肝心の市民の願いは冷たく切り捨て、

国追随の巨大開発や不公正乱脈な同和事業に手厚い逆立ち市政

2000年12月1日 下田敏人議員が99年度一般決算等に反対討論

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、1999年度大阪市一般会計決算等の認定に反対の討論を行ないたいと思います。
 申し上げるまでもなく、日本の経済は、なおたいへん厳しい状況にあります。
 なかでも、大阪は失業率や企業倒産件数など、どの指標をとってみても、最も深刻な事態にあると思います。こういう中で、260万市民のくらしに直接責任を負う、本市の役割は真に大きいものがあります。
 国の悪政の転換を求めつつ、市民の健康・安全・福祉を保持するという地方自治体本来の仕事を、しっかりと行なうことであります。そうして、そのことが、とりもなおさず、多くの市民の中にある将来に対する不安、老後の不安解消につながって、下から消費の拡大、経済の拡大が進むものと思います。
 ところが、本決算等にあらわれているのは、肝心の市民の願いは、冷たく切り捨てられている一方、国追随の巨大開発や不公正乱脈な同和事業には、手厚く予算執行されているという全く逆立ちした姿であります。
 そうして、財政的にも、起債残高が大きく増嵩するなど、一層厳しさを募らせているのであります。とうてい認めることは出来ません。以下、具体に指摘したいと思います。

           目玉の集客施設建設事業など次々と破綻 

 第一は、相変わらず大型公共事業に、莫大な予算が投下されていることであります。その上、目玉の集客施設建設事業などが次々と破綻をしていることであります。
 WTC、ATC、0CATのいわゆる3Kのビルが、いかにひどい失敗であったか、日を経るにしたがって一層明らかになりました。元々、民間のおこなうべきテナントビルの、こともあろうに筆頭株主になって、事業を推進したことが大きな間違いでありました。
 ATCの井筒元社長が「どんどん事業がふくらんでいったが、何かあれば大阪市がついているという甘えがあった」と述懐されているように、無責任にもバカでかいビルを造ったのであります。そうして、大赤字をしょいこんで、その穴埋めに、ありとあらゆる支援策を講じた上、99年度も3つのビルに対して、97億3300万円もの貸付けを行なったのであります。市民の理解が得られるはずはありません。

     WTCビルへの建設局など3局の移転費用や敷金に32億4400万円 

  ところが、これでも、まだ、どうにもならないとして、今度は、WTCに対して、建設局など3局が移転するという、全く度はずれた支援策を講じようとしております。
 この3局の移転費用や敷金に、なんと32億4400万円もかかるのであります。そうして、年間賃料が19億100万円、職員の通勤手当が2億2千万円も増額になる、という風に、膨大な支出増になる上、本庁付近にサービスカウンターが必要になるというのであります。

           必要のない3局移転で元の地域は空洞化 

WTCへの3局の移転というものが、いかに、道理がないかということであります。
 市長は、ベイエリアの開発のためだ、などと後から理由をくっつけておりますか、WTCへ行かなければ、ベイエリアの開発が進まないなんてものではありません。現に、咲洲や舞洲は何ら支障なくやっているではありませんか。
 建設局は、公園も作っております。夢舞可動橋も港湾局からの受託で、工事を進捗させております。水道局や下水道局も、受託工事として、上下水道管を敷設しました。街路や樹路樹などは、港湾局が自ら整備したのであります。
 そして、何よりも、現在の駅前2ビルや扇町に庁舎をかまえていることが、市域全体に、目配りができ、出先事業所とのネットワークの下で、効率的な仕事が出来るというものであります。
 また、同時に、WTCに移転すれば、元の地域の空洞化がさけられないという事であります。
 旧港湾局庁舎周辺は、火の消えたような有様であります。大阪港埠頭公社がもと入っていた同じ外郭団体・大阪港振興の持ちビル・南港センタービルはガラガラであります。同じく築港の第一大阪港ビルも、大阪港トランスポートシステムなどが出た後、2年も空いたままであります。
 あちら立てれば、こちらが立たず、これでは、大阪の経済に何らプラスになりません。

