大阪市、人も金も投入

 USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン) 「経済の起爆剤」というが…中小業者は冷やか

(大阪民主新報 2001年4月1日)

 超大型テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ、此花区)が3月31日開業。「関西経済の起爆剤」などと喧伝され、その経済波及効果は「大阪で8600億円、全国では1兆3000億円」といわれていますが、大阪市信用金庫(本店・中央区)が取引先の中小企業を対象にUSJへの期待度を調査したところ、7割以上が「期待せず」と回答。USJの運営事業会社「ユー・エス・ジェイ」は大阪市が筆頭株主の第3セクターだけに、「そもそも、自治体がこんな事業をやるべきなのか」の疑問も広がっています。

 元大阪市港湾局長の阪田晃「ユー・エス・ジェイ」社長は2月中旬のある会合で、「大阪の経済やまちづくりに大きく貢献するだろう」と自信を示しました。
 阪田社長によると、その経済波及効果は、周辺開発などすべて順調にいけば「大阪で8600億円、全国で1兆3000億円にのぼる見通し」で、「USJの従業員(アルバイト含む)約7,000人をはじめ大阪で77,000人、全国で115,000人の新たな雇用を生み出した」としています。
 ところが、3月上旬に大阪信金が実施した調査では冷ややかです。調査対象にした取引先1,174社のうち1,128社(回答率96.1%)が回答。その9割以上が従業員100人以下の中小企業です。
 「USJオープンを待ち望んでいるか」の質問には、「待ち望んでいる」がわずか23.8%。「どちらでもない」70.1%、「待ち望んでいない」5.4%で、大阪の中小企業者は「期待を持っていないようです」と分析しています。
 「大阪経済はUSJのオープンで活性化するか」では、「全地域・全業種で活性化」との回答はわずか7.2%。「特定地域・特定業種で活性化」では55.9%になっていますが、「変わらず」も35.0%もあります。これについて、次のように分析しています。
 「USJオープンまでの工事に関しても関西の中小企業はほとんどその恩恵を被ることができませんでした。同様に、今回のオープンでもたらされる経済効果についても広く波及せず地域的にも業種的にも限定され活性化は期待できないと考えているようです」
 それを裏付けるのが「USJのオープンが自社の業況に及ぼす影響」ついて。「変わらない」が75.2%、「どちらとも言えない」が13.0%で、「USJのオープンで業況回復を予想する企業は皆無に近い状況です」。
 一方、大阪のホテルはどこともUSJ関係の予約で満室状況で、室料を値上げするなど強気のようですが、あるホテル関係者はこういいます。
 「確かに1年ほどは予想通りの客足になるでしょうが、問題はそれから。意見はわかれるところですが、うちは2年目以降、USJ関係と一般の予約申込みが入った場合、一般を優先することにしています」
 ちなみに、大阪信金の調査で「USJに行く予定」を聞いたところ、「近々いく」はわずか6.8%。「一度は行く」も42.1%止まり、「機会があれば行くも」13.7%と低く、逆に「あまり行こうと思わない」「行きたくない」合わせて16.0%にもなっています。

「民間がやること」 日本共産党が主張

 このUSJに大阪市は人も金も注いでいます。まず「ユー・エス・ジェイ」の資本金400億円のうち100億円を出資、筆頭株主となり、さらに100億円の融資もおこなっています。USJの玄関口となるJR桜島線の新駅前の再開発事業など周辺整備にも178億円を投入。USJ西側の土地約3haを約50億円で買い取り、当面USJの駐車場として提供。交通アクセスとして阪神高速道路出口ランプの設置に30億円。USJ54haの底地は大半、住友金属、日立造船、大阪ガスなど所有地(一部は大阪市)ですが、それを大阪市は区画整理事業で、建物などを撤去し、整地した上、道路や下水道を整備しましたが、その事業費969億円のうち大阪市は178億円を負担しています。事業費の8割は減歩によって生み出した22haの土地を売却して充てることになっていますが、売れているのはわずか0.2ha。
 「ユー・エス・ジェイ」は開業初年度の売上高800億円、4年目で単年度黒字、6年目で累積赤字解消を目標にしていますが、そうなる保証はなく、もし失敗すれば規模が大きいだけに、筆頭株主である大阪市が引き続き公的資金を投入することになりかねません。
 日本共産党大阪市議団は「大阪市は今からでも、このように人も金もつぎこむことはやめて、民間企業にまかせるべきだ」と主張しています。

中山徹・奈良女子大学教授の話

 旧自治省は、行政は安易に第3セクターをつくるべきではないし、破たんした時、行政の責任は出資だけだということをあらかじめはっきりさせておくべきだという趣旨の通達を出しています。いま大阪市は、破たんしたATCビルなど第3セクターの穴埋めに公金をどんどん投入しています。それ自身、通達の趣旨からみてもおかしいことですが、USJがその二の舞いにならない保証はなく、その場合、だれが責任をとるのかはっきりさせるべきです。
 たしかにUSJは当初は順調かもしれませんが、危惧するのは付随した関連事業です。関西空港でも、鳴り物入りでりんくうタウンや泉佐野コスモポリスをやりましたが、すべて失敗している。USJでも映像情報産業の立地だなといって盛んにやっていますが、同じ失敗を繰り返す兆候はすでに出ています。
 だいたい、日本で第二の経済力を持つ大阪が、「経済の起爆剤」だといってテーマパークやオリンピックに頼ること自体末期的です。テーマパーク自体、公共性がないわけだから、やるなら民間にまかせるべきです。