大阪市の介護保険利用料は…

  安心できる制度へ引き下げ必要

      山中智子市会議員に聞く △下△

            (しんぶん赤旗 2000年9月30日)

−安心できる大阪市介護保険に改善する上で、今後の課題はなんでしょうか。

   なんといっても保険料に続いて利用料の減免を実現することです。大阪市は、8月25日の介護保険事業計画策定委員会に「介護保険施行後に係わる居宅介護サービスの実態調査」の中間報告をおこないました。これは、ケアプランの作成依頼を行った人のなかから3,000人を抽出して調査したものですが、これを見ると利用料負担の軽減が急務であることが一目瞭然です。「介護保険が始まって支払う利用料は変わりましたか」との問いには「増えた」が66.4%、「現在支払う利用料の負担感はどうですか」という問いには「大きい」「やや大きい」が43.3%です。また、「介護サービスを支給限度額の上限まで利用していますか」には「利用している」はわずかに22.3%しかなく、「上限まで利用していない理由は」の問いには「利用料が高い」が24.3%となっています。「介護保険制度の困りごとや不満は」の問いに対しては、「利用料」が61.0でダントツのトップです。大阪民医連がおこなった利用者調査では、2,437人の調査でサービスの利用率(限度額に対して)は平均で43.8%です。介護度が高くなるにつれて利用率が減り、介護度五では、35.3%しか利用されていません。つまり、市民は介護の必要度に応じてではなく、利用料の支払い能力で介護サービスを選択せざるを得ない実態になっていることが、これらの調査からも明らかです。実際にケアマネージャーの方に聞くと、「その人に必要なプランをと思っても、とてもそんなに払えないと言われる。この人から、このサービス、あのサービスを削ったらいったいどうなってしまうのか、健康状態や生活はいったいどうなるのか、という思いがこみ上げて、プランをつくりながら涙が止まらない」ということです。下の表を少し見てください。介護度ごとの平均利用額を先の大阪民医連の調査から計算してみました。これを見ると、高齢者の負担の限度は、どんなに多くても123,000円ですから、これぐらいの負担で必要なサービスを必要な時間受けられるようにするべきです。また、低所得者については免除も考えなくてはなりません。

要介護度

限度額(円)

1割負担(円)

平均利用率(%)

平均負担額(円)

要支援

61,500

6,150

57.8

3,555

要介護1

165,800

16,580

41.4

6,864

要介護2

194,800

19,480

43.0

8,376

要介護3

267,500

26,750

42.4

11,342

要介護4

306,000

30,600

42.7

13,066

要介護5

358,300

35,830

35.3

12,648

ヘルパーさんや特養ホームは量も質も大丈夫ですか
  コムスンの大幅な事業縮小が大きな話題になっていますが、大阪府下でも四一の指定を受けましたが、そのうち三五事業所を閉鎖したそうです。また、先の大阪市の調査では、事業者に「採算性はあるか」と聞いたところ、「ある」「めどがある」と答えたのは、ケアブランを作成する介護支援事業者で3.2%、サービスを提供するサービス事業者で12.1%にしか過ぎません。コムスンのような営利企業は、利益をあげることが目的ですから、採算が合わないとこれからも撤退していくことが十分考えられますし、儲けの少ないサービスは提供を拒むことも実際には起こるでしょう。それだけに、市社会福祉協議会が事業主体となって、ヘルパー派遣もデイサービスも行い、民間任せではなく、大阪市として、質の高い介護サービスを市民全体に保障する公的責任を果たすべきです。また、介護保険が始まって、市として特養ホームの待機者の数さえつかんでいませんでしたが、日本共産党の追及で今後調査することを約束しました。実態をハッキリさせて、待機者が全員入れるだけの特養ホームの増設を求めていきたいと考えています。

 -厚生省が、全国の自治体の減免の動きに対して、圧力をかけているようですが。   
 
いま、10月からの保険料徴収開始を目前に、全国で減免の動きが広がっていることにたいして、厚生省が“懸念”を表明し、最近では「適当でない」などとする文書を、全市町村に送付しています。そんな動きのなかで、大阪市が保険料の減額に踏み切ったことは、大きな一歩であり、全国に反響が広がっています。いまの厚生省の動きについていえば、高齢者の実態を踏まえた自治体の努力に対して、欠陥の多い介護保険制度をつくった厚生省が横やりを入れるなど、とんでもない話だと思います。いま厚生省がするべきことは、低所得者への減免が、他の被保険者の負担にならないよう、財政措置を講じて、全国の自治体をはげまし、国民のくらしを応援することです。大阪市に対しては、保険料減免の拡充とともに、利用料減免の実現にも踏み切り、その財源を国に堂々ともとめることこそ、地方自治体としての役割であり、安心できる介護保険実現の道だという立場で、これからもがんばりたいと思います。(おわり)