       大阪市がダントツの筆頭株主のシティドームも債務超過に 

 シティドームも99年度決算で、債務超過に陥ってしまいました。
 資産593億円に対し、負債は、613億円、資本金96億円を食いつぶし、なお20億円マイナスになっているのであります。運転資金にも窮するような始末で、またぞろ支援策を講じようとしておりますが、我々は賛成できません。
 元もと、この事業も民間が行なうべきもので、市長が、ある講演の中で「民間がビジネスチャンスを生かせるよう条件を整えるのが行政の仕事」と述べているように、せいぜい、区画整理でインフラを受け持つくらいにすべきだったのであります。
 東京も名古屋も福岡も、ドーム球場はみんな民間ではありませんか。
 ところが、大阪では肝心の民間の機運が盛り上がらないにもかかわらず、大阪市がダントツの筆頭株主になって、一人、突走ってリスクまで背負い込んだのであります。
 しかも、区画整理の中で、はじめから大阪市が買うつもりで、保留地をドーム球場の中に設定し、1.8haを196億円で買い取って、起債の利子をつぐなうだけで125年もかかるような安い賃料で、ドーム球場の使用に供しているのであります。そのうえ、経営が悪化したので、又、公金を投入する。
 およそ、地方自治体のすることではありません。原点にかえって、民間の参画を促す。付き合い程度しかしていない企業に対して、増資を募るとか、株主である金融機関の支援を要請するなど、最大限の努力をすべきであります。

       関空二期工事はオリンピックのため必要と無責任な答弁 

 関西国際空港の問題についても、一言指摘しておきたいと思います。
 関西国際空港が、当初予測に比べて航空需要などが低迷し大変厳しい経営状況に陥っている上に、これ又、当初予測を超えた地盤沈下によって、莫大な費用を投じての補強工事を余儀なくされているにもかかわらず、1兆5千億円もの二期工事に着手したのであります。これが、いかに無謀なものであるか、今、多くの識者から指摘されているところであります。
 第一に、需要の面で、2期事業の必要性が極めて薄いという事であります。
 今でさえ伸び悩んでいる上に、2001年には韓国の仁川空港が開港いたします。2002年には成田の暫定滑走路が供用され、そうすれば、そちらに移る航空会社もあると言われております。神戸空港や中部国際空港も2005年の予定であることは言うまでもありません。
 決算委員会で、こういう懸念材料について、我が党委員が質したのに対し、市長は、ただ2008年オリンピックのために是非とも必要だ、と無責任な答弁に終始したのであります。
 第二には、一期と比べ、更に深いところ、膨大な量の土砂を埋めるのであります。一体、どれ程の沈下が将来起きるのか、全く未解明な領域に属するのであります。三笠大阪市大名誉教授も「1期よりもずっと工事の条件はきびしい。水深は深く、埋立ての土の厚さは40mを越すという未曾有のもので、地盤への荷重はさらに大きくなり洪績層の深いところまで影響を受けて、沈下予測はさらに難しくなる。」「2期工事を急ぐのをやめ、今こそ立ち止まって多くの問題点を考えるべきだ」と述べています。2期事業は中止し、現在の赤字対策、着陸料の低減や、地盤沈下対策を最優先し、国の責任で行なうよう求めるべきであります。

      学童保育に余裕教室を使わせないなど、冷たさは際だったもの 

  扨て、反対理由の第二は、市民の願いには、たいへん冷たいということであります。
 決算委員会の質疑を通じて、学童保育に対する冷たさは、際だったものでありました。 学童保育が永年にわたって、共働きや母子家庭などの児童の放課後というもの、適切な遊びと生活の場を与えて、まさに、健全な育成をはかるという上で、果たしてきた役割はまことに大きいものがあると思います。
 この学童保育に対して、大阪市は、わずかの補助金を出して、お茶を濁してきましたが、国は学童保育関係者の苦労に報いるべく、児童福祉法において、学童保育を第二種社会福祉事業として位置付けたのであります。抜本的に支援を強めることが必要になった訳であります。
 ところが大阪市は、決算委員会で我が党委員が、都島区の友渕学童が明け渡しを迫られているという、せっぱ詰まった窮状を明らかにした上、友渕小学校の余裕教室を使わせるべきだと求めたのに対して、理由にならない理由で、これを拒否したのであります。

