市民の権利としての介護保障を市の責任でと修正提案
2000年3月30日
小笠原正一議員が介護保険条例案の提案
私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第63号大阪市介護保険条例案へのわが党議員団の修正案を説明いたします。
介護保険制度の導入そのものには賛成
わが党は、介護保険制度の導入そのものには賛成であり、大阪市の原案をよりよいものにする立場から、修正案を提出するものであります。
先ず初めに、全体としての特徴について述べたいと思います。当局提出の介護保険条例案においては、第一条で「市民の共同連帯の理念に基づき本市が行う介護保険事業について必要な事項を定め・・・」と、介護保険事業を市民の相互扶助の原則のもとで行うことが明記されています。これは、市民の共同連帯という言葉で社会保障としての介護保障を相互扶助制度に後退させようというものであります。日本共産党の提案は、そうではなく、市民の権利としての介護保障を市の責任で行うことを明記しているのが第一の特徴です。
第二に、日本共産党が提案している本条例案は、国の介護保険制度の枠内の部分について、市民に権利としての介護を保障しようという中身になっており、全高齢者対象のいっそう充実させた高齢者保健福祉事業とあいまって、車の両輪となって実効性をあげる関係になっている、そういう性格の条例案として提案していることが第二の特徴であります。
次に具体的な条文についてご説明いたします。
第二条では、基本理念について規定しています。
市長提案の介護保険条例案では、二条の基本方針のところで、全体の理念ともいうべき内容が規定されていますが、四項目とも市の「配慮」事項として規定されているに過ぎません。これに対して、私どもの提案は市民の権利を明記し、その権利の擁護を介護保険全体の運営の基本に据えています。 第三条では、その市民の権利を保障するために、市および介護サービス事業者の責務を明記しています。これも市長提案にはまったく欠落している大事な点であります。同時に市民の責務として「介護保険事業の運営に積極的に自らの意見を反映する努力を行う」ことを明記し、市民の権利は不断の努力によってこそ保障されるものであることを述べています。
第六条から八条では、介護認定について規定しています。
市長提案では、介護認定にかかわっては、介護認定審査会の定数だけが規定されていますが、日本共産党の提案は、第六条で介護認定調査の基本理念と体制について、第七条では、介護認定審査会について「被保険者の身体的精神的状況とともに、生活実態を反映した十分な審査」を行うという責務を明らかにした上で、それを人数的・体制的に保証するために、二千人以内という、市長提案の1050名よりかなり余裕のある人数を提起しております。また、第八条では市長提案には全く欠落している「介護認定に係わる自己情報の開示請求」権について規定しています。これも介護保険を市民が主人公の立場で運営するための不可欠の保障だと考えるからであります。
第十条、十二条では介護保険利用料金の減免を行うことを明記しています。
いままで訪問介護については八割以上の人が無料となっています。介護保険のもとでは、経過措置や特別対策があるとはいえ、恒久的なものではありません。原則一割の負担となれば、わずかな年金で生活している高齢者にとっては大きな負担になることは間違いなく、経済的理由を含めた減免制度の必要性は明らかだと思います。
第十三条では、保険料金について規定しています。中身は、一番所得の低い老齢福祉年金受給者や生活保護世帯は無料とし、他の階層については、市長提案の基本額の四分の一ずつ減額する内容です。本来住民税非課税の世帯から保険料をとること自体がむりのあることであり、市長に対しては、国に対し、せめて住民税非課税の部分までは無料とするよう働きかけることを強く求めたいと思います。その上で、本市独自の努力として、せめてこれだけは市民の負担軽減のためにするべきだと、市民の最低限の要求として規定したのがこの内容です。必要額は、約四十八億円です。市の計算でも介護保険導入による負担割合の変化によって大阪市の持ち出しは七十三億円も減少します。これは、保険料金の減額や利用料金の減免制度によって市民に還元して当然ではありませんか。財源的にも十分道理のある提案だと確信いたします。
最後に市民の苦情に迅速に対応し、権利を具体的に保障するものとしてオンブズパーソン(行政監視員)の設置について規定しています。
行政の責任が明確ないままでの措置制度とは違って、今度の介護保険制度は、市民と事業者との対等な関係を前提としています。ところが実際には市民には情報も十分に与えられておらず、第三者的な苦情処理と市民の権利擁護のための機関が不可欠です。市の責任で苦情の迅速な処理と市民の権利擁護をはかるための権限ある機関として提案したものです。
以上が提案の内容であります。何卒議員各位のご同意いただきますようお願いいたしまして、提案説明といたします。
大阪市介護保険条例(案)
(目的)
第1条 この条例は、介護保険法(平成9年法律第123号。以下「法」という。)等による新たな制度に対応し、本市における介護に関する基本理念を定め、本市等の責務を規定するとともに、介護保険の実施に関する基本的事項等に関し必要な事項を定 め、もって市民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
(基本理念)
