五輪招致にこれ以上予算使うことはムダ 

瀬戸一正大阪市議に聞く

“財政負担重い”妥当なIOC判断

誘致口実の開発見直せ

(しんぶん赤旗 2001年5月19日)

 2008年オリンピックの大阪市招致問題で日本共産党の瀬戸一正大阪市会議員に聞きました。

−国際オリンピック委員会(IOC)は15日、2008年オリンピック立候補都市についての調査報告書を公表しましたね。

 瀬戸  報告書は、立候補している5都市の内、北京、パリ、トロント(カナダ)を「エクセレント」(すぐれている)と格付けし、大阪市については「交通渋滞の心配があり、市の財政負担が重すぎるのではないか。この課題が十分解決できるのか、確信がもてない」ときびしい指摘をおこない、イスタンブール(トルコ)とともに、オリンピック招致は絶望的になりました。IOC理事会は、両都市の招致活動費用の浪費をさけるために、立候補辞退を勧告することも検討したといわれています。
 7月13日のIOCモスクワ総会で決定される開催都市は、事実上3つにしぼられ、大阪市がこれ以上招致活動にエネルギーと予算を使うことはムダだと言わざるをえません。

−IOC報告書の指摘は、大阪市民の民意に添ったものではないでしょうか。

 瀬戸 わが党はこれまで、2008年オリンピック招致については、大阪湾ベイエリアでの巨大開発をめざすもので、深刻な不況と市財政の悪化のもとでは、招致・立候補する条件はないとの態度を表明してきました。この点で、今回のIOC評価委員会の判断は妥当なものだと考えます。

 第3センターが財政危機に拍車 

 財政問題では、オリンピック招致をテコに推進されてきた巨大開発が完全に破綻し、17日付の各紙で報道された帝国データバンクの「全国の第3セクターの借入金ランキング」では、ATCビルが第2位、WTCビルが第4位、OCATビルが第7位、地下街・クリスタ長堀が第10位と大阪市の関係が4つも入ったことに象徴されるように、市の財政を危機においこんでいます。2001年度末見込みでは、市の借金は5兆2715億円、市民1人当り202万円にもなります。

 採算とれぬ地下鉄建設 

 大阪市はオリンピック選手村に予定している夢洲、80,000人収容のスタジアムなどを建設する舞洲を結ぶ地下鉄・北港テクノポート線(咲洲、此花区桜島間。約8キロメートル)の建設工事を3月から始めました。事業費は1,870億円にものぼります。仮にオリンピックを招致できてもわずか2週間、普段は無人の人工島に地下鉄を通して、採算のとれるはずがありません。
 消費不況が市民生活と中小企業・業者を直撃し、くらしと営業を支援する自治体の施策がかってなく強く求められている時に、これに逆行する行政をこれ以上続けることは許されません。

−磯村市長は、報告書に反論し、あくまでもモスクワ総会での勝利をめざすと言っていますが。
 瀬戸 オリンピック招致が本格化した1996度から昨年度まで、大阪市は合計41億5800万円ものオリンピック予算を組み、今年度も6億3000万円を予定しています。ムダな支出をきっぱりとりやめるとともに、北港テクノポート線をはじめ、オリンピック招致を最大の口実に推進してきた巨大開発も抜本的に見直すべきです。