大規模開発を抜本的に見直し、

  市民のくらし・福祉・教育最優先に 

               2000年1月26日         山中智子議員が98年度一般決算反対の討論 

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、1998年度大阪市一般会計等決算の認定に反対の討論を行います。
 いま、市民のくらしは、長引く不況、リストラや倒産・廃業など深刻さを増し、将来不安、介護への不安もつのるばかりです。
 こういう中で、本市に求められていることは、国に対して国民本位の経済政策への転換を求めると同時に、市民のくらし・福祉・教育を最優先にした市政運営につとめることです。とりわけ、市財政を悪化させている大規模開発を抜本的に見直し、公共事業の中身をゼネコン開発型から、住民型に切り換え、地域経済の活性化をはかることです。 ところが、当一般会計等決算にあらわれているのは、市民の願いは冷たく切り捨てられる一方、大規模開発とその破綻処理への公金投入がますます拡大されるという、文字通り逆立ちした姿であり、とうてい容認することはできません。

         市民の切実な願いがことごとく退けられている

 以下具体的に指摘いたします。第1は、市民の切実な願いがことごとく退けられていることです。

    介護保険導入にむけても高齢者の生活実態を省みない態度

 本決算は、介護保険導入にむけて、基盤整備に全力をあげるべき年でした。ところが、特別養護老人ホームの建設が不十分であり、いまなお待機者が4769人にのぼります。600人の方が派遣を待ち望んでいるホームヘルパーも、公的ヘルパーを増やすどころか、廃止しようとさえしています。公的ヘルパー廃止計画の白紙撤回を求めたわが党議員にたいし、市長は、「民間事業者の圧迫となるから」と、公的責任を放棄するような答弁を繰り返しました。また、保険料や利用料の減額・免除の制度を確立するべきですが、「国の問題である」として、市として責任を持とうとしないことは、爪に灯をともすようにして暮らす高齢者の生活実態を省みない態度です。

         学童保育に「空き教室」の使用をの願いも拒否

 少子化対策も、ますます重要かつ緊急の課題です。私は、そのなかで、学童保育と病児保育の問題を指摘いたします。
 一昨年、児童福祉法が改正され、昼間、保護者が家庭にいない児童を対象にした「放課後児童健全育成事業」、いわゆる学童保育を、衛生的で安全が確保された設備で行えるようにすることを、自治体に義務付けました。
 ところが、本市の学童保育のほとんどは、老朽化し、遊び場も近くにない劣悪な設備で実施されており、いつ命にかかわるような事故が起きても不思議ではない状況です。市内に
275ある空き教室及び余裕教室の使用によって、危険のない、衛生的な施設を学童保育の子どもたちに提供してほしい、この願い対して、「放課後児童健全育成事業」にあてはまらないと厚生省も指摘している「いきいき事業」を実施していると強弁し、これとの共存が「困難」だという理由にならない理由で、今回もこれをはねつけました。あろうことか、市長は「いきいき事業に来たらいい」などと、児童福祉法に明文化され、本市も補助金を出している学童保育を否定するかのような答弁を行いました。大阪市に住むすべての子どもを平等に扱うべき市長の発言として、看過することのできないものです。

             病児保育も全市で4カ所のみ

 子育て支援の一つとして、1994年から実施している「乳幼児健康支援デイサービス事業」、いわゆる病児保育あるいは病後児保育も、事業開始から5年もたつのに、現在全市で4カ所のみ。施設立ち上げのための施設整備の補助金もなく、委託料のあり方も、体制をとれば赤字になる、きわめて不十分なものです。ある病児保育所のスタッフは「今日は定員がいっぱいだからと断っても、子どもと荷物を置いて泣きながら走っていくお母さんもいます。子どもが病気の時ぐらいいてやりたいと思っても、それができないのが今の職場です。責任をもって働く女性も増えています。こういうお母さんを救い、高熱でしんどくても、こぶしで涙をぬぐいながらがんばる子どもを守るかけがえのない施設です」と語っておられますし、私をふくめて、利用してきたものにとっては、「この施設がなければ働きつづけられない」、まさに命綱のような施設です。多くの人が利用できるよう、委託料などを実態に見合ったものに引き上げて、箇所数をふやしてほしい、高すぎる利用料を軽減してほしい、という願いにも耳をかさない。全国有数の保育所入所待機児の解消のための抜本的な施策もない。これでどうして、深刻な少子化に歯どめをかけることができるでしょうか。

          市立聾学校の幼稚部の教室の不足も重大

 また、市立聾学校の幼稚部の教室の不足も重大です。聴覚に障害をもつ子どもが、音や言葉を獲得していく教育は、静かな独立した教室で、神経が集中できる状態でおこなうべきなのに、それが十分にできない事態がおこっています。しかも、今後、児童数が大幅にふえることがはっきりしているのに、解決策を示さないなど、一般校ではありえないことです。まさに差別ではありませんか。直ちに改善を求めます。

