市民の窮状どこ吹く風
大阪市予算案 五輪口実に開発ラッシュ
(大阪民主新報 2001年3月18日)
大阪市の2001年度予算案の特徴は何か。
「磯村市長は、口を開けばオリンピックだ、国際集客都市だと、まるで熱に浮かされたかの如くで、しかも、このオリンピック招致を最大限に利用して、臨海部などのムダな大型公共事業を推進するとともに、WTCなど3K赤字の穴埋めに続いて、今回新たに、経営破たんしたドーム球場やクリスタ長堀への支援策を講じる一方、市民には国民健康保険料や下水道料金の値上を押し付けるなど、市民の窮状などどこ吹く風の予算編成をおこなったのであります。とうてい認めることはできません。」
日本共産党を代表して7日質問に立った下田敏人議員は、冒頭こう厳しく指摘し、巨大開発予算の大幅削減と失敗の穴埋めの中止などを要求、生活密着型への転換など積極的提案をおこないました。この下田質問をもとに、開発開始や火した磯村市政の姿を見てみました。
破たんした3セク支援
大阪ドーム
全国に4つあるドーム球場のうち、自治体が出資しているのは大阪だけ。大阪市はダントツの筆頭株主で、しかも1.8fの土地を196億円で購入し、それを民間地権者の6分1という安い貸料で、運営するシティドームに提供しています。この起債の利子返済だけで125年かかります。
にもかかわらず、経営がどうにもならないと総額193億円(今予算案で15億円)をつぎ込もうとしています。
磯村市長は「市民の貴重な財産になる」と居直り、はては「近鉄が弱いのは私の責任ではない」と、お門違いの答弁までしています。
クリスタ長堀
地下鉄長堀橋−心斎橋間に地下街と駐車場を総事業費830億円で建股。当初から“人の流れがのぞめない”と懸念されていましたが、案の定、地下街の売上高は99年度128億円の目標が79億円しかなく、テナントも実に3分の2が入れ替わっています。駐車場利用も7.3回の予定が5.8開店転(99年度)にしかなっていません。そこへ総額101億円(今予算案で10億8200万円)を投入する予定。
下田議員は両事業の共通点として、事業見通しの甘さをあげ、「いざとなれば大阪市が面削をみてくれるというもたれの構図であり、開発利益はゼネコンと大銀行、リスクは大阪市」と指摘し、安易な資金投入の徹回を求めました。
無謀な夢洲開発を推進
北港テクノポート線(コスモスクエア−新桜島)に74億6600万円、夢洲トンネルに30億6000万円と、本格的工事予算を組み、2008年オリンピックに間に合わせるとしていますが、開催できるかどうかわからず、まして招致に失敗すればどうするのか。無謀としかいいようがありません。
市は夢洲に15,000戸、45,000人の町をつくるとしていますが、だれが一体建設するのか。今の経済状況の中で、それだけの人が住むことになるのかもまったく不明です。しかか人が住むとなれば保育所や学校など各種の公共施設が必要になり、膨大な費用がかかります。
なによりも、夢洲の埋め立てはやっと終わり近くになったばかりで、宅地造成すらこれから。これでは北港テクノポート線の採算性などはじきようがありません。
至れりつせりUSJ
巨大テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)は31日の開業に向け“バラ色の夢”をふりまいていますが、事業主体は民間企業ではなく、大阪市が筆頭株主の第3セクター。この間、人(社長と取締役2人が大阪市出身、現職14人が出向)も金もつぎ込んでいますが、全国でテーマパークの破たんが相次ぎ、「そもそも官が税金を支出しておこなうべき事業だろうか」「巨大テーマパークは地元経済に本当に波及効果を及ぼすものなのか」(「週刊ダイヤモンド」99年9月25日付)という疑問もでているのに、しゃにむに突っ走っています。この事業はもともと住友金属、大阪ガス、日立造船などの大企業が古くなった生産設備をリストラして、レジャー施設を建設しようとしたもので、大企業が自らの負担と責任でやるべき事業。ところが、大阪市は「国際集客都市づくり」と称して誘致に動き、予定地の此花西部臨海地区の区画整備事業に乗り出しました。その対象面積は156.2fで、うち約54fがUSJ用地。この間つぎ込んだ税金も中途半端ではありません。
400億円の資本金のうち100億円を出資(出資率25%)、さらに100億円を貸し付ける(今予算案で30億円)ほか、USJへの土地提供などのために370億円の土地を日立造船と交換。区画整理事業では927億円の事業費のうち178億円を負担する。新たに埠頭建設や港湾道路整備に140億円、さらにUSJへの交通として高速道路出口ランプの設置に30億円など、その総額は918億円にも膨らんでいます。しかも、区画事業保留地22fを750億円で売却し、事業費の大半に充てるとしていましたが、売れたのはわずか0.2fだけ。「開業4年目の単年度黒字、6年後での累積赤字解消」を目指すとしていますが、最初から問題が生じているのです。
また、大阪市はUSJ西側の土地3fを約50億円で買い取り、暫定使用としてUSJの駐車場に提供していますが、USJ第2期事業の一部として先行取得したのではないかとの見方も強まっています。負担も責任も大阪市が負うという異常な事業について、下田議員は「今からでも遅くない。人も金もつぎ込むのはやめて、民間企業にまかせるべきだ」と主張しました。
根本的組替え要求日本共産党
一方、市民の住宅困窮度は大都市の中で最も高く、浸水被害対策もおざなり。緑や公園の比率も最低で、地域図書館の数も蔵書数も大きく見劣りしているのが実態です。下田議員はこうした福祉・生活密着型公共事業を優先してこそ、市民の願いにかなうばかりか、中小企業への発注率も高めることができると主張。緊急を要する課題の一つとして、学校施設整備を具体的に取り上げました。
市の老朽校舎改築予算案は98億円。98年度まで平均120億円程度だったことと比べると30%も減らしています。しかし、実態は深刻。いまだに昭和20年代建築の校舎が約30校もあります。耐震補強工事でも、40年代建築の校舎が対象のため、それ以前、30年代建築の小中学校約180校が取り残されたままになります。
「臭い・汚い・暗い」といわれる学校トイレの改修についても、国が新年度から400万円を超える分について3分の1補助することになったにもかかわらず、増額しようとしていません。
下田議員はこのような工事をずれば、13大都市中最低ラインの中小企業への発注率(41.2%)を高めることができるとして、当面50%をめざすよう主張しました。