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百済貨物駅移転に伴う貨物自動車の増加は「大阪市環境基本条例」に抵触、 「大阪市環境保全目標」にも逆行・・都市環境局・建設局の答弁により判明 計画消防委員会で稲森豊議員が質問 |
稲森豊市会議員 2006年5月29日 |
2006年5月29日、計画消防委員会が開催され、日本共産党の稲森豊議員は付託された「『梅田貨物駅の百済駅への移転計画』の中止を求める陳情書」「梅田貨物より百済貨物駅への貨物増量移転に関して、育和連合町会とJR貨物との基本協定」の二件の貨物駅移転に反対の趣旨の陳情について採択する立場から質問と意見を述べました。 まず陳情の願意である移転に伴う大気汚染、振動、騒音、交通渋滞など環境汚染が進むことへの懸念と振興町会(育和連合町会)が鉄道運輸機構・JR貨物との間で移転を認めることを前提として交わした「基本協定書」の効力についての疑義を申し立てる内容の部門を各々統括する部局の見解を質しました。 環境悪化の問題で、鉄道運輸機構は移転に伴う環境悪化について、地元に対しいずれの場合も周辺環境への影響は、環境に著しい支障を及ぼすものでないとの見解を表明し、計画調整局長見解もこれを追認しています。この見解は文字通り解釈すれば影響は多少あるがたいした事ではないという内容で、移転により大型ディーゼル貨物自動車を中心とする車両の通行量が新たに最高千二百台増加することになるわけだから環境負荷は増大するのは必至で、この運輸機構の「環境への影響は軽微だから問題なし」という見解について、環境保全の主管局である都市環境局はこの見解を追認する立場か否かを質問しました。 これに対して都市環境局の中野交通環境担当課長は「事業者が現在計画している環境保全対策を確実に実施し、周辺の生活環境への影響に十分配慮しながら事業実施されるよう今後とも事業者に働きかけていきたい」と答弁。判断については明言を避けました。 次に稲森議員は大阪市は環境基本条例を定めているがこの条例の第一条、目的あるいは第十条、十二条で具体的にどのように規定されているかを質問。 交通環境担当課長は「目的としてとあり第十条では、本市は環境に影響を及ぼすおそれのある施策を策定し、実施するに当たっては、環境への負荷の積極的な低減を図るよう必要な措置を講ずるものとする」と答弁しました。 稲森議員は環境基本条例は答弁のとおり環境悪化を積極的に防止する内容となっている。今回、移転に伴い環境の負荷は間違いなく大きくなるのだから移転が環境条例の目指す方向に逆行するものであると指摘しました。 今里交差点は今でも環境基準をオーバー、鉄道運輸機構の地元説明は虚偽 次に自動車排出ガス測定局11局での二酸化窒素にかかる環境基準は11局中6局で適合していると2005年版大阪市環境白書に記述されているが適合していない後5局とはどこかを質問しました。 これに対して中野課長は「東成区今里交差点ほか五箇所で二酸化窒素など環境基準を超えている」と答弁しました。 稲森議員は鉄道運輸機構が意図的に今でも基準値を超えている今里交差点を予測地点から除き、移転後も基準値以下に収まるから影響は軽微と地元に説明していることについて、今里交差点だけでなく杭全交差点も2年前まで基準を超えており、陳情にもあるように百済駅周辺の大気汚染の状況はきわめて深刻であり運輸機構の説明は極めて悪質であると批判しました。 次に稲森議員は平成14年に新たに策定した大阪市自動車公害防止計画で計画の目標として大阪市環境保全目標(大気質)の項では、どのような目標を掲げているかと質問。 中野課長は「平成22年度末にはすべての幹線道路沿道での二酸化窒素にかかる環境保全目標の達成を図ることとするという内容であると答弁しました。 稲森議員は、この目標からしても、今でも環境基準を達成していない箇所に新たに環境負荷をかける施策を看過ごすというのが、大阪市の環境行政の基本的な立場なのか。計画を達成しようとするなら今回の移転による今里方面への新たな1030台のトラックの流入計画は受け入れない。またディーゼル貨物車一台の二酸化窒素など排気ガスは乗用車換算で何台分に相当するのかと質問しました。 これに対して中野課長は「20台から40台分」と答弁しました。 