まるで開発会社 

大阪市予算案 14万署名の学童補助は据え置き

破たんの3セクに手厚い支援

(大阪民主新報 2001年3月4日)

 大阪市が2月23日発表した2001年度予算案は市債(借金)残高が5兆2750億円という深刻な財政危機に直面しているにもかかわらず、相変らず「オリンピック開催」「国際集客都市」を旗印に巨大開発をすすめ、市の第3セクターである「3K赤字」に加えて、新たに「大阪ドーム」と「クリスタ長堀」にも手厚い支援をする一方、14万人以上の直接請求署名が集まった学童保育の補助金は据え置くなど市民に冷たいものになっています。予算案は2日開会の市議会で審議されますが、あまりの逆立ちした税金の使い方に「いのちとくらしは金次第か」と批判が起こるのは必至です。

 大赤字の穴埋めに 

 97年3月に開業した「大阪ドーム」(西区)は市が20億円を出資し箪頭株主になっている第三セクター「大阪シティードーム」が経営。これ自体、「東京ドーム」[名古麺ドーム」「福岡ドーム」がいずれも民間の経営であることから見てて異常ですが、大阪近鉄バフアローズの観客数の低迷などで99年度の累積赤字は約117億円。このため、予算案では補助金6億4900万円、貸付金8億5300万円の計15億100万円を計上。以降もこうした支援を続け、総額は193億円にもなります。
 97年5月、地下鉄長堀橋−心斎橋間に開架した地下街「クリスタ長堀」(中央区)も客足が伸びず、105区画中102区画に店舗が入居しているものの、その3分の2が入れ替わっており、2000年度末で20億円の累積赤字が見込まれています。
 予算案では補助金4億9100万円、貸付金5億9000万円の計10億8200万円を計上。以降も総額101億円を導入する予定です。
 「3K赤字」の穴埋めとして批判されているワールドトレードセンター(WTC)に40億円、アジア太平洋トレードセンター(ATC)に33億円、湊町開発センター(OCAT)24億3300万円を、引き続き計上しています。さらに、市所有の株200億円を大阪市開発公社に現物支給し、第3セクター支援のファイナンスを創設することも盛り込んでいます。
 こうした破たんが明らかな第3セクターへの公金投入はマスコミでも「見直しがない『延命措置』と批判が出そうだ」(「朝日」2月23日夕刊)と指摘しています。

 五輪口実に大開発 

 「オリンピック」を口実にした巨大開発にも大盤振る舞いです。
 コスモスクエア−此花区(新桜島)間を結ぶ北港テクノポート線の整備に74億6600万円(総事業費1870億円)、夢洲−咲洲の海底トンネルの夢洲トンネルの整備に30億6000万円、新人工島護岸に159億5700万円、地盤沈下問題で中止の声が高まっている関西空港2期事業に53億4700万円をはじめ、オリンピック招致に6億3000万円、オリンピックスタジアム・プール建設準備に2000万円、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に30億円(貸付総額100億円)など計上しています。
  乱脈・不公だと批判が続いている同和対策事業も前年度より2億円多い53億7200万円、関連事業として13億2400万円を計上。
 この中には、改良住宅11億2400万円、共同浴場(6ヵ所)の改修15億円、一民間病院にすぎない芦原病院へ助成5億8800万円などが含まれています。
 その一方で、市民には国保料、下水道料金、大学・高校授業料など8項目で79億円(平年度)の値上を押し付け。とくに国保料は昨年度から「5年連続値上する」方針のもと、来年度も3%の値上を盛り込み、“滞納者”の制裁として発行されている短期保険証は昨年の2.5倍の約24000件(1月現在)にのぼっており、人権無視の「赤枠」記入も市民の怒りをかっています。
 問題の多い介護保険では利用料を減免したものの利用限度額の41%にしかならなかったとして、残った120億円(5ヵ月)を減額しています。
 切実な要求である学童保育や障害者作業所の補助金は据え置き(学童保育は重度加算年2000円)、市営住宅も新築はなく建替えばかりです。

 要求と運動で前進 

 市民と日本共産党の要求と運動でさらに前進した項目は次のとおりです。
 乳幼児医療費助成通院を4歳未満から5歳未満に引き上げ、所得要件も緩和▽児童生徒の就学費補助金を1億3000万円増額し25億9000万円▽地下鉄のバリアフリーとして、工レベーター14駅17基、エスカレーター四駅5基を設置▽地下鉄の安全対策を増額―車両転落防止装置(2億2900万円から2億4200万円)、非常停止合図装置(2億9100万円から3億9600万円)▽小学校米飯給食を週二回に。

 硬直化すすむ財政

 2001年度予算案は一般会計1兆9158億円(前年度比1.3%増)で、特別会計をあわせた全会計は4兆3550億円(同1.5%増)になっています。一般会計の収入では法人市民税の増額が見込まれるものの、市税収入、地方交付税とも減収で市債や基金のとり崩しでまかなっています。
 公債費支出は前年度比7.9%増の1733億円で、市債残高は一般会計で2兆5354億円(市民一人当たり97万円)、全会計では前年度から2118億円増えて5兆2715億円(同202万円)と、いっそう財政の硬直化がすすんでいます。