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第26回法定協での山中智子議員の意見表明(要旨) |
山中智子市会議員 2019年9月12日 |
わが党の意見は、6月21日の第24回法定協で申しあげたことと基本的に変わるものではありません。 すなわち、大阪市を廃止して、428もの事務事業を大阪府に移管しても、個々の事業の財源も大きくなるわけではなく、それらのいわゆる広域的な行政が進むものでも、よくなるものでもないということです。 例えば、広域インフラにしても、いつにかかって国頼みというか、国の意向次第であって、府市が一つになったとしても、スピーディに物事が進むなどということではありません。それに、淀川左岸線もなにわ筋線も、良し悪しは別にして動き出しているという状況の中で、これ以上何を進める必要があるのかということでもあります。 要するに、大阪市廃止・分割の結果、出来上がる大阪府は、実の伴わない、図体だけは大きくなるけれども、従来の広域機能に、大阪市域のみの消防・下水など、大阪市域の基礎自治機能をも取り込んだ、まことにいびつな体制になるということです。 ともかく、大阪府の中に、府と並び立つ大阪市という政令市があることが問題であるかのような議論がありますけれども、とんでもないと思います。そんなことをいっていたら横浜や名古屋、神戸なども解体しなくてはならなくなってしまいます。 申しあげるまでもなく、広域行政は府の責任です。大阪市廃止うんぬんの前に、大阪府がその固有の責任を果たすことこそ先決だと思います。
そして、そうやってつくられる4つの特別区についてですが、市町村の基幹税目である固定資産税や法人市民税などを府に移管させられるとともに、街づくり・都市計画の権限すら喪失するなど、財源、権限ともに一般市にも及ばない、まさに半人前の自治体に成り下がるということです。 そもそも、東京特別区がつくられたのは、1943年、昭和18年、戦時下の非常事態の中、時の東条内閣によって帝都防衛のためと称して強行されたものです。 そういう成り立ち故に、 先日、財政総務委員会でもお話伺ってきましたけれども、戦後74年、長きにわたる自治権拡充にもとりくんでおられますけれども、やっぱり、特別区を廃止して、せめて一般市にという運動が続けられていることは、まことに教訓的だと言わなければなりません。 しかも、今や政令市は20市にも及び、一定の人口を有する基礎自治体なら我先に政令市に名乗りを上げようとする中で、その当の政令市を返上しようとするなどということは、とても常識では考えられない、文字通りの愚挙というほかないと思います。 その上、4つの特別区に分割することによって、330人の職員増やシステム運用経費の増などに加え、庁舎建設やシステム改修費など、膨大な設置コストを要して、住民サービスはカットせざるをえなくなるということで、市民にとって百害あって一利なしであり、一貫して申しあげているように、大阪市廃止・分割には私たちは反対です。そのための住民投票にも賛成できません。 尚、前回第25回の法定協議会で嘉悦学園の報告書に対する質疑をごく短時間行ったところですが、改めてもう少し補足的な意見を述べたいと思います。 資料の配付をお願いいたします。
前回も申しあげました通り、嘉悦学園の報告書は、人口50万人程度で1人当たり歳出額が最小となり、以後、人口が増えるにしたがって1人当たり歳出額も大きくなるといういう、このいわゆるU字カーブを描くとする研究理論を立証するものになっておりません。 それは、前回お示しをいたしました、また今日もお配りをしていますけれども、@と書いてある資料ですけれども、東京特別区の人口と1人当たり歳出額との関係を見ればはっきりいたします。人口50万人の江東区が37万円に対して、72万人の太田区、73万人の練馬区がそれぞれ35万円、91万人の世田谷区にいたっては31万円と、江東区より6万円も低くなっています。まったくU字ではない。U字カーブということは立証されていません。むしろL字だといえると思います。 