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環境・安全性も軽視、都市計画を形骸化した 「場当たり的な開発」を批判 大阪市都市計画審議会で稲森豊議員 |
稲森豊市会議員 2007年10月31日 |
10月31日、大阪市都市計画審議会が開催され、稲森豊議員は、提案された都市再生特別地区の追加、および大阪駅の開発計画変更案に関連して大阪市の都市計画の基本姿勢について質しました。 まず国土交通省が2006年11月に第5版都市計画運用指針において全国的には人口減少のいわゆる成熟期に入っている現在、経済成長を前提とした開発型、呼び込み型の都市づくという考え方は見直すべきということを示唆している。 ところが、大阪市の都市再生、あるいは都市再生特別地区の基本的な考え方は都市間競争の激しい中で、勝ち抜いてゆくためには、産業の集積、投資の呼び込みなど経済成長を促すとし、容積率緩和、土地の高度利用、建物の高層化など従来どおりのバブル経済成長型の基調になっている。こういった考え方は先の国土交通省の都市運用指針とも乖離している。大阪市は状況をどう考えているのか計画調整局の見解を求めました。 加えて都市再生特別措置法(2002年3月法律制定、同6月施行)では、都市再生特別地区に指定されると民間事業者が既存の都市計画の変更を提案することができ、自治体は6ヶ月以内にこれに応じるか否かを決めなければならないということになった。 今回の提案もこの流れに沿ったもので、これはまさに都市計画の形骸化を意味する。都市計画審議会も追認機関になる。大阪市の都市計画と民間主導の開発との整合性は果たして保持されているのか。今回の提案、事業者から原案が示されそれに対して大阪市として何らかの修正がなされたものかを問いました。 これに対して計画調整局の高橋計画課長は、国土交通省の運用指針の趣旨を説明し「民間事業者から相談を受け、大阪市として提案している。無秩序に容積率を緩和しているものではなく、地域貢献など審議している」との答弁を行いました。 稲森議員は小泉政権のブレイン、都市再生戦略チーム委員であった東京大学教授大西隆氏が「都市再生法では都市は再生しない」と述べていることも紹介し、改めて今回の提案は情勢の変化を斟酌しないものであり同意できないと意見表明を行いました。 次に稲森議員はこの8月19日、気象庁がヒートアイランド問題で大阪の高層ビルがついたてになって枚方や京都など内陸部の気温上昇につながっていると解析しているが今回の計画変更案は、すべて土地の高度利用やビルの高層化を前提にしている。大阪市は、気象庁のこのような見解を都市計画にあたって斟酌されているのかと質問しました。 高橋計画課長は「建物の省エネ対策、斜線制限やビルの屋上の緑化、セットバックなど、風の通り抜けや建物のバランスよく取り入れ、ヒートアイランド対策を行っている」と答弁しました。 稲森議員は、高層ビルや、空調施設など放熱の大きい高層ビルを作っておいて環境負荷を軽減するという考え方はおかしい。ガラスのカーテンウォール様式の建築物と電力など熱効率の問題について都市計画で有名なルイスマンフォードが著作「都市と人間」の中で「ガラス窓のはめ殺しのビルはうんと金のかかる暖冷房の設備を備えてはじめて住める代物である」と酷評していることも紹介し環境負荷になる機械空調を前提とした超高層ビルの建設は見直すべきであると表明しました。 次に稲森議員は近鉄が計画している阿倍野筋1丁目地区の高層部310mというランドマークビル建設について、容積率緩和1600%ということであるが本来はその地域の容積率は800%であり2倍になっている。(資産価値は倍になる計算)59階建て、用途は百貨店・美術館・オフィス・ホテルということであるがこれは街づくりの観点ではなく、企業(近畿日本鉄道)の施設更新を有利にするだけの規制緩和ではないのか。 隣接する大阪市施行の阿倍野再開発(2000億円以上の赤字事業)との都市計画上の整合性は果たしてあるのか。なぜ1600%なのか。事業者からの提案をそのまま鵜呑みにしたもの。地震に対する安全性の検討はどうか。都市の安全性、過密問題と防災問題。隣接する大阪のシンボル通天閣が高さ100mであり景観も問題である。梅田、なんば、天王寺とあっちこっちで同じような開発が行われようとしているがこれはいわゆる「合成の誤謬」を呼び起こすものでまさに都市計画を無視した場当たり的な開発といわざるを得ないと、大阪市の姉妹都市であるサンフランシスコの元計画局長アラン・ジェイコブス氏が都市プランナーとして民間デベロッパーの場当たり的な乱開発と対決した記録著述書「サンフランシスコ都市計画局長の闘い」を紹介し、これからの都市づくりについてさまざまな議論がある中で、大阪市においてはまったくそれらについて検討や見直しの議論がなされないでバブル時代の従来どおりの発想で開発が進められている。これは理解しがたい。今回提案されている案件は大阪市の都市づくりといった視点が欠落した、民間の開発の動機である利潤の追及を後追いする計画変更であり無条件に認めることができないと、反対の意見表明を行いました。 今回の都市計画審議会は、約2時間半、今までに無く活発な意見が交わされ、「なぜ容積率1600%なのか」「景観や風対策の信憑性、効果、実効性は本当にあるのか。」「これからあちこちで追加、変更が出てくる恐れがある。市として説明不足、情報公開を」など複数の専門家も不同意の態度表明を行いましたが、最終的には都市再開発特区の追加案件、梅田駅開発の計画変更については多数決で採択されました。 |