大阪市の総合調査研究報告書で浮き彫り

 野宿者対策 国・府・市は急げ 

谷下浩一郎大阪市議に聞く

(しんぶん赤旗 2001年2月4日)

 

 大阪市は、野宿者(ホームレス)に関する五つの調査結果をまとめた「野宿者に関する総合調査研究報告書」を1月31日に発表しました。その内容から、どういうことが明らかになったのか、日本共産党大阪市議の谷下浩一郎さんに聞きました。

 深刻な野宿者の現状

 国・府・市による緊急対策の必要性を浮き彫りにしていると思いました。
 第1に、一刻も放置できない深刻な状態です。
 野宿生活者の聞き取り調査では、50代が44.6%、60代が30.5%、最高が85歳で平均年齢が55.8歳と、高齢者が中心です。そして、8割は収入を得られる仕事(9割が廃品回収業)をしていますが、月収は3万円未満が過半数を占め、食事は、59.4%が自炊、31.5%が廃棄食品と回答しています。健康状態は、「具合が悪い」という人が34.1%いますが、8割の人は通院も売薬の使用もしていません。
 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という日本国憲法はどこにいってしまったのかという、異常な事態、一刻も放置することのできない、人権問題です。市民の意識調査でも七三・五%の人が「国や府、市は一層積極的に野宿者問題に取り組むべきだ」と回答しています。

 人権守る抜本対策を緊急に

 マスコミは、この調査結果から、市民の野宿生活者に対する否定的なイメージが増えていることに注目しています。しかし、この調査では、野宿に至った原因を「やむを得ない事情(失業、疾病、高齢など)」としてとらえている人は、問題関心度が高く、問題解決のための対応に対して肯定的です。逆に、「自業自得」ととらえている人は、問題関心度が低く、対応にも否定的であることが指摘されています。行政として、野宿生活者の実態を市民に誤解のないように知らせ、人権問題として、緊急な実効ある対策をうつことが求められています。

 大阪市の根拠 報告書が崩す

 第2に、いままで大阪市は野宿者への独自対策に消極的態度をとる理由として、「他市以上のことをすると野宿者がいっそう大阪市に集中する」ことをあげてきましたが、今回の調査で、その根拠が崩れました。
 野宿者の職業経歴の調査から明らかです。野宿をする直前の職業についていた地域は圧倒的多数が近畿(90.7%)、とりわけ大阪府(81.9%)に集中しています。野宿者のほとんどが大阪やその周辺地域で働いていた人や仕事を探していた人です。
 同報告書は、「以上から明らかなように、現在大阪において野宿状態に陥ったのであって、『野宿生活者が大阪に集まって来ている』のでもなければ、『野宿するために大阪にきている』のでもない」と、結論づけています。

 大阪の野宿者多い理由は

 第3に、大阪市に10,000人以上という、全国一の野宿者が集中していることについて、釜ヶ埼(あいりん地域)という全国最大の建設日雇労働市場の存在があることを改めて明らかにしています。
 調査した野宿者のうち、釜ヶ埼での就労経験者は六割近くにのぼります。野宿に至る経過や、職業遍歴を見ると、野宿者の多くは、西日本全体から釜ヶ埼の日雇労働市場に集められ、最初は製造業に、最近は圧倒的多数が不安定な日雇労働形態を中心として、建設業に従事し、そしていま、バブル崩壊後の深刻な不況と高齢化のなかで、野宿を余儀なくされているということです。
 製造業に従事している間も、建設業に従事している間も、西日本全地域に安価な労働力として送り込まれ、日本の経済をその底辺で支えてきました。ですから、この問題は大阪市一自治体の問題では決してありません。国が、雇用、生活、医療の全分野にわたって、地方自治体と協力して対策を強めることを強く望みたいと思います。
 その点で、日本共産党の山下よしき参議院議員を責任者とする、日本共産党国会議員団ホームレス問題プロジェクトチームが1月26日に行った緊急申し入れの内容は重要です。
 国と自治体の責任で住居を確保することや、生活保護の適用、医療対策、公的な就労対策の四点を示しています。大阪市の実態調査からも、申入れは、まさに時宜を得たものです。
 日本共産党大阪市議会議員団は、山下参院議員や小林みえこ党大阪府委員会女性児童部長と協力し、野宿者問題の早急な抜本的解決に全力で奮闘したいと思います。