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「大阪市地域金融の活性化に関する条例」の提案

12日3日本会議で矢達幸議員

矢達幸市会議員

2002年12月3日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表し、ただいま上程されました議員提出議案、第15号「大阪市地域金融の活性化に関する条例」について提案理由とその内容についてご説明いたします。
未曾有の大不況が日本経済を直撃しています。それに追い討ちをかけるのが小泉内閣の「構造改革」の名ですすめる「不良債権の早期最終処理」であります。
多くの中小企業が金融の道を絶たれ、連鎖倒産に追い込まれるなど、政府自身の手による中小企業つぶしが強行されています。
 政府が大銀行と一体となって「中小企業不良債権の早期最終処理」を進めてきた結果、ベンチャー企業も、老舗といわれる企業も、次々と倒産に追い込まれてきました。この一年間に10兆円の不良債権を処理したにもかかわらず、新しく20兆円も発生したため、去年の同時期32兆円だった不良債権は42兆円にも増えてしまいました。不良債権を無理やり処理して倒産、失業を増やせば、結局景気が悪化して、新たな不良債権が発生するという悪循環に陥ってしまっているからです。
それにもかかわらず、小泉内閣は、日米首脳会談で「不良債権処理をさらに加速する」と約束してきました。信用金庫や信用組合を政府が先頭に立ってつぎつぎとつぶしていくという、暴挙としか言いようが無い金融政策も「不良債権処理」の名で進められています。
 金融機関への「早期最終処理]の押し付けが,中小企業への貸し渋り、貸しはがしに拍車をかけています。
無理やり中小企業を倒産に追い込むようなやり方では、不良債権を減らすことは出来ません。それは、この間30兆円もの公的資金を銀行に投入しても、不良債権が増え続けていることでも明らかです。
いまやるべきは、地域・中小企業を立て直し、地域経済と中小企業に責任をおう、まともな金融の再建を図ることではないでしょうか。
 その点で、わが党は、国の段階で、「地域金融活性化法案」を提案していますが中小企業の町大阪でも独自に条例として制定することも大変意義のあることだと思います。
この条例の目的は、第一条に明記しております。
 地域の中小企業の経営を支えてきた信用金庫、信用組合が全国で51件が経営破綻させられており、大阪においても相互信用金庫の経営破たんなどにより、地域金融の機能が大きく低下しています。
 さらに小泉内閣の不良債権早期処理のもと、銀行の貸し渋り,貸しはがし」金利の引き上げが急速に拡大し、中小企業者の資金繰りが悪化しています。こうした現状にかんがみ、地域金融の活性化に関する大阪市の責務を明らかにするとともに、その施策に関し、必要な事項を定めることであります。
 次に、地域金融と金融機関の役割についてであります。
 地域金融機関の本来の役割は、地域に資金を供給し、生産・流通、消費などの地域経済を活性化させるところにあります。貸し渋りなどで、地域経済をこわす金融機関から、国民の暮らし、中小企業を育てる金融機関に変えることが必要であります、
 条例第4条で、「地域経済の担い手である中小企業の事業活動に必要な資金が安定的に供給されるよう特に配慮されなければならない」とうたうとともに、第四条では、「地域において社会的に要請されている望ましい分野に必要な資金を十分に供給する等、地域金融に寄与するように努めなければならない」と、金融機関の責任と役割を明らかにしています。
地域経済の安定なしに、地域金融にたずさわる金融機関の健全な経営は維持できるはずがありません。この転換は、金融機関自身にとっても必要なものであります。
 また、第4条は「中小企業者の事業活動に対する信用の供与に関して均等な機会を保障すること、十分な説明を行うこと、貸付条件を正当な理由なく変更しないこと等、中小企業者の事業活動に対する必要な資金の安定的な供給に特に配慮しなければならない」と必要な資金などの要求に、公正かつ安定的に応える責務を金融機関が負うことを明確にしています。これによって貸し渋り、貸しはがし、などをやめさせることができます。
 この条例の最も大きな特徴は第二章「地域金融の活性化に対する寄与の程度に関する評価」にあります。
いうまでもなく、金融機関の監督権限は国にありますが、地方自治法にもとずき、第9条に規定する「大阪市地域金融活性化委員会」を置き、この「活性化委員会」が地域金融の活性化に対する寄与について金融機関を評価するこは充分可能であります。
 この意義は、銀行の健全性だけに注目した金融庁の検査・監督と違い、地域経済の発展という地方政治の立場から金融機関を評価するということです。
金融庁が示す「金融検査マニュアル」では、例えば、中小企業者が順調に借入金を返済していても、赤字決算や債務超過になれば、機械的に不良債権扱いされてしまい、その金融金機関は、無理やり引当金の「積み増し」を迫られ、このため破綻させられました。
 このような「金融マニュアル」ですべての金融機関を評価すれば、大銀行と地域金融機関に大きな差が出るのは当然です。
今は、この金融庁の「物差し」しかありません。しかし、地域への貢献という新しい「物差し」をあてれば、全く逆の結果になります。これによって、地域に根ざした金融機関を積極的に育成すると同時に、貢献の弱い金融機関をただすことが出来ます。
地方自治体が、自らの地域の経済と金融を支援・育成することは、地方分権の精神からみても当たり前であり、地域経済との関係で金融機関を評価する条例の制定は、現行法のもとでも可能であります。
ペイオフ一部解禁までの経過が示すように、大阪市の公金の預け入れや指定金融機関の選定などで、金融機関は大阪市に非常に敏感になっています。大阪市独自の条例であっても、金融機関は軽視できず、その実効性は十分に確保できます。
さて第5条では、「大阪市地域金融活性化委員会」が毎年一回、金融機関を評価する項目を規定しています。中小企業への貸し出し状況、大阪市が行う事業への資金協力の実績、融資を拒否した場合の対応、利用者からの苦情を処理する体制の整備など、20項目であります。第6条では、評価報告書の作成と公表、第7条では、金融機関からの報告書の提出を規定しています。
 また、「活性化委員会」は、第3条「苦情の処理」にあるように、顧客や取引先などから苦情処理を行う事とします。銀行が投資信託や年金保険などリスクの高い商品の販売を大規模に進めている現在、この苦情処理の機能を「活性化委員会」に持たせることは、多発している金融被害を防ぐ上でも大きな力になります。
 以上が提案理由であります。議員各位のご同意をいただけますようお願いいたしまして、提案説明を終わります。