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井上浩議員の夢洲土地鑑定に関する質疑(要旨)

井上ひろし市会議員

2022年12月6日

 

参考2022年12月7日付しんぶん赤旗報道記事


 ※質疑音声を文字起こししたもので、正式な議事録ではありません

井上委員

 日本共産党の井上でございます。委員長のお許しを頂戴しまして夢洲のIR誘致予定地の不動産不動産鑑定について質問をさせていただきます。

 まず不動産鑑定委託料についてですが、2018年度鑑定業者2社に価格調査を依頼しております。これはカジノコンセプト募集要項に参考価格を掲示するためでありました。その後、2019年度鑑定業者4社に鑑定を依頼しております。さらに2020年度、鑑定業者3社に依頼をしております。のべ9社に調査を依頼したことになりますが、それぞれの鑑定委託料はいくらなのか。

 まずはIR推進局が実施した2018年度の価格調査についてお伺いをいたします。

 

IR推進局推進課長・長野推進課長。

 お答えいたします。IR推進局におきましては、20194月から実施しましたコンセプト募集RFCの参考価格を提示するに当たりまして、1社に価格調査を依頼しております。

 IR事業の推進に当たりましては、20183月から開発条件や事業実施条件、公募プロセスの検討、事業者の公募選定など大阪IRの事業化に関するアドバイザリー業務を委託しており、価格調査については、当該委託業務のうちの一つとして実施しているもので、価格調査のみの金額は把握しておりませんが、価格調査を実施しました2018年度にはアドバイザリー業務全体で約4400万円の支払いを行っております。以上でございます。

 

井上委員

 続きまして大阪港湾局が実施したそれぞれの鑑定委託料はいくらなのか、またその金額は不動産鑑定委託料の標準的な金額なのか港湾局にお伺いをいたします。

 

大阪港湾局営業推進室販売促進課長・兼坂課長

 お答えいたします。20194月から実施したコンセプト募集RFCの参考価格を提示するにあたり、大阪港湾局において1社に価格調査を依頼しており、委託料は837万円となっております。

 また、2019年度以降の鑑定評価につきましては、大阪港湾局で実施しており、その委託料は、2019年度が4社で621万円から776万円、2020年度が3社で489万円から493万円となっております。その金額につきましては、公共事業に係る不動産鑑定報酬基準に基づく標準的な金額でございます。以上でございます。

 

井上委員

 調査および鑑定を計3回行った理由についてお答えください。

 

長野課長

 お答えいたします。IRについては20194月からコンセプト募集を実施した上で同年12月から事業者公募を開始し、その後、新型コロナウイルス感染症の影響等を受けたため、公募期間を延長し、20213月に募集要項の修正を実施しているところです。

 そのようなことから、コンセプト募集、事業者公募開始、募集要項の修正のタイミングにおきまして、不動産鑑定等を実施しているものでございます。以上でございます。

 

井上委員

 鑑定に当たりなぜカジノを「考慮外」としたのか、お答えください。

 

兼坂課長

 お答えいたします。鑑定条件として、いわゆるカジノ計画を考慮外としたのは、これまで国内における実績がないなどIR事業の特殊性などにより、鑑定業者から評価の前提とすることが適切ではないとの意見があったことを踏まえまして、本市として判断したものでございます。以上でございます。

 

井上委員

 要(かなめ)の部分を外すというのがね、ちょっと考えられないんですね。

IR事業が特殊だというご答弁だったんですが、それが最有効使用であればそれを前提に鑑定評価を行わなければなりません。IR事業を評価の前提とすることが適切ではないとすると最有効使用の原則に反することとなり、不動産鑑定評価基準に従った評価とは言えません。

 前例がないからといって最有効使用を変えるような鑑定士が本当にいるのか疑問であります。

 不動産鑑定評価基準は不動産鑑定士の責務として、自己の能力を超えた依頼は引き受けてはならない、と定めております。鑑定士の能力の問題で難しいというのであれば、そのような鑑定士にそもそも依頼するべきではございません。

 

井上委員

 なぜあれだけ夢洲の広い土地をですね「大規模複合商業大施設用地」のみとして敷地全体を評価したのか、通常の鑑定の仕方としてありえない手法ではないかと思うんですが、いかがでしょうか? 