       中小企業への発注率は40.9%、全国で最低クラス

 次に中小企業への支援の貧弱さです。
 中小企業は、事業所数でも、従業員数でも、大阪経済の主役ですが、長引く消費不況のなかで、その存立が危ぶまれるほど重大な危機に直面しています。いま中小企業の活性化が、大阪市経済再生の最重要課題だといっても過言ではありません。OECDやILOの国際的調査でも、中小企業は雇用力、ものづくり、流通に大きな潜在力をもっており、これへの政府や自治体の支援が決定的に重要であるとしています。
 仕事がなくて困っている中小企業の実態を直視するならば、わが党が一貫して要求しているように、市の仕事の発注や物品購入を、大幅に中小企業にふりむけなければなりません。ところが、98年度、中小企業への発注率は40.9パーセントであり、依然として全国で最低クラスという有様です。
 商店街、市場が、スーパーなど大型店出店でひどい被害を受けていることは明らかです。たとえば城東区では、昨年秋、またスーパーライフがオープンし、これによって、小売面積に占める大型店の割合が約8割となりました。その開店とまったく同じ日に、近くの市場が閉鎖しました。途方にくれる店主の姿が忘れられません。市長、自治体の長には、大型店の出店に対して、地元商店を守る立場から意見を述べることが認められているのに、あなたはただの一度もその権限を発揮せず、大型店の進出を野放しにしてきました。
 大阪経済を支え、地域の発展に貢献してきた中小商工業者を見殺しにする姿勢だといわなければなりません。

   第三セクター事業は破綻処理も含めて、真剣な見直し検討を

 第2は、市民への手助けは、あれもできない、これもできないという姿勢の一方で、大規模開発には相変わらず巨額の公金を投入していることです。しかもそれらの事業の多くが破綻し、いっそう、市財政を圧迫していることも重大です。
 まず、市長が集客都市構想の基幹施設だとしている第三セクターについてです。
 第三セクター事業は、政府が推進の旗振りをして全国に広がりましたが、いま各地で、その失敗が明らかになっています。慌てた自治省はようやく昨年から地方自治体での事業を調査し、事業見直しの指針を出しました。この指針で本市の事業を点検すれば、アジア太平洋トレードセンター、ワールドトレードセンター、大阪湊町開発は、大きな債務超過をかかえており、破綻処理も含めて、真剣な見直し、検討がされなければならないことは、動かしがたい事実です。

    WTCの債務超過額は132億4400万円、売上の39ケ月分

 とりわけワールドトレードセンターについては、本決算委員会でも大問題になりました。雑居ビルと化したワールドトレードセンターは、96年度にすでに債務超過に陥りましたが、その額は雪だるま式に増え、98年度の債務超過額は132億4400万円、なんと当期売上の39ヶ月分にもなりました。これを破綻といわず、なんと呼ぶのでしょうか。
 ワールドトレードセンターに資金を貸している17の銀行が、この経営状態を見て、98年から、土地建物の全てを担保にとっていることからも、経営破綻は明らかです。市長は、「銀行が融資の担保をとるのは当たり前。住宅ローンで担保がいるのと同じこと」と驚くべき答弁をしました。公金が大量につぎ込まれている第三セクターと、個人の住宅ローンと一緒にするなどは、前代未聞の暴論であるとともに、開発で甘い汁を吸ってきた銀行の責任を免罪するものであり、絶対に認めるわけにはいきません。

        「第二庁舎化」計画で本来機能を失ったWTC

 わが党議員が、「これ以上傷を広げて、大阪市が被害を受けないためにも破たん処理を検討するべきだ」と要求したのに対し、市長はあくまでも破綻とは認めないと強弁しました。この無責任ぶりは、今回問題になった、いわゆる「ワールドトレードセンターの第二庁舎化」計画でいっそう浮き彫りになりました。三井物産、ユニバーサルスタジオジャパンの2大テナントが出ていくその穴埋めに、水道局、建設局、下水道局及び3つの外郭団体を入居させるというもので、すでに入居している港湾局などを加えると、本市関連の占有率は70パーセントにものぼります。本来機能が完全に失われることは明らかではありませんか。
 3局などが、ワールドトレードセンターに入居するための敷金31億円、4つの局と外郭団体がワールドトレードセンターに支払う年間家賃もまた、31億円などの数々の浪費や、建設局、下水道局が出て行ってしまう大阪駅前ビルの空洞化は、まったく意に介さないという態度も許せません。後世に残る暴挙であることを指摘し、改めて撤回を求めます。

