大阪市  深刻化する大阪市の野宿者問題(下) 

 憲法と生活保護法の立場で

市、国は抜本策を示せ 

(しんぶん赤旗 2000年11月26日)

 谷下浩一郎市議に聞く

−多数の野宿者をなくすにはどうしたらいいのでしょうか。
 谷下 大阪市は昨年七月、大阪市野宿生活者対策本部(本部長・磯村市長)を発足させているのですから、抜本策を示すべきです。大阪市としては、憲法第二十五条と生活保護法にもとづいて、必要な人に生活保護を適用し、憲法に保証された最低限度の文化的な生活を住民と滞在者に保証するという地方自治体の義務を果たすべきです。 大阪市は、高齢者や病気の人は別として、失業によって野宿を余儀なくされている人には、「まず就労の努力を」と言って、生活保護の適用を拒んでいます。しかし、これらの人は「働けるのにさぼって働いていない」わけでは全くありません。大阪市の先に紹介した聞き取り調査でも8割の人が廃品回収等の仕事をしているのです。それでも収入はごくわずかのものだから、野宿となっているのです。働いていない人も高齢・病気で働きたくても働けなき人がほとんどです。このような人には、保護の適用がすぐにでも必要です。
 また、病気になった人に対しても、大阪市は退院即保護打ち切りという冷たい保護行政を行い、大阪府に対して不服申し立てが相次いでいますが、大阪府からは何度となく是正の指導がされています。市民の運動で一定の改善はされていますが、このような法律にも違反し、是正を何度も勧告されるというような異常な生活保護行政を即刻改めることが緊急に求められています。
 あいりん地区の日雇い労働市場には全国から労働者が集まり、60年代は港湾荷役、70年代は臨海コンビナートを中心とする製造業、80年代からは建設業と、それぞれの産業の発展に貢献し、そして高齢化し、いわば「定年」の時期を迎えているのです。多くの人は、退職金も年金もなく、失業=野宿、そして健康を害し、行き倒れという道を歩もうとしているのです。これを放置することは絶対にできません。大阪市とともに、国の責任が問われています。

 簡易宿泊所の活用は一石二鳥 

 − その場合、住宅の確保が必要ですね。
 谷下  そうです。あいりん地区での就労経験がある人は6割近くにのぼると言いましたか、これらの人にとっては、あいりん地区は第二の故郷です。地元では、空き部屋の目立つ簡易宿泊所を「福祉アパート」として再生し、野宿者の人を受け入れ、居宅での生活保護を可能にする取り組みがすすんでいますし、一階部分を共同リビングにするなどの努力もはじまっています。野宿者にとっても安心して生活できる場所であり、あいりん地区にとっても、元々住んでいた地域ですから一番野宿者を受け入れやすく、街に活気を取り戻すことのできる一石二鳥のことではないでしょうか。居住条件を改善して、「最低限度の文化的生活」を保証するものになるよう、行政としても積極的な支援が求められます。

 雇用の確保に全力を 

 −就労対策の面ではどうでしょうか。
 谷下  最近の市議会の議論では、日本共産党以外からも失対事業の実施を求める声がでてきています。国と自治体の責任で雇用の創出、確保に努め、社会復帰を支援する施策が重要です。大阪市は、市民の声に押されて、高齢者向けに特別清掃事業を実施していますが、これをもっと抜本的に増やすべきです。そして、地元の非営利法人などと協力して、雇用の場を多様な形で確保するために親身な援助・協力も行うべきです。
 自立支援センターが3カ所で開設されましたが、自立するためのポイントはなんといっても雇用の確保です。いまのホームレスの方の年齢や技能を考えれば、民間任せでは雇用の確保はおぼつきません。どうしても公的な就労を国と地方自治体の責任で確保させなければなりません。
 なんといっても、大阪市の野宿者問題は、最大の人権問題の一つであり、大阪市の街づくりの上からも最重要課題の一つです。これを放置して、オリンピックの2008年招致を最大の口実に、反省もなしに大型開発路線をひた走る市政の転換が、この問題からも切実に求められていると思います。野宿者問題の緊急の解決と、市政の市民本位への転換に、日本共産党市会議員団はいっそう奮闘したいと考えています。

(おわり)