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後期高齢者医療保険制度 北山良三市議に聞く |
北山良三市会議員 2006年12月24日 |
昨年6月の国会で、自民・公明両党によって医療制度の一層の大改悪となる法案が強行採決されました。その内容は、特に高齢者にとって大変な改悪となります。お医者さんにかかった時の窓口負担をさらに増やし、一定の長期に入院できる療養病床を大幅に減らすとともに、医療保険の掛け金を大幅に増やそうとするものです。 12月の各地方議会では、その医療改悪の一つである「後期高齢者(75歳以上)医療保険制度」の新たな創設にむけ、都道府県単位で設置する「後期高齢者医療広域連合」の規約案に対する審議が行われました。 そこで、大阪市議会でこの問題を質疑した北山良三大阪市議に聞いてみました。
この「後期高齢者(75歳以上)医療保険制度」は、2008年4月から実施されます。75歳以上のすべての高齢者が加入を義務付けられる新たな医療保険制度で、月額1万5000円以上の年金をもらっている方は、年金からの天引きでいやおうなしに保険料をとられる制度です。 私の大阪市議会での質疑で、多くの問題点が明らかになりました。 まず第一は、民間企業や公務員などのサラリーマンの扶養家族となっている75歳以上の後期高齢者は、今は負担ゼロなのに新たに保険料負担が発生するということです。政府が示している平均的厚生老齢年金受給者の保険料は、月額6,200円です。年間7万4400円の負担増となり、大阪市民の場合、二ヶ月ごとに介護保険料と合わせて2万4350円が年金から天引きされていきます。また、現役でサラリーマンとして働いている方が75歳になれば、その扶養家族は新たに国民健康保険に加入しなければならず、この方々も国民健康保険料が丸まる負担増となります。 第二に、保険料を「年金天引き」ではなく「現金で納める」方々(政府の試算では「2割」と見込まれている)にとっては、保険料を滞納すれば「保険証」から「資格証明書」に切り替えられ、「健康保険証」を取り上げられてしまいます。現行制度では、75歳以上の国保加入者には、そういう対応は禁じられています。 第三に、医療機関に支払われる診療報酬は、他の医療保険と別建ての「定額制」とし、受けられる医療に制限を設ける方向を打ち出していることです。「定額制」となれば、積極的に治療すればするほど医療機関が赤字になり、手をかけないほうが利益を多く生み出すということになり、高齢者に対する医療内容の劣悪化を招く恐れがあります。 第四に、後期高齢者が増え、また医療給付費が増えれば、「保険料値上げ」か「医療給付内容の劣悪化」かという、どちらをとっても高齢者への「痛み」しか選択できない、あるいはその両方を促進する仕組みになっているということです。これは、2年ごとに保険料の見直しが義務付けられ、保険でまかなう医療費の総額をベースにして、その10%は保険料を財源にする仕組みとなっており、しかも、後期高齢者の人数が増えれば「10%」についても見直しをして、引き上げていく可能性があるからです。 第五に、この保険制度は、都道府県の各自治体でつくる「後期高齢者医療広域連合」の条例で保険料等を決めていくことになり、一般財源を持たない「広域連合」では、独自の保険料減免などの措置が困難になってきます。しかも、大阪府の場合、「広域連合議員」の定数は「20」となっており、半数以上の市町村から議員を出すことができません。その議員は、「各市町村の議員から選ばれる」となっており、当事者である後期高齢者の意見を、直接的に反映できる仕組みとしては不十分なものになっています。 第六に、医療と介護の利用料の支払い上限額を決め、それを超えた金額は返還するという、「高額医療・介護合算療養費」の償還制度を設けますが、今の「医療費自動償還」から「申請償還」に変わってしまい、本来返されるべきお金も「申請」しなければ返されなくなり、大損する人も出てきます。しかも、同一世帯で他の医療保険と混在する場合、支払い上限額を合算できないため、この点からも負担額が大きく増えることになります。
私は、12月の大阪市議会で、国に強く求めてこれらの問題点を是正していく必要があると主張するとともに、当面、広域連合の規約には、次の3点を盛り込むべきだと主張しました。 @広域連合議会で重要な条例案の審議を行う場合、高齢者等から直接意見聴取する機会、例えば公聴会などを実施し、広域連合議員にはそこに出席することを義務付けること。 A一定の基準を設けて、業務報告や財務報告などを各市町村議会に報告することを義務付けること。 B住民に対する情報公開の徹底を義務付けること。 しかし、自民・公明・民主のオール与党は、私のこれらの指摘や提案を全く無視して、誰も質疑もしないまま、何の修正もなしに「広域連合規約」案を通してしまいました。
自治体として扱われる「広域連合」に対して、住民による請願・陳情権や条例制定の直接請求権は保障されていますので、今後は、住民運動と議会での審議を結びつけて、抜本的な是正を迫っていく必要があります。 同時に、この問題を通じても、来年のいっせい地方選挙と参議院選挙での日本共産党の躍進が強く求められていると実感します。 (しんぶん赤旗:2006年12月24・26日付) |