       港湾局の埋立て事業会計が火の車でも巨大開発を推進

 決算質疑では、大阪湾のテクノポート計画を進める港湾局の埋立て事業会計が火の車であり、巨大開発の推進がいかに無謀であるかも明らかになりました。
 コスモスクウェア地区や舞洲の分譲地が、バブルの7年間では、68ha2200億円売れたものが、バブル後の7年間ではわずか13ha407億円しか売れないという状況の中で、それでもおかまいなく巨大開発を推進したために、1139億円もあった基金がどんどん取りくずされて、140億円にまで減少してしまいました。今後も土地が売れなければ、たちまち運転資金にもこと欠くありさまです。ところが、港湾局は、これにこりるどころか、さらに、夢洲などの開発にのめりこもうとしているのです。
 市長が発表した「夢洲街づくり素案」は、大幅な縮小を余儀なくされたとはいえ、定住人口4万5000人の街をつくるというものです。1万5000戸の住宅をはじめ、学校、保育所、病院、各種文化施設の建設など、5000億円とも6000億円とも言われる膨大な社会資本整備が必要となります。いったいどこからこの費用を捻出するのでしょうか。まさに、無謀のきわみです。
 また、3000億円もかけるという北港テクノポート線や道路トンネル建設も、夢洲の街づくりの縮小により、とうてい採算のとれるものではありません。
 オリンピックを錦の御旗にしたこのような巨大開発は、根本から見直すよう求めておきます。

不公正乱脈な同和事業は「法」期限後も年300億円もの巨費を投入

 第3は、不公正乱脈な同和事業をなお続けていることです。
 同和行政の特別法は、97年3月に終息しているにもかかわらず、98年度においても相変わらず300億円もの巨費が投入されています。例えば、芦原病院など医療施設の運営助成10億5300万円、同和浴場整備に5億4000万円、市同促に対しては解放会館夜間管理など、18事業31億円もの事業委託を行うなど、枚挙にいとまがありません。 また今回、同和住宅の管理がまったくずさんであることが明らかになりました。決算委員会でのわが党議員の調査により、水道の給水を停止している同和住宅は、1079戸。当局のいう空き家戸数873戸よりも、206戸も多いことが判明したのです。一般の市営住宅の応募倍率が、空き家で24倍という状況の中で、長年にわたって1000戸もの住宅が空き家のまま放置されるなどということは、とうてい認めることはできません。
 なお、わが党議員の追求で「同和向け改良住宅は残事業として307戸であるが、その6分の5を削減する。これをもって同和向け改良住宅の建設を終結する」との答弁があったことは、遅すぎたとはいえ、前進であると思います。

 平和事業「ピースおおさか」への助成金は削りつづけ、事業費は5年前の3分の1に

 最後に、どうしてもふれておきたいのは、平和に関する市長の政治姿勢についてです。 新しい世紀を目前にひかえ、核兵器も基地も戦争もない21世紀をという願いに、260万市民の生命と財産を守るべき本市が未来に目を向けた積極的な役割を果たすときですが、本決算委員会での市長および理事者の発言は、およそかけはなれたものでした。
 次々明るみに出るアメリカの機密文書によって、歴代の日本政府が、核兵器の通過を黙認してきたことが事実として確認されているにもかかわらず、相変わらず「事前協議がないから、核兵器は搭載していない」という詭弁をろうして、神戸市のように、個別の艦に非核の証明書を提出させるなどの、ほんとうに効力のある大阪港の非核化に足を踏み出そうとはしませんでした。新ガイドライン法=戦争法にともなう周辺事態法への対応も国まかせ、核兵器廃絶に関して、政府のアメリカいいなりの弱腰にも物をいわないという態度は、とうてい市民の納得を得られるものではありません。これら本市の平和に関する無頓着さは、本市、唯一の平和事業といってもよい「ピースおおさか」への助成金を削りつづけ、その結果、施設の命である事業費が5年前のなんと3分の1になっていることにも現れています。
 この23日、「ピースおおさか」が、「20世紀最大の嘘『南京大虐殺』の徹底検証」なる集会に、会場を提供したこともきわめて重大です。これに対しては、中国外務省など国内外から多くの抗議がよせられ、国際問題にも発展していることは、新聞報道などを通じて周知の通りです。
 「ピースおおさか」設立の目的からいって、「言論・集会の自由の立場から許可せざるをえなかった」などといういいのがれは通用するはずがありません。市長は議会での答弁で、「考え方が異なるという理由では公共施設の使用を不許可にできない」とのべましたが、これは考え方が異なるなどという問題ではないのです。集会の主催者は、日本の侵略戦争の本質を象徴する南京大虐殺はウソだと「ピースおおさか」の活動の理念を否定し、あからさまに挑戦しているのです。公共施設の利用のあり方に解消できる問題ではありません。
 侵略戦争への反省なくして、アジアの人々との平和・友好の関係の発展はありえないことを指摘し、こうしたことを2度とくりかえさないよう、強く求めるものです。
 以上、私の反対討論といたします。