域の生活環境との調和に十分な配慮をするものとする。

(市民等の理解と協力)
第7条 市民及び中小企業等の事業に関連ある者は、市内の中小企業等の特性を理解し、その健全な発展に協力するよう努めるものとする。

(大企業の協力)
第8条 市内の大企業であって、その事業に関して中小企業等と関係のあるものは、第4条の施策の実施について協力しなければならない。

(審議会)
第9条 この条例の実施にかかわる事項について、諮問に応じて審議をおこなわせるために審議会をおく。
 (1) 審議会は、市長の諮問に応じて調査し、又は審議するとともに、市長に意見を述べることができる。
 (2)審議会は、事業者、学識経験者、関係機関代表、市民で構成する。
 (3)審議会の会議は、公開を原則とする。

(委任)
10条 この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。
   附 則
 この条例は、公布の日から施行する。