乳幼児医療費助成は所得制限を撤廃し、小学校就学前までに拡充を

2000年12月1日 長谷正子議員が乳幼児医療費助成条例を提案

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただ今上程されました議員提出議案第23号、「大阪市乳幼児医療費助成条例」案について、提案理由とその内容について説明いたします。

             条例提案は、今回で16回目 

  内容は、現行の乳幼児医療費助成制度の内、通院4歳児までを小学校就学前までに年齢をひきあげるとともに、所得制限を撤廃する等の改善を行うというものです。
乳幼児医療費助成制度に関する条例提案は、今回で16回目です。

     子どもを生まない理由に経済負担の大きさをあげている人が5割  

合計特殊出生率の推移(全国と大阪市) 単位:人
年次 大阪市 全国
1975年 1.62 1.91
1980年 1.48 1.75
1985年 1.59 1.76
1990年 1.40 1.54
1995年 1.29 1.42

 提案理由についてご説明いたします。一人の女性が一生に生む子どもの数は、1995年度、全国平均1.42、大阪市では1.29と全国平均を大きく下回っています。大阪市政モニター報告書「子ども・青少年施策について」でも、子どもを生まない理由に経済負担の大きさをあげている人が5割をこえていることに見られるように、長引く深刻な不況の影響がうきぼりになっています。 今、長引く不況の中、失業率は全国的には4.7%、近畿はこれを大きく上回る5.8%となっています。倒産・廃業・リストラなどで、パートやアルバイト、派遣労働者といった不安定雇用が増加していますが、乳幼児を持つ若い世帯も同様にリストラや倒産にあい、「仕事がなく探して1年近くなるがいまだにない」「今はバイトでしのいでいるがどうなるか不安」など、こんな話は枚挙にいとまがありません。
 どんな社会情勢のもとでも、子どもを育てていく上で、経済不安と同時に心配し、胸を痛めるのは子どもの病気ではないでしょうか。

 「病気の時ぐらいお金に心配しないで治療を受けさせたい」は若いお母さんの願い 

  診療所の窓口で聞いた話ですが、「5歳、6歳になった子どもでも、今は大気汚染や食品添加物などの影響もあり、よく風邪をひいたり、アトピーや喘息になったりして診療に来る子も結構いる」とのこと、又、待合室では若いお母さんたちが「行動が活発になってケガも多く、診療の機会が多いので、薬代もばかにならない」「家賃も高いし、今までみたいに無料にしてほしい」などと、話されているそうです。
 診療報酬でも、6歳未満の初診、再診は大人に比べて点数が高くなっているし、乳幼児医療費無料化の適用されない世帯は何かと大変です。中には、窓口でお金を払えず、何日まで待ってほしいという方もときどきあるとのことです。
 公園で若いお母さん方に聞いた話でも、「幼稚園に行きだしたら、急に病気をもらってきた。おたふくや水ぼうそうの薬は高いし、幼稚園に行っていない弟にもうつった。その上入院したので、入院中は無料だが親が泊り込んだりしなくてはならず、食事代もかさんだりして大変だった」「幼稚園に払うお金も、今は一人だから月2万5千円ですむが、来年から弟も行くので2人で5万円払っていかねばならない。私の友達などは同じ病気やからと弟の薬を兄に飲ませている」「子どもが3人、4人といるところもあるが、どうして生活してはるんやろうと気になる」「子どもが病気の時ぐらいお金に心配しないで治療を受けさせたいです。5歳、6歳と無料になるならすごくうれしいです」などと話されていました。
 こういう声を真摯に受けとめるなら、5歳児、6歳児にも医療費無料化の助成をすべきではないでしょうか。

      政令市では福岡、札幌、名古屋、京都が所得制限なしで実施 

  次に、所得制限撤廃についてですが、前年度の所得で決められるために、例えば1999年の所得が制限をこえているために、2000年に生まれた子どもについては受けられないのです。失業したり、残業も少なくなって、実質的には前年度より所得が少なくなって、制度適用世帯になっているにもかかわらずです。さらにこの制度を受けられる受けられないの差はわずかです。いくら制度のカベといえども容認できるものではありません。こんな所得制限は撤廃して、すべての子どもたちが受けられるようにすべきです。
 ちなみに、他都市ではどんな状況になっているでしょうか。小学校就学前まで無料化しているのが東京23区の内20区、京都の園部町では何と高校まで助成しています。そして、東京は17区が所得制限はありません。全国47都道府県中、2分の1をこえる府県が所得制限なし、政令市では福岡、札幌、名古屋、京都が所得制限がありません。千葉は2歳まで、川崎、横浜、神戸は0歳児の所得制限はありません。大阪府下では44市町村中半数が所得制限なしとなっており、さらに拡充される市町村もあるようです。 大阪市では、若い世帯よびよせ策として新婚むけ家賃補助制度をはじめ独自の施策を実行しています。99年度では、新規、継続あわせて3万3864世帯が受けており、好評で、制度も6年に延長され、若い世帯に大変よろこばれ、人口減少の歯止めにも一定の役割をはたしています。その意味からも同様に子育て支援のために、乳幼児医療費無料化制度の拡充も求められているのではないでしょうか。

               必要財源は約32億円 

  就学前までの医療費無料化助成と所得制限をはずすための必要財源は約32億円と試算されています。
 一般決算の質疑では、WTCへの3局の移転に32億円も使うことが明らかになりました。それよりも、若い世帯の願っている乳幼児医療費無料化を小学校就学前までの拡充と所得制限の撤廃にふみだす方が、地方自治体としての健康・安全・福祉をまもるとの役割をはたせる、市としても胸をはって誇りをもってできることではないでしょうか。 決算委員会の質疑の中でも、小学校就学前までの助成拡充を主張された方もありますが、この条例案は議員のみなさまにも心の通う提案だと思います。
 そして、娘や息子、孫達が病気になっても経済的な心配をせず、健康に幸せにくらしてほしいと思うのは、いつの世でも多くの親の願いではないでしょうか。ぜひ、議員のみなさまには、乳幼児を育てている若い世帯の願いのこもったこの条例案にご賛同いただきますよう、お願いいたしまして、条例提案とさせていただきます。