     介護保険利用料が高く必要なサービスを受けられない高齢者が続出 

   介護保険についても、そうであります。
 当初、懸念されたことが噴出しております。この5か月間の保険給付額が、見込みの69%にとどまっているように、利用料が高くて必要なサービスを受けられない高齢者が続出しているのであります。
 いったい何のための介護保険かと言わなくてはなりません。
 当面、非課税者の在宅サービスを一律3%にするなどの措置を国に求めつつ、市独自に利用料の減額に踏み出すべきでありますが、当局は何らこういう姿勢を示さなかったのであります。
 又、特別養護老人ホームについても、何時になったら入れるのか、全く見通しを持つことができなくなったことであります。当局が公的責任を放棄して、民間まかせにした為に、特養によって入所の基準がバラバラだからであります。キチンとしたルールをつくって指導すべきであります。
 又、同時に、特養の待機者を不当に減らしていることも問題であります。
 当局は、老人保健施設や病院に入った人を除外しておりますが、しかし、これらの施設は「終のすみか」ではないのであります。特養入所申請者にとっては、そのつなぎでしかありません。にもかかわらず、老人保健施設はいつまでも入っておれるなどと実態を知らないにも程があると言わなくてはなりません。

          ホームレスの問題に抜本策も示せないまま 

  ホームレスの問題についても、一言、指摘しておきます。
 一昨年8月の調査で、8660人だったものがほんの弥縫策しか講じてこなかったために、今では1万人を超える程にまで問題が更に深刻化いたしました。
 私どもは、このホームレスの多くの人たちが、簡易宿泊所で寝泊まりしていたことにも鑑みて、この宿泊所の有効活用と該当者に対する生活保護の適用をすべきであると一貫して主張してきました。
 簡易宿泊所の側も、建物を改造してアパート化し、敷金をとらずに貸すところも出てきました。大阪市が思い切った誘導策をとっていったん生保適用し、そうして徐々に自立を促して行くことが可能なのであります。
 ところが、市長はじめ当局理事者は、このアパート化への誘導もしないまま、簡易宿泊所は住まいではないから、生保適用できないの一点張りで、全く耳をかそうとしなかったのであります。
 そうして今だに、抜本策も示せないまま、ただただ長居公園のテントをなくすことに汲々としているのであります。これでは、市民の理解が得られないのは、当然であります。

        同和事業・行政は「法」失効後も不公正・乱脈を継続 

  反対理由の第三は、終結すべきであるにもかかわらず、なお不公正・乱脈な同和事業・同和行政を進めているからであります。
 根拠法も、97年度で基本的に失効しているにもかかわらず、99年度もおびただしい数の教員加配や保母加配を行なっている上、1民間病院である芦原病院には運営補助金等7億3千万円と運営特別貸付金3億9400万円の合計11億3100万円も出しているのであります。同時に、必要性がますます稀薄になっている同和浴場の改修費に99年度も8億2千万円も支出し、この5年間だけで、1浴場あたり1億4千万円もつぎ込んだことになるのであります。そうして、2002年4月をもって、この浴場の建物の所有権を地区協に引き渡すというのであります。言語道断といわなければなりません。 

