市内24保健所の1か所への統合は、

市民のいのちと健康を削る暴挙

 99年5月27日 矢達幸議員が反対討論  

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただ今上程されました、議案第101号「大阪市保健所条例の一部を改正する条例案」に反対、請願第25号、26号、及び32号に賛成の討論を行います。  

  保健所業務は人のいのちと暮らしに直接関わる重要な部署  

  大阪市はこれまでの保健所法にもとづいて、憲法第25条が国の責務のとした「公衆衛生」の保持・増進、すなわち国民の生命や生活を守るため、人口10万人に一カ所の設置基準をもって保健所網の建設をすすめてまいりました。そして現在市内24行政区に一カ所の保健所が設置されてきたものであります。  
 そして、保健サービスの「無料の原則」を保持することや「保健所運営協議会」の設置によって住民参加を保障してきました。  
 保健所の任務は、子供からお年寄りまであらゆる人を対象に病気にならないための予防の仕事をしています。それから、人々の暮らしの環境を安全快適に保もつための仕事をしています。  
 これらは人のいのちと暮らしに直接関わる仕事ですから誤りなくしっかり仕事をするために医師、保健婦、看護婦、栄養士、診療放射線技師、薬剤師、獣医師、検査技師など10数業種に及ぶ専門職種が知恵を出し合って仕事をおこなっています。  
 病気予防の仕事では、婚前教室から妊産婦検診、新生児・乳幼児検診、成人病対策、寝たきり老人のケアなどのほか、痴保老人を含む精神障害者の相談業務や社会復帰事業、難病患者への相談支援事業、結核患者の管理指導、アトピー・アレルギー、エイズ・感染症対策、中小企業の事業所検診などなどたくさんの地道な仕事をおこなっています。
 他方環境衛生の仕事では、飲料水の検査や公共井戸の安全管理、食料品や食器の安全検査、食料品製造工場・飲食店の検査指導、大気汚染・水質汚染・騒音振動、悪臭等公害防止、環境保全など広範囲にわたっているところであります。
 

          法律的権限もない保健センターに格下げ  

 この度の条例改正は、このように大きな役割を果たしている現保健所を、市内1保健所に統合し、24の現保健所は何の法律的権限もない保健センターに格下げしてしまうというものであります。  

        たった一回の議論で強行は民主主義に反する行為

  まず反対の第一は、このような市民のいのちと健康、くらしの後退につながる条例改正を何ら市民に告知しないばかりか、当事者の保健所長さえ全く内容は聞かされていません。それをたった一回の民生保健常任委員会と本日の市会本会議の議論で強行しょうとしているのであります。民主主義に全く反するからであります。  
 本来は、市民が主役の市政実現の立場から市民に内容を十分周知し、公聴会を行うなど慎重に扱かうべきであります。拙速に結論を出すべきではありません。撤回して再論議をおこなうよう強く要求いたします。  

           地域に密着し公衆衛生から大きな後退  

 第二の反対の理由は、地域に密着し公衆衛生を進めている保健所を廃止し保健センターに格下げし市内一カ所の保健所に統合することにより本来果たしきた役割が大きな後退と、なるからであります。
 大阪市当局は、統廃合の理由としてあげているのは、全市一カ所の保健所に統合することにより、広域的、技術的、専門的に強化され、食中毒やOー157の大規模発生の場合や輸入食品に対する系統的な監視指導の強化ができるなどとのべていますが、どれも統廃合の理由になりません。先般も西成区でホームレスの中での赤痢の集団発症した場合、「近隣の保健所から応援に入り機動的・効率的に対処できている」と市当局自身が議会で答弁してきたのではないでしょうか。  
 また専門的な対応の必要性が出て来れば、そういう部門や職員を環境保健局内に配置すれば対応できることは明らかであります。各区に一つあり市民に身近な保健所のスタッフが充実してこそ、食中毒の大量発生もスピイデイーに未然に防げるし、また、そうなった場合でも広域的な対応が効率的にできるのではないでしょうか。むしろ保健所を統合して実態を知らないスタッフが急に現場に駆けつけても効果的な対処ができないことは現場の意見でも明りょうであります。  
 また環境問題では、保健センターには法律的な権限はなく、住民からの訴えに対してセンターは受付て、保健所に連絡するのみとなり、市民との密着性がなくなり、「ただ連絡しておきます」との無責任な対応になり、市民からの信頼性も失われてしまいます。また保健所から現地出向くにしても距離的に非効率であり、合理性はありません。  
 さらに大阪市は「各種サービスは後退させない」と言いながら、その法律的な保障は全くありません。保健所の場合は、所長は医師で十数種類の専門職の職員を配置することは法律できめられていますが、センターでは、役人がつくる規則できめるだけで、全く縛りがありません。民間委託も可能になり保健所運営協議会を設置して住民参加を保障する仕組みもなくなります。  

             人減らし合理化が本当の目的  

 第三の反対理由は、市民の公衆衛生を後退させて人減らし合理化が本当の目的だからです。  
 国民の健康状態は、長時間労働・過密労働と徹底した労務管理のもとで、働く人達の過労死問題、高齢化社会における寝たきり老人問題、成人病の若齢化問題などのもと、厚生省の「国民生活基礎調査」ですら、国民4人に一人は有病者となっています。それに国民の生活環境も全く安心できない状況にあります。大気汚染、農薬、食品添加物、環境ホルモンなど一人ひとりの力では解決できない問題であり、国や自治体の公的責任は一層重大となっています。  
 地域における保健所の役割が大切となっているにもかかわらず、大阪市は、国の地域保健法制定による保健所統合を悪用し、エスカレートさせ保健所の廃止・縮小「人減らし」をやろうとしているのであります。  

          各区の保健所の充実発展こそ市民の願い

 この条例改正を強行するならば、大阪はますます不健康都市になってしまいます。関市長の時代から営々と先輩たちが築き上げてきた成果をつきくずし、取り返しのつかない傷をあたえるものになってしまいます。  
 保健所つぶしの本条例案を撤回し、各区の保健所を充実発展させ公衆衛生の先進都市、大阪市として発展を図るよう要求して反対の討論といたします。