確かに人口の大きい大都市では1人当たり歳出も大きくなるという傾向は一般的に見られるといえなくもない場合もあるとそういう感じではありますが、それは前回も言いましたように、比較的物価が高く、したがって人件費等行政コストが大きいがゆえであって、それとてU字を描くようなものではないことは報告書にも示されている通りです。 ましてや、都市を分割して人口を減らしたからといって、物価が下がるわけでもなし、1人あたり歳出が大きく低減するなどということは考えられないことです。 そのうえ、嘉悦学園の報告書には比較すべき数値に誤りがあるということもはっきりしました。 理論値は全市町村の2016年度決算ベースで算出しているにも関わらず、比べるべき大阪市の実績値は、2016年度中核市相当の予算という具合です。正しい数値で比較するなら歳出削減の可能性どころか、これ以上削減する余地などまったくないことがわかるわけです。 今回は、中核市11市ですね、大阪と兵庫、東京の中核市11市と大阪市の中核市並みの 歳出実績値、これいずれも公債費、扶助費を除いたものですけれども、これを比較してみました。
Aの資料ですけれども、大阪市の、今申しあげました中核市並みの1人当たりの歳出実績値は22万7000円です。人口57万人の八王子市では、19万6000円で、大阪市と比べて少し低くなっていますけれども、人口53万人の姫路市が25万1000円、人口45万人の尼崎市が23万3000円 と、逆に大阪市より少し高くなっているというふうに、全体として大阪市とこれら中核市との間にはほとんど差異がないということが見てとれると思います。 人口270万人とこれら11市と比べて、突出した人口を有する大阪市において、かくのごとしということですから、4つの特別区に分割をすれば、年1千億円の歳出削減の可能性が生ずるとする嘉悦学園の報告書がいかに現実から遊離しているかということを申しあげたいと思います。
ともかく戦後、地方自治体の合併はあまたありますけれども、分割は1例もありません。合併の場合は、スケールメリットが働くので、初期コストの回収に要する一定の年数がたてば、1人当たりの歳出はある程度、自然にというか、そう無理なく減らすことができることは確かだと思います。 それというのも、2つの自治体を1つにすれば、庁舎も2つから1つにする事も出来るでしょうし、各種行政委員会も2つから1つになる。職員も首をきるということは出来ませんけれども、退職不補充で一定年数たてば減っていくということになろうかと思います。 勿論、首長も2人から1人になるし、議員も定数を減るということになりましようから、行政水準を落とすことなく歳出を削減できる。これは現実的に理解できる話です。 その点、大阪市を4つの特別区に分割する場合は、庁舎の数も増えますし、各種行政委員会等も1つから4つになる、職員も少なく見積もっている素案でさえ330人増えますし、首長も1人から4人になる。議員も近隣中核市並みにすれば、148人増えるというように、スケールメリットが逆に働くというか、スケールメリットが失われて、一人当たり歳出額は確実に増えるということになり、結局、行政水準なり市民サービスを落とすことなしには歳出を削減するということはできないわけです。
いやいや、ニアイズベターで住民サービスが取捨選択されて、歳出の適正化が行われるはずだというふうに言われますけれども、確かに今の行政区単位で見ると高齢者比率の高いところとそうでないところもありますし、コミュニティバスなど交通アクセスの拡充を切望するところもある、子育て施策の拡充を要求するところ等いろいろありますけれども、しかし、これ4つの特別区という単位で見ますと、余り大きな差異は見られませんし、国との関係から考えても、制度的なものや大枠の施策を大きく減らすことは難しいと考えます。 結局、特別区長が作為的に、これまで市独自で実施してきたもの、例えば敬老パスや塾代助成などの施策をカットする以外に歳出削減はできないということです。 以上の通り、4つの特別区に分割をしても、歳出削減にはつながらないうえに、むしろ逆にコストが増えて、住民サービスをカットせざるをえなくなる。市民にとって何一つ良いことはないというのが私たちの意見です。以上です。 |