 1兆2千億円もの巨費を投じた同和事業はいったい誰のため  
     諸悪の根源、市同促・地区協方式はキッパリと廃止を      

 又、決算委員会を通じて、69年以来、1兆2千億円もの巨費を投じた同和事業というものが、如何に乱脈なものであったか浮き彫りになりました。
 運動団体の要求で次々と土地を買って、そのあげく、今だに未利用の土地が7.4haも残っているのであります。
 浪速区の浪速東や浪速西の地域では、至るところ空き地だらけであります。
私の調査では、浪速東1丁目〜3丁目、浪速西1丁目〜4丁目の総面積44haのうち実に31ha・70%が大阪市有地になっているのであります。
 ですから居住者も1970年の国勢調査では、浪速東・浪速西で8094人であったものが、95年の国調では4031人に、49%まで落ち込んでおります。大阪市全体の人口が87%への減少、浪速区全体が74%ということから考えても、いったい誰のための同和事業だったのかという事であります。
 又、同和住宅もガラガラでありますが、そんな中で浪速でも、同和住宅の建替事業が一般施策としてやられております。ところが入居などは、一切、地区協に握られたままであります。浪速西住宅入居戸数43戸の受皿住宅として、浪速第6住宅2号館88戸が建設されて、浪速西から36戸が入居いたしました。そして、他の同和住宅から17戸がいつのまにか入ったものの、35戸が空いたままであります。
 又、すぐ近くに西栄住宅2号館がやはり建替事業の受皿として40戸建設されて、入居資格のある浪速西住宅からは5戸が入居、そして、やはり他の同和住宅から12戸が入って、しかし、なお23戸が空いております。にもかかわらず、西栄3号館・5号館164戸の工事が進められているのであります。
 このように、無計画に住宅が建てられて、建替対象外の住宅からもなし崩し的に入居する。こういうデタラメがまかり通っているのであります。そうして建設工事は、特定の同和建設業者が請け負うという構図であります。
 まさに諸悪の根源は、市同促・地区協方式だと言わなくてはなりません。キッパリと廃止し、行政の主体性を確立しない限り、乱脈は改まらないし、部落問題の解決もありえないという事を申し上げておきます。

      政・官・業の癒着を断ち切ることが市民の批判に応えること 

  最後に、市長の政治姿勢に関して、一言、指摘しておきたいと思います。
 昨年の中村前議員の逮捕に続いて、つい先だっての天野前議長の逮捕・起訴という由々しき事態が起こりました。いずれも、大阪市発注の工事に絡んだ入札の予定価格を聞き出して、業者に教える見返りにワイロを受け取ったというものであります。まさに政・官・業の癒着極まれりというところであります。今、これを断ち切ることが求められております。
 何といっても、市民の負託を受けた市会議員たるものが、こういうものに手を染めるなど言語道断でありますが、同時に、強要されたとは言え、当局幹部職員などが結果として協力したのであります。情報を握っているものが毅然たる態度を貫くと共に、強要された場合の「駆け込み寺」とも言うべき「倫理遵法委員会」の設置が必要と申し上げておきます。

         “高級役人天国”が市長の政治資金の中身にも 

 又、幹部職員が退職後も、関係会社や外郭団体に天下だって、陰に陽に影響を行使することについても、市民の間から批判が寄せられております。
 99年度も、課長級以上251名中99名が外郭団体に、119名が民間企業等に再就職をしているのであります。そうして、外郭団体に関していえば、局長クラスであれば、社長などのポストについて、年1320万円もの給与で65歳まで保障され、又、助役などの特別職で退任した場合は更に好条件で遇されるのであります。
 市長は「キャリアを生かして、やってもらっている」などと答弁しましたが、市民の感覚から言えば、まさに“高級役人天国”とのそしりを免れないものであります。
 こういう幹部職員を特別に優遇する市長の態度は、市長の政治資金の中身に表れていると思います。昨年の市長選挙の際、大阪都市問題研究会という政治資金管理団体を通じて、2億8千万円もの資金を集めましたが、このうち分かっただけで、159人もの外郭団体などの本市OBから受けているのであります。ぐるみとしか言いようがありません。
 又、名前の記載のない寄付が、実に1億7100万円もあるのであります。5万円以下の寄付は、名前を記す必要ありませんが、仮に全部5万円としても3420人にものぼり、集めた額の60%を占めることになります。これが全くベールにつつまれて、市長の政治資金の透明性を極めて低いものにしているのであります。例え個人とはいえ、利害関係者からの寄付は受けるべきでないし、何よりも透明性の確保を図るべきであると申し上げて、以上、反対討論といたします。