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「障害者自立支援法施行に基づく障害福祉サービス等に

要した費用の支給に関する条例(案)」の提案討論

北山良三市会議員

2006年10月13日

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま上程されました議員提出議案第19号、「障害者自立支援法施行に基づく障害福祉サービス等に要した費用の支給に関する条例(案)」についてご説明申し上げます。

障害者自立支援法が4月から部分施行されて6ヶ月が経過しました。そして、この10月からは本格的実施へと移行しています。これら障害者自立支援法が施行されて、身体障害・知的障害・精神障害に対する福祉サービスや医療の提供が一元的に実施されるようになるなどの面もある一方、重大な問題点が、いっそう明らかになりつつあります。

この間、障害者やそのご家族の皆さん、各種障害者団体や福祉施設管理者の皆さんから、様々な切実な声が沸き起こっています。特に、「大幅な利用者負担増に耐えられず、施設から退所した」、「今まで受けていたサービスの利用をかなり手控えざるを得なくなった」、「収入の激減で施設経営は危機的状況になりつつある」など、まさに悲鳴ともいえる声が大きく吹き出しているというのが実態です。そしてすでに、障害者やその家族が、負担の重さや将来への不安などから、各地で無理心中や自殺をはかる事件が多発しています。

福岡市中央区では、将来の生活を苦にした53歳の母親が、重度身体障害者である27歳の娘さんを殺し、自らの腹に包丁を刺して無理心中をはかるという事件が発生しています。この方の場合、一昨年に夫をガンで亡くし、母親一人で福祉サービスを利用しながら娘さんの介護をしていたそうで、「費用をこの先ずっと払い続けることができるだろうか」と深刻に悩んでいたということです。命を取り留めた母親への「寛大な処分を求める嘆願書」が知人達によって裁判所に提出されていますが、その中には「母親は介護の負担が大きく、生活にも疲れ、障害者自立支援法への不安で心を閉ざし、不安定な状態になってしまっていた。障害者の生きる権利を奪うことは許されないが、母親一人を責めきれないのではないか」と書かれてありました。

また、東京都千代田区では、知的障害のある10歳の次男を殺し、自分の胸などを刺して無理心中を図った母親が逮捕されています。この母親にはもう一人、重度の知的障害のある18歳の長男がおり、この三人暮らしの中で「息子たちの将来を悲観し、生きていく自信が無くなった」と犯行に及んだとのことで、関係者に大きな衝撃を与えています。

大阪市内の障害者作業所に通う45歳の男性からは、こんな手記が寄せられています。

「私の両親は他界し、一人暮らしです。作業所とヘルパーのおかげで何とか自立生活しています。収入は月8万円の年金と作業所の工賃1万円です。家賃を払うと手元に残るのはわずかなお金です。今回の自立支援法で、もらう工賃よりも利用料の方が高くつきます。これでは作業所に通うことをあきらめて、家に引きこもるしかありません。45歳になって引きこもってしまうことが、とてもつらいです。仲間とのコミュニケーションがなくなり、仲間を失い、障害も進行します。体も心も活力を失っていきます。『金の切れ目が福祉の切れ目』にならないようにしてください。」

大阪市は、この声に急いで応えなければなりません。住民の福祉の増進を大きな役割とする自治体である以上、早急な手だてを講じることが強く求められています。本条例案は、こういう状況をふまえて提案させていただいています。決して十分なものではありませんが、党派を超えた議論と熱意を結集して、障害者の皆さんの期待に応えていこうではありませんか。

以下、本条例案の趣旨と主な条項の内容についてご説明いたします。参考のため、別紙の三枚の一覧表をご覧下さい。

まず第一に、本条例案の中心的趣旨は、障害福祉サービスおよび自立支援医療において、国が定める所得に応じた利用者負担の上限額に対して、大阪市が独自に、概ねその二分の一まで利用者負担上限額を引き下げる設定を行い、その差額を大阪市が助成することによって、利用者の負担を軽減するということであります。

第二は、利用者負担上限額を決める所得区分について、大阪市独自に、よりきめ細かい所得区分の設定をして、障害者の実態に応じたより細やかな軽減措置がはかられるようにするということであります。そのために、市民税課税世帯では、市民税所得割の額に応じて、より細かく区分割りをいたします。また、市民税非課税世帯では、国が定める「本人収入80万円以下(障害基礎年金2級相当)とそれ以外」という区分割に加えて、大阪市独自に「障害基礎年金1級および特別障害者手当のみ」の区分を新たに設けます。

第三には、障害福祉サービスと自立支援医療の両方を同じ月に利用した場合に、そのそれぞれの利用者負担の合計に対する「大阪市独自の利用者負担上限額」を設定し、それを超える負担額を大阪市が助成することによって、重複利用者の負担軽減をはかるということであります。

以上の三点の趣旨をふまえて、主な条項についてご説明いたします。

まず第5条、障害福祉サービスでの利用者負担上減額についてであります。別紙一覧表の「条例(第5条)に基づく障害福祉サービスに要する費用の負担内容」の資料をご覧下さい。

最初に、市民税課税世帯の場合についてであります。市民税所得割額「4万円以上」と「4万円未満」で区分割し、「4万円以上」の方の負担上限額は、国基準どおりの37,200円とし、この場合市の負担額はゼロであります。「4万円未満」の方は国基準の二分の一の18,600円といたします。従ってこの場合、市の負担上限額は最大18,600円となります。

次に、非課税世帯の場合についてであります。表のように3区分に分け、国基準の二分の一の設定としますが、市独自に区分割設定する「障害基礎年金1級および特別障害者手当のみ」の方の場合は、本人負担上限額を「本人収入80万円以下」の方と同水準の7,500円とし、従って国基準との差額、最大17,100円を市の負担とします。

つづいて第6条、自立支援医療での本人負担上限額についてであります。別紙一覧表の「条例(第6条)に基づく自立支援医療に要する費用の内容」の資料をご覧下さい。

課税世帯の場合は、表のように4区分に分け、市民税所得割の額が「20万円以上」の方は国基準どおりとし、この場合、市の負担額はゼロであります。他の3区分については、原則国基準の二分の一に設定しますが、加えて次の二つの独自設定をいたします。

ひとつは、国は「高額治療継続者」と「育成医療」しか本人負担上限額を設定していませんが、大阪市独自に「それ以外」の方も表のように本人負担上限額を設定し、その額を超える金額を市が助成するようにします。もうひとつは、市民税所得割の額が「4万円未満」の区分割りを大阪市独自に設定し、表のような負担設定をいたします。次に非課税世帯の場合は、国基準は2区分しかないところを、表のように3区分に分け、それぞれ負担設定をいたします。

さらに第7条、障害福祉サービスと自立支援医療との重複利用時の本人負担上限額についてであります。別紙一覧表の「条例(第7条)に基づく重複利用に要する費用の負担内容」の資料をご覧下さい。これは、国基準にはまったく無く、すべて大阪市独自に設定するものです。表のような区分に分け、それぞれに設定された本人負担上限額を超える金額を、市が助成いたします。 

最後に、附則として、事態は急を要することから、本年11月1日から施行するものとし、金額設定については、法に基づいて平成20年度末を目途として見直すものといたします。 

以上、障害者の皆さんの負担の軽減をはかるための条例案についてご説明申し上げましたが、議員各位におかれましては、慎重なるご審議を賜り、ぜひともご賛同くださいますようお願い申し上げまして、提案の討論とさせていただきます。ありがとうございました。