汚染された正連寺川(中)  PCB・ダイオキシン 

(しんぶん赤旗 2001年2月15日)

 “まず道路建設ありき”でなく

住民に情報公開を早く 

 ダイオキシン類がサリンや青酸カリよりも急性致死毒性が高い人工物質中最高の毒物です。たとえば、PCB摂取基準が1日体重1kgあたり5マイグラクロムにたいし、ダイオキシン類耐用一日摂取量は4ピコグラムでPCBの実に25万倍も厳しい基準です。
 さらに、ダイオキシン類は慢性毒性としても最高の毒物です。ベトナム戦争で米軍によって散布された枯れ葉剤の中に混じっていたダイオキシン類によってベトちゃんドクちゃんのような奇形の子どもがたくさん生れたことはよく知られています。3年前には、世界保健機関(WHO)が発がん性を認めました。最近の調査で、胎児や出生後に摂取したダイオキシンが甲状腺(せん)障害や免疫毒性、知性の発達などに悪影響が見られるとする研究報告が続いています。細胞内でウイルスの増殖を促進するとの報告もあります。またダイオキシン類は環境ホルモンでもあります。

 汚染問題の解決に向けて

 こうした事実をふまえ、つぎの点を提案したいと思います。
 第1に、大阪府など事業者は、住民への情報公開、説明をただちにおこなうべきです。問題発覚後、すでに1年半がたとうとしているのに、いまだにまともな説明が住民におこなわれていないと言うのはどういうことでしょうか。その場合、当然ダイオキシン類の調査結果を全面的に発表すべきです。
 第2に、現在、大阪府などが計画している「正蓮寺川総合整備事業」は、阪神高速淀川左岸線建設が主目的ですが、新たな事態に直面した今、「高速道路建設まずありき」ではなく、「住民の安全、環境回復優先」を貫くべきです。この点で、阪神高速道路公団が1月12日、突然、工事の「入札公告」を発表したのは、住民無視、拙速の極みでしょう。3月29日予定の入札はただちに白紙撤回すべきです。
 阪神高速の「入札公告」は、「本工事は、高速道路建設のための基盤整備及び土地止め壁設置工事である。なお、基盤整画工事は(略)水域部分のしゅんせつをおこない、脱水プラントにてしゅんせつ土の脱水固化ののち、左岸側に埋め戻しをおこなう」とあります。工事には、PCB汚染ヘドロのしゅんせつ、処理の実施計画があるはずです。しかし驚いたことに、この「入札公告」は、一言もふれていません。PCB対策は、「入札公告」の本文にはなく「入札説明書」に「当地域の一部のヘドロ層においてPCBの存在が確認されているので、施工にあたっては十分な注意が必要である」とあるのみです。ましてや、ダイオキシン類対策の記述は全くありません。

 震災で液状化起こった地域

 計画では汚染ヘドロを、しゅんせつ(川底から取り出し)、(余水は凝集沈殿などで処理、処分する)、あらためて埋め戻す。その上をコンクリートで封じ込めるとするものです。しかし、こうした一連の工程の中でPCB、ダイオキシン類があらたな環境汚染源になることはないのか、最後に封じこめると言うが、川底は砂であり、阪神大震災で液状化が起こった地域であって決して安全ではないとの専門家の指摘があります。
ましてや、特別管理廃棄物扱いがもとめられるPCB、ダイオキシン類のいわば最終処分場を街の真ん中につくってよいのか、など疑問だらけです。
 政府の対応も、ダイオキシンの底質基準は決めてなく、汚染ヘドロの取り扱いや処理の法令上の基準はいまにいたるも全く示されていません。まさに超法規的工事がまかり通ろうとしています。
(いのちと環境ネットワーク・代表世話人 長野 晃)    

   (つづく)

 訂正:昨日付7段7行目「10〜15%」とあるのは「1〜15%」の誤りでした。編集上の手違いによるものです。