オリンピックを口実に建設急ぐ

   地下鉄北港テクノポート線 

地盤沈下の最中に無理な工事強行

安全確保はできるのか

辻議員の追及で問題浮き彫り

(しんぶん赤旗 2000年11月3日・大阪民主新報 2000年11月12日)

 2008年オリンピックを口実に、大阪市が1,870億円の巨費をかけて建設を急ぐ、地下鉄北港テクノポート線の大きな問題点が、11月2日開催された大阪市環境対策特別委員会での日本共産党辻ひで子議員の質問でまたひとつ明らかになりました。

 2008年開通至上命令 

 同線は、新桜島から人口島の舞洲、夢洲を経てコスモスクエアに至る7・3キロメートルの計画ですが、問題は、2008年開通を至上命令に、現在埋め立て中の人工島=夢洲の急激な地盤沈下の最中に工事を強行しようとしていることです。

 環境アセスも指摘 

 同特別委員会には、「北港テクノポート線に係わる環境影響についての検討結果報告書」が提出されました。本来環境影響調査は、工事が周りの環境に与える影響について分析することが目的ですが、今回は特別に地盤沈下が工事そのものに与える影響について言及し、「事業実施にあたっては、鉄道構造物が埋立地自体の地盤沈下による影響を受けないよう、構造・工法を十分検討するとともに、適切な施工と維持管理を行うこと」と特別の要望事項が記載され、この問題の深刻さを物語っています。
 まず、夢洲につくられる駅舎については、埋立地に盛り土をした直後から3年間かけて工事をはじめる計画です。しかし、埋め立て直後の時期は市当局が提出した舞洲での調査でも、最初の3年間には、7メートルもの地盤沈下が観測されているのです。7メートルもの沈下がおこる最中にどうして無理に工事をする必要があるのか、誰しも疑問に思うところです。「こんな無理な工事で、安全性が確保できるのか」という辻議員の質問に、市側は「問題なし」と強弁しましたが、誰が考えてもわざわざ、急激な沈下の最中に工事を行う必要性は、大阪開催が決まってもいないオリンピックに間に合わせることを考えなければ、全くありません。

 4万5千の町計画 

 地下をシールド工法(モグラのように地中をくり抜く、地下鉄や下水道建設の工事方法)ですすむ線路部分については、「工事をおこなう時期は沈下がほぼ終わっているから」と、安全性を強調しています。そして、「沈下は3年で終わる」として、埋め立て完了後4年目から工事にかかろうとしているのです。しかし、3年で「沈下がほぼ完了している」という保証はありません。担当課も、それは予測に過ぎず、見込み違いがおこる可能性があることを否定はしていません。舞洲のデーターでも3年を過ぎても年間50センチ前後の沈下が観測されています。これで「ほぼ沈下完了」といえるのかどうかは、大いに疑問の残るところです。しかし、2008年が至上命令になっているために、こんな無理な工程にならざるを得ないのです。
 さらに、大阪市はここにオリンピックの選手村をつくり、オリンピックがこなくても、ここに高層ビルを建て、人口45,000人の町をつくるとしています。しかし、この高層ビル建設に伴う地盤沈下が地下鉄に与える影響については全く検討されていません。大阪市は、「こうした高層ビルは地盤の固い層(洪積粘土層)まで杭を打ち、その上にビルをのせるので地盤沈下はわずかで大丈夫」と説明してきました。しかし、いま関西新空港で大問題になっているのは、いままで地盤が固く、沈下がごく少ないと思われていた固い層(洪積粘土層)が予想以上に沈下するという問題です。

 安全も採算も疑問  

 ところが、大阪市はこんな大問題をまともに検討することさえしていません。辻議員は「この関西新空港の経験からも十分に教訓をくみ取ることが必要」と強く求めました。
 また、辻議員が先の報告書で述べられている「地盤沈下による影響を受けないような構造・工法や施工と維持管理についてどのように検討されたのか」と質したのに対して、大阪市は「今後検討する」と述べ、まだ検討もされていないにもかかわらず、工事だけを進めようとしていることが明らかになりました。
 このように、今回の委員会での辻議員の質問は、市民から要望の強い路線の建設は後回しにして、オリンピックを最大の口実にすすめようとする北港テクノポート線の建設強行が、市財政に大きな負担を強いるだけでなく、地盤沈下の最中の地下鉄工事という、安全性にも採算性にも大いに疑問の残る難工事を余儀なくさせるという新たな問題点を浮き彫りにしたものです。辻議員が質問の最後に強調したように、「夢洲そのものの開発を含め、抜本的な再検討を加える」ことがいま、緊急に求められているのです。