稲森議員は、計画調整局の平成16年度の自動車走行量調査を示し、今里筋は1日当たり3万9000台から5万台のオーダーで、新たに1030台の大型トラック、すなわち普通自動車換算で2万台から4万台分の排気ガスが上乗せして排出され、この結果、廃棄ガスの総量は現在の一、五倍ないし二倍の量になる。これが著しく環境に影響を及ばさないことなどあるはずが無いと、運輸機構の説明の無責任さを厳しく批判しました。 これに対し計画調整局の井上課長は「事業主体の鉄道運輸機構が、環境に与える影響は軽微であると調査し公表している」と運輸機構の説明を鵜呑みにする答弁を行いました。 さらに稲森議員は、大気汚染の数値だけでなく東住吉区今川小学校と平野区平野小学校の喘息の罹病率が市内平均7、83%に対し、それぞれ12、1%、15、87%と約2倍以上となっていると大阪市教育委員会学校保健課の資料を示し、このような実害が明白なのに影響が軽微だといって大気汚染をひどくする事態を容認することは絶対に許されない。子供たちにどのように責任を取るのだと質問しました。 この点では運輸機構のでたらめな主張を鵜呑みにし、移転計画を受け入れることを前提とした協定を結んだ連合町会は、もっと真剣に考えなければ大きな禍根を残すことになると主張。現在、アスベストが社会問題となっているが、当時の安易な認識で今大きな禍根を残している。今回の大気汚染も同様で、事後に検証と言うが一度失われた健康は取り戻せない。事前に歯止めを行うことが大切。安易な妥協は許されないと改めて都市環境局の見解をただしました。 これに対し都市環境局の中野課長は「百済の貨物ヤードの移転問題、移転するしないにかかわらず、今里交差点の二酸化窒素関係基準を、市内部の関係部局はじめ国、警察等の関係行政機関一体となり、排ガス規制の強化等も加えて道路沿道沿いの地域の実情に応じた道路構造対策、交通対策推進し、平成22年度までには環境基準を達成していきたい」と答弁しました。 慢性的な渋滞解消のための工事を行っている今里交差点に新たに貨物トラックが流入させるとは 稲森議員は大気汚染だけでなく交通渋滞についても深刻であることを公安員会発表の市内の交通渋滞状況を示し、現在今里交差点において渋滞緩和の工事が行われているがこの工事はなぜ行うことになったのか、目的と工事の概要について建設局の説明を求めました。 建設局島田街路課長は「交通渋滞の解消のため、都市計画道路の整備によるネットワークの充実、交差点の立体交差化、鉄道との連続立体交差化などの都市整備を実施している」と答弁しました。 稲森議員は現行でも交通渋滞がひどいため今里交差点で道路改善工事を行っているのに、大型車両千三十台を今里筋へ新たな流入り渋滞に与える悪影響についてどう考えているのかこんな矛盾したこと許されないと計画調整局の見解を求めました。 計画調整局の井上課長は「鉄道運輸機構が、新たな出口を設置して平野地下道の体面交通化をはかるなど、方面別に経路を分散して生活道路をできるだけ利用せず幹線道路を利用する。協定書で事後監視を行っていく」とまたもや運輸機構の説明を鵜呑みにする答弁。まともに答えることが出来ませんでした。 大阪市地域振興会要綱には議決の項目が無い、しかも法人格を持たない任意団体である連合町会による鉄道運輸機構との協定(契約行為)は、なんら法的有効性を持たないし、振興会の目的にも反する・・市民局の見解により判明。 次に稲森議員は大きな二つ目の論点として住民合意について、地域振興町会が日常的に大阪市政の各般にわたって果たしているさまざまな役割は正しく評価するものであるが同時に振興町会とはいかなる組織であるのかその性格と役割については厳密に規定されなければならないと述べた上で、大阪市は地域振興会とはどのような性格の組織であると認識しているのかを質問。 市民局市民活動担当橘課長は「地域の連帯感を高め、人間性豊で潤いのある町づくりに努め、日本赤十字社の事業に協力し、地域社会の福祉の増進向上発展を図る」と大阪市地域振興会の基本的性格について答弁しました。 稲森議員はこの精神から見て今回の協定にいたる事態やそれによって引き起こされている事態は振興会の目的に反しているのではないか、今回のように住民の利害が対立するような事柄を多数決で決めるということ。