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大阪市「思想調査」 完全中止し謝罪せよ 共産党 北山市議団長 VS 責任逃れの橋下市長 内心の自由侵す 憲法違反は明白 |
北山良三市会議員 2012年3月2日 |
大阪市の橋下徹市長による憲法違反の「思想調査」。大阪府労働委員会が調査続行を差し控えるように勧告したことで、調査を担当した弁護士が「廃棄」を口にするところまで追い詰められています。その完全中止を迫った日本共産党の北山良三市議団長の市議会質問(2日)で、責任逃れに走りはじめた橋下氏の道理のない立場がいよいよ鮮明になりました。 (藤原直) 今回の「調査」は市職員への「アンケート調査」と称して、市長の「業務命令」の形で実施されたもの。実務的には野村修也市特別顧問(弁護士)のチームが担当しました。 市労連(大阪市労働組合連合会、連合加盟)が府労委に救済を申し立てたことを受けて、担当の野村氏が2月17日に「凍結」を表明。1日には、野村氏は廃棄に言及し、「市長は実施主体でなく、私自身が調査している」と橋下氏をかばい立て。橋下氏も「(野村氏の)手法については、賛否両論巻き起こるようなこともあるかもわかりません」などと人ごとのようにのべ、責任逃れの姿勢を示しました。 北山氏は質問で、こうした姿勢を批判。「市長の全責任と全権限のもと、大阪市のお金を使って依頼したもの」「調査内容を事前に知ったうえで、職員を対象に処分を示唆して、市長の業務命令によって実名で回答を義務付けた」と指摘し、橋下市長の責任は免れないと追及しました。 まるで警察 調査は、憲法が保障する「思想・良心の自由」(19条)や「政治活動の自由」(21条)を侵すもの。北山氏が、その認識はあるかとただしたのに対し、橋下氏は「市役所の組織の健全かつ正常な労使関係を見極めるのが調査目的。調査結果も僕自身が見ることはない」と目的さえよければ無法も許されるといわんばかりです。 北山氏は「調査目的や市長が見るか見ないかにかかわらず、こういう質問を業務命令で義務的に調査すること自体が内心の自由を侵している」とずばり批判しました。 ところが、橋下氏は「捜査機関では、憲法19条違反といわれているような事柄でも、一定の外形的な行為を取り調べることは刑事訴訟法上許されている」と開き直りました。 北山氏は「市役所がまるで警察のような考え方に立っているかのようだ」と厳しく批判し、三菱樹脂事件の最高裁判例(1973年)をとりあげました。同判例では採用の際に、学生運動への参加の有無など一定の外形的行為について申告を求めることも、思想・信条の自由の違反になりうるとの判断が示されています。 北山氏は、「これでも『思想調査』でもなければ内心の自由を侵すものでもないといえるのか」と批判しました。 市民も対象 その上で、北山氏はこの調査では、組合活動に誘った人や市職員に投票を要請した人の名前やその時間帯、場所まで問うていると指摘。一般市民の個人情報まで対象としていると追及しました。 橋下氏は「僕は(調査の)対象がどこまで及んでいたとか詳細は知りませんけど、何ら問題はない」と完全に自己矛盾に陥り、「市役所の組織の体質を北山先生がチェックしてくれたらよかったのだ」などとあべこべに責任を転嫁してきました。 これに対し、北山氏は「違法、不適切な活動を正すことは当然だ」と強調。日本共産党市議団が、これまで市役所ぐるみ選挙や一部組合による特定政党支持の義務付け、ヤミ年金問題、市と「部落解放同盟」が一体となっての不公正乱脈な同和行政を追及してきたことを話しました。「違法・不適切なものがあるなら適法に調査すべきだ」とのべつつ、内心の自由を侵し、監視・密告の社会につながる今回の無法な調査とはまったく別次元の問題であることを明らかにしました。 勧告を受け 府労委が、調査には「支配介入に該当するおそれのある項目が含まれている」と、申し立てについての判断が出るまで調査の続行を差し控えるよう勧告(2月22日)したのは、市長自身に対してでした。北山氏は、この点を追及しました。 橋下氏は勧告には「従う」としつつ、「野村特別顧問が凍結と判断すれば、じゃあそれでいきましょうと、それが僕の責任においての判断」と言い訳しました。 北山氏は、(1)調査の完全中止(2)データの即時廃棄(3)職員や市民への謝罪―を市長の責任で直ちに行うよう要求。最後まで言い訳を続ける橋下氏に「憲法に触れるようなやり方は、どんな理由をつけてもやってはならない。憲法のもとで政治に携わる資格があるのか、問わざるをえない」と強調しました。 大阪市議会 北山団長の追及 橋下市長 発言すりかえ 2日の大阪市議会本会議で、日本共産党の北山良三市議団長が「思想調査」問題を追及するなか、橋下徹市長が自らの発言をすりかえる一幕がありました。 「(アンケートは)思想調査でもまったくない。そんな変態の趣味はありません」などと弁明する橋下市長に対し、北山氏は市長自ら「思想調査をやったと言っている」として、「ぼくの趣味や嗜好(しこう)で思想調査をやっているわけではない」とのべたことを紹介。 これに対して、橋下氏は「国語の文法を勉強された方がいい。趣味や嗜好で思想調査をやったことがないというのは、やったことがない、そこが一番重要なこと」などと発言をすりかえたのです。 北山氏は「趣味や嗜好で思想調査をやっているわけではないといっている。『やったことはない』と『やっているわけではない』は(違う)。国語の文法はお返ししたい」と反論。「趣味や嗜好で思想調査をやっているわけではない、というのは、やっているということだ。趣味や嗜好ではやったことがないかもしれないが、事情が発生したらやってもいいという解釈になる」と指摘しました。 言葉のすりかえやごまかしで、相手をけむにまく橋下氏の手法がはからずもあらわになりました。 (2012年3月4日付しんぶん赤旗) |