介護保険利用料負担の軽減は急務

   小笠原正一市会議員

(2000年6月20日)

  介護保険が実施されて2カ月がたちました。政府の認識は森首相も、丹羽厚生大臣も「順調にスタート」「スムーズにスタート」としていますが現場では様々な問題が噴出しています。
 大阪市の「介護保険事業計画」では、平成12年度の居宅要介護者は、45736人ですが、ケアプランの作成にまでこぎつけたのは、4月末現在で23348人で51%にすぎません。また、認定された人達が、サービス支給限度額一杯までサービスを活用しているのかどうかは、介護報酬の支払いが6月末時点でなければ明らかにならないため、現段階では認定された人に、どれだけサービスが提供されたか、まだ市として把握できていません。
 そういうなかで順調なスタートという評価をする首相や厚生大臣は、現場の状況をまったく無視しているというほかありません。
 いま、ケアマネージャーが一番苦慮しているのは、ケアプランをたてるにあたってまず、本人の支払い能力がたちはだかるという問題です。「認定に見合ったプランが利用料負担が重いというこでつくれない」と心を痛めています。
 訪問介護でも、これまでは約8割の人、つまり住民税非課税の人がが無料でサービスを受けていました。この人たちは激変緩和という経過的措置で1割の負担を3%に軽減する措置がとられました。身体介護の場合は1割だと一時間426円ですが3%では128円と、これまでゼロだったものが、費用がいることになりました。
 デイサービス(通所介護)はこれまで800円でしたが、要介護3で1090円のサービス利用に係る負担が必要になります。
 しかし、費用負担はこれだけではありません。介護保険のサービス利用の際に自己負担となるものというのが施行規則で決められています。デイサービス、デイケアの場合は食材料費や、その他日常生活に必要で適当なものの自己負担の請求も認められています。
 これは阿倍野区のある「高齢者デイサービスセンター」の契約書ですが、1割の負担とは別に、送迎代が片道47円で往復94円、食事代として42円、入浴費が42円、そのほか全額自己負担が食材費として300円、おやつ代、日用品費、教養娯楽費がそれぞれ50円、合計628円が別に請求されています。結局これまで一回800円だったものが、要介護3の人では1718円と倍以上になっています。これまで週1回で月3200円がデイサービスだけで月6872円になっており、訪問介護を加えると軽く月1万円を突破します。国民年金だと月5万円そこそこに人が、1万円の費用負担を迫られることはは大変な負担です。要介護3の人の場合は、訪問看護やデイケアなども入ってきますから負担はさらに大きくなり、訪問看護やデイケア、その他のサービスは辞退ということになるのです。
 医療系サービスでは、デイケア(通所リハビリ)は、低所得者は無料でしたが、要介護3では1日1126円、この場合でも自己負担額は別にあります。
 また訪問看護はこれまで250円が、883円の負担が迫られます。
大阪市は「現行サービスの継続は維持したい」と策定委員会でも述べていますが、このように現行サービスの継続は極めて困難になっています。
 わが党の調査では、利用料負担が重いために、やむを得ずサービスを切り下げた人が15・3%の及んでいます。
 ヘルパーだけでなく、他の通所・訪問系サービスの利用料も3%にするには、大阪市では25億8000万円、住民税非課税の低所得者にしぼると20億700万円あれば可能です。国に求めるとともに、大阪市独自にも実施すべきです。
 施設介護では、1割の利用者負担に加えて、先述の自己負担はさらに大きくなっています。ある療養型病床群の病院では、要介護5の人に4月の介護保険の費用負担が食費を含めて、約89000円余り請求されていますが、これとは別に自費としてパジャマ、タオル、石けんなど日常用品のリース料の名目で10万7100円が請求されています。請求の合計はなんと月19万6000円を越えています。
 老健施設でも同様にリース料が請求されています。大東市にある老健施設の請求書では、介護保険導入前も、導入後も日用品基本料とか、下用タオル、ポーターブルトイレ防臭液の名目で、月19970円の施設利用料とは別の請求が行われています。
私は特養でもこうした自費負担の請求が行われていないか、自費負担の状況をは行政として調査し、過大な負担について抑制する指導を早急に行うよう大阪市に求めましたが、市は府とも協力して調査に当たることを約束しました。
 私が調べた範囲では、本人と契約して徴収している、納得づくの話といことになっていますが、リース料を払わなければサービスの質が落ちるということで泣く泣く払わされているケースがほとんどで、こういう負担ができない人は、入所したくても契約できないということになっています。
 このように政府は「順調にスタートした」といってますが、現場は高い利用料で苦闘しています。少なくとも、訪問介護利用料の3%への軽減を、居宅サービスのすべてに拡大するよう、国に求めるべきであり、大阪市独自にも努力すべきです。
 また、保険料徴収が10月から始まれば、保険料負担が増える分、サービスをさらに減らさざるを得なくなる人がもっと増えるのは目に見えており、10月徴収の再検討を大阪市としても求めるべきです。