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「大阪都」構想 「協定書」審議で浮き彫り デメリットは市民に |
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山中智子市会議員 2014年10月10日 |
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大阪市を廃止し、五つの特別区に分割する「大阪都」構想の「協定書」(設計図)の審議が9日から市議会で始まりました。橋下徹市長が実現を目指す「都」構想の「百害あって一利なし」の中身があらためて鮮明になっています。 (藤原直)
「協定書」は、橋下氏ら「維新の会」が、法定の協議から他会派を締め出し、議会招集を拒否するなど民主主義のルールや法律を踏みにじって作成したものです。すでに府市両議会は「無効」を宣言。9〜10日にかけて開かれた各委員会でも、野党側からは「協定書」には正当性がないことが前提として指摘されました。 その上で、審議では「協定書」で実現しようとしている中身も市民にとってデメリットしかないことが明らかになりました。 初期費用600億円一つは、「都」構想のコストの問題です。 府市大都市局が示した試算によると、特別区設置にかかる初期費用は新庁舎の整備費やシステム改修費など約600億円、設置による維持費用の増加分は年間約20億円です。 メリットはどうか。「維新」が宣伝してきた「都」構想による「二重行政」解消の「効果額」について、公明党市議に厳密に問われた同局は「算出していない」と答えています。橋下氏も、「効果額」について「あまり意味はない」と開き直り、「特別区になっても財政運営はできる。ここが重要だ」と話をすり替えました。 大都市局の資料では、特別区は2017年度からの最初の3年間の合計で827億円もの収支不足に陥ると試算されています。「財政運営は成り立つ」(同局)というのは、市が持っていた土地を売り、基金を崩し、新たな借金まですればという前提での見通しにすぎず、その土地も順調に売れるとは限りません。 日本共産党の山中智子市議は、「維新」のいう特別区での住民サービス充実も「財源がなければ絵に描いた餅だ」と指摘。「むしろサービスは悪くせざるをえなくなる」と告発しました。 少定数の区議会もう一つは、政令市である大阪市が廃止され、バラバラな、半人前の自治体の寄せ集めにされる問題です。 市が廃止されれば、多くの権限や財源が府に吸収されることになります。自民党市議団は、大阪市が特別区に再編されると自主財源が4分の1に減るとの試算を示し、財政調整交付金を交付する府に依存せざるをえないことを指摘しています。 「維新」は、特別区での区長公選で「より身近で充実した住民自治」を実現すると主張していますが、一方では各区議会の定数を極端に抑え込んでいます。例えば、新設しようとしている人口約34万人の「湾岸区」では12人。同じ人口規模の東京都北区(44人、次回から40人)の3分の1以下です(人口は10年国勢調査)。 住民自治の充実は、首長だけでなく、議会、職員、住民参加の仕組みなどあらゆる回路を通じてのみ実現するものです。山中氏は「公選区長さえいれば何でもできるかのように言い、自治の回路の一つである議会をここまで減らして平気な姿に本当に住民を大事にする自治体を築きたいのか疑問だ」と述べました。 市を五つの特別区に分割しながら「ミニ大阪市」とでもいうべき膨大な実務を担う巨大な一部事務組合を設立する制度設計にも批判が集中しました。同組合が担う事務のうち国保、介護、水道、工業用水道の4事務だけでも総事業費は約6216億円にも上ります。 住民の命や暮らしにとって大切な施策を陳情も請願もしにくい一部事務組合で行うのが身近な行政といえるのか。山中氏はこう批判し、現行の大阪市内24行政区で開かれている区政会議の充実など政令市でも市民の声がより届く仕組みづくりを提起しました。 (2014年10月15日付しんぶん赤旗) |