(平成十六年六月二十日提出の住民署名数、移転は認められないというのが10089筆、これは当時の人口約12500人の82%にあたる数)これに逆らうような協定を結ぶことによって、地域の連帯感が高まり、人間性豊かで潤いのある町づくりになるどころか逆に住民間の対立を引き起こし固定化する。また福祉の増進ではなく環境悪化という環境悪化による健康破壊、すなわち福祉の後退を招くことになると多数決による運輸機構との協定は振興町会の設立精神に反するものであると指摘しました。加えて大阪市の地域振興会の要綱には意思決定の議決要綱がないこと、あるいは法人格を有していないことを示し、法律的にも協定は有効性を持たないとして大阪市の見解を質しました。 橘市民活動担当課長は「大阪地域振興町会はぬくもりのある街づくりを目指しまして、自主的に結成された任意団体ですので、法人格を有しない組織である」と述べ、大阪市振興町会の要綱には議決や裁量権が謳われていないこと、法人ではないと稲森議員の指摘のとおりであることを確認しました。 稲森議員は振興町会はもともと法人格を有しないわけだから構成員を代表して今回のような、運輸機構という私企業と協定を結ぶというような契約行為はまったく法的根拠はないこと、又類例として、建築協定や区分所有法のように、私権を代表する為には住民全員の合意や特別行政庁の認可、四分の三以上の賛成などが必要条件として求められるなどきわめて厳密なものであり、法律や条例に定められていること以外のことを住民が勝手に多数決で決められるのなら治外法権が許されることになり、町はむちゃくちゃになると指摘しました。今回のような市民の生活を脅かしなおかつ住民の間に大きな利害の対立を引き起こし分断するような問題を多数決で決め、その決定で市民生活を悪化させるようなことを決める権限は振興町会には無く、ましてや行政区を越えて影響のある問題を一地域の連合町会の同意で持ってよしとすることも重大問題であると振興町会を統括する市民局の考え方を質しました。 橘市民活動担当課長は「地域住民の自主的に形成された組織で、目的、地域の連帯感を高めて、人間性豊かで潤う街づくりにすることであり、運営は地域の自主的な運営で行うことが望ましい」(地域振興町会の決めることで大阪市は口を出せないとの答弁)と振興町会の性格についての一般論を再答弁するにとどまりました。 稲森議員は最後にまとめとして今回の連合町会と鉄道運輸機構の協定は道理に反し、なんら有効性をもたないものであることが大阪市の担当部局の見解でも明らかになった。住民の意見を集約しなければならないのなら、住民大会を開催し、住民投票によって決めるべきである。いま市長はコンプライアンス改革すなわち法令順守によって市民の信頼を取り戻すということを市政改革の中心に掲げているが、総論としてコンプライアンスを重視すると言いながら、各論として、環境基本条例や、地域振興会組織要綱の精神を蹂躙し、大阪市の環境行政や振興町会との協力による市政の円滑な運営を妨げるような事柄については、やむなしとなし崩しに認めるというのは、市民にとって納得が行かないものであり、コンプライアンスが大切というのなら、今回の百済駅への貨物駅の移転の見直しを求める筋の通った陳情に賛同すべきであると述べ、委員会としても陳情採択をすべきであると採択を求めました。 最終的に採決となり日本共産党の与党各会派は移転を認める陳情について、趣旨に賛同と条件付で賛成、貨物駅移転反対の二件の陳情については不採択の態度をとりました。 将来に禍根を残さないためにも関係者による再議論を!! 稲森議員は「大阪市の責任あるそれぞれの担当部局の答弁で明らかなように貨物駅の移転に伴い大気汚染、交通渋滞など環境悪化がひどくなることは明確になった。また連合町会との協定によって住民合意が得られたという解釈も有効性を持たないことも市民極の見解によって明らかになった。このまま強行されると、住民の皆さんの中での対立が固定化され、連帯感への亀裂が決定的になる。また周辺住民とりわけ子供たちの健康に対する悪影響など取り返しのつかないことになる。 大阪市の所管部局の見解を無視し、鉄道運輸機構の虚偽の説明を鵜呑みにして事業を推進しようとする計画調整局の態度はきわめて悪質である。将来禍根を残さないように住民の皆さんが正確な情報を知り、もう一度原点から議論をし直し、子供たちの将来のためにも安全な街づくりをめざし、正しい選択をしていただくことを期待したい」と語っています。 |