第2条 本市が行う介護保険事業は、次に掲げる事項を基本理念として実施するものとする。
(1)市民は、基本的人権が尊重され、その尊厳にふさわしい自立した生活をおくれるように、質の高い介護サービスを自らの意思と選択で利用する権利を有する。
(2)市民は、介護保険の実施が、市民の意見が反映された民主的なものになるよう、事業の運営に参加、参画する権利を有する。
(市の責務)
第3条 本市は前条の基本理念にのっとり、介護に関する施策を総合的に策定し、これを実施する義務を有する。
(介護サービス事業者の責務)
第4条 介護サービス事業者は、第2条の基本理念にのっとり、その事業を行うにあたっては、本市の実施する介護に関する施策に積極的に協力しなければならない。
(市民の責務)
第5条 市民は、第2条の基本理念を尊重するとともに、介護保険事業の運営に積極的に自らの意見を反映する努力を行うものとする。
(介護認定調査)
第6条 本市が行う介護認定調査は、介護認定に被保険者の実態を反映させることを基本に、本市及び大阪市社会福祉協議会がこれを行い、介護支援事業者等への委託は行わない。
(介護認定審査会の定数等)
第7条 大阪市介護認定審査会(以下「認定審査会」という。)の定数は、被保険者の身体的精神的状況とともに、生活実態を反映した十分な審査が行えるよう、2,000人以内で市長が定める。
2 法令及びこの条例で定めるもののほか、認定審査会について必要な事項は、市長が第2条の基本理念にのっとって定める。
(介護認定に係わる自己情報の開示請求)
第8条 被保険者及びその家族は、認定審査会に対し、その保管する自己に係わる認定資料の開示の請求をすることができる。
2 認定審査会は、開示請求があった場合はすみやかに認定資料を開示しなければならない。
3 認定審査会の保管する書類、開示する資料の範囲、その他必要な事項は規則でこれを定める。
(介護給付)
第9条 介護給付は、次に掲げるものとし、法第27条から法第30条までの規定により要介護認定された者に対し、法各条の規定により保険給付する。
(1)法第41条の規定による居宅介護サービス費の支給
(2)法第42条の規定による特例居宅介護サービス費の支給
(3)法第44条の規定による居宅介護福祉用具購入費の支給
(4)法第45条の規定による居宅介護住宅改修費の支給
(5)法第46条の規定による居宅介護サービス計画費の支給
(6)法第47条の規定による特例居宅介護サービス計画費の支給
(7)法第48条の規定による施設介護サービス費の支給
(8)法第49条の規定による特例施設介護サービス費の支給
(9)法第51条の規定による高額介護サービス費の支給
2 法第42条の規定による特例居宅介護サービス費の支給及び法第49条の規定による特例施設介護サービス費の支給における本市が定める保険給付の割合は、100分の90と する。
(居宅介護サービス費等の額の特例(利用料の減免))
第10条 法第50条の規定により本市が定める割合は、100分の90を超え100分の100以下の範囲とし、利用料の減免については、規則でこれを定める。
(予防給付)
第11条 予防給付は、次に掲げるものとし、法第32条の規定により要支援認定された者に対し、法各条の規定により保険給付する。
(1)法第53条の規定による居宅支援サービス費の支給
(2)法第54条の規定による特例居宅支援サービス費の支給
(3)法第56条の規定による居宅支援福祉用具購入費の支給
(4)法第57条の規定による居宅支援住宅改修費の支給
(5)法第58条の規定による居宅支援サービス計画費の支給
(6)法第59条の規定による特例居宅支援サービス計画費の支給
(7)法第61条の規定による高額居宅支援サービス費の支給
2 法第50条の規定による特例居宅介護サービス費の支給及び法第49条の規定による特例施設介護サービス費の支給における本市が定める保険給付の割合は、100分の90と する。
(居宅支援サービス費等の額の特例(利用料の減免))
第12条 法第60条の規定により本市が定める割合は、100分の90を超え100分の100以下の範囲とし、利用料の減免については、規則でこれを定める。
(保険料率)
第13条 平成12年度から平成14年度までの各年度における保険料率は、次の各号に掲げる第1号被保険者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
(1)介護保険法施行令(平成10年政令第412号。以下「令」という。)第38条第1項 第1号に掲げる者0円
(2)令第38条第1項第2号に掲げる者20,284円(平成12年度にあっては5,071円、平成13年度にあっては15,213円)
(3)令第38条第1項第3号に掲げる者30,426円(平成12年度にあっては7,607円、平成13年度にあっては22,819円)
(4)令第38条第1項第4号に掲げる者40,567円(平成12年度にあっては10,142円、平成13年度にあっては30,426円)
(5)令第38条第1項第5号に掲げる者50,709円(平成12年度にあっては12,678円、平成13年度にあっては38,032円)
第14条以下は市提出案の第9条以下に同じ
(オンブズパーソンの設置)
第23条 本市介護保険に関する市民の苦情を簡易迅速に処理し、市民の権利擁護を図るため、大阪市介護保険オンブズパーソンを置く。
2 オンブズパーソンの所管事項、定数等必要な事項は、規則でこれを定める。