 

兼坂課長

 お答えいたします。IR用地の賃料につきましては、土地を所管する大阪港湾局が不動産鑑定業者4社に鑑定を依頼し、その鑑定賃料については、不動産鑑定士、弁護士、会計士など、第三者の専門家で構成される大阪市不動産評価審議会における審議を経て適正に設定したものでございます。

 土地の鑑定評価における最有効使用につきましては、鑑定業者が判断する事項でございまして、本件土地の鑑定を担当した4社の鑑定業者はそれぞれの判断として最有効使用を大規模複合商業施設としてございます。以上でございます。

 

井上委員

 高層建築物を建設するという前提があるから788億円も今後つぎ込んでいって地盤改良するんでしょう。そういう前提でお金も入れていくわけじゃないですか。何で商業施設なんですか。

 たとえIR事業を考慮外としたとしてもですね。再有効使用には長崎ハウステンボスのような複合観光施設のほか、神戸のポートアイランドや六甲アイランド、東京のお台場などの大規模商業施設群が考えられるわけであります。

 これらはいずれも収益力が高いホテル用地を含んでおります。例えばイオンモールのような、ああいった郊外型ショッピングセンターとしての鑑定は不当であると申し上げておきたいと思います。

 

井上委員

 2019424日の「市戦略会議」でのIR推進局長の発言に関わってお聞きをしたいと思います。市長とのやり取りなんですね。「基本的に鑑定の中身については変わるものではない」「逆に変わると事業計画に大きく影響するのでできるだけ変えずに」との発言がございました。鑑定士さんがおっしゃってるのかなと思いましたけれども、局長なんですね。この意図についてお尋ねをいたします。

 

長野課長

 お答えいたします。委員ご指摘の発言につきましては、コンセプト募集後に実施する事業者公募の際の鑑定においても条件が大きく変わるものでないことから、価格が大幅に変わることはないという認識を発言したものでございます。また鑑定にあたりまして価格の指示等はしておりません。以上でございます。

 

井上委員

 この戦略会議のやり取りを確認する限りですね、何かもう話ができあがってるんではないかというふうにも見てとれるわけであります。なぜこういう予見的なことが言えるのか、極めて不可解だとを申し上げておきます。

 

井上委員

 賃料を承認した201911月の市不動産評価審議会に提出された「鑑定評価内容」の中に「IRカジノリゾート事業を前提とした地代の鑑定とすると、循環論となり適切ではない」との記述があります。循環っていうのは、この血液循環の循環ですね、循環論という文言が出てまいります。これはどういう意味なのかご説明をお願いします。

 

兼坂課長

 お答えいたします。「循環論」とは、IRを考慮外と条件設定することが妥当とする理由として、201911月の市不動産評価審議会に向けた鑑定作業の過程で鑑定業者4社のうち2社から示された表現でございます。

 IR事業者の公募では、事業条件の一つとして、応募者に土地賃料を提示し、応募者は提示した土地賃料やその他の事業条件を踏まえた上で収支計画等を含めた提案を行うこととなっています。

 仮に鑑定評価でIR事業を考慮する場合、他に事例がないために、IR事業者から提出される事業計画を前提に賃料の鑑定評価を行うことになりますが、IR事業計画は、その前提となる土地の賃料をもとに作成されるものであることから、このようなIR事業計画を前提に、賃料の鑑定を行うことは不可能でございます。

 この状況を鑑定事業者が循環論と表現し、IR事業を考慮外とすることを妥当と判断した理由の一つとしたものでございます。以上でございます。

 

井上委員

 ちょっと確認なんですが。「循環論」ですね、私も初めて聞きました。こんな説があったんだなと。この2社の鑑定士がこう話した内容を口頭の内容を大阪市がこれまとめたんですか、それとも、鑑定事務所の方から二つの鑑定事務所の方から文書で出してきたものなのか、どちらですか。

 

兼坂課長

 お答えいたします。不動産評価審議会に付議する資料を作成する過程では鑑定士の方と意見を確認することがございまして、その中で作成したものでございますので文書ではなく聞き取りで作っております。以上でございます。

 

井上委員

 文書を残すべきじゃないですか。口頭のやり取りなんですね。もう1点確認をしたいと思いますが、IR事業を考慮する場合は他に前例がないから実際の事業計画をもとに鑑定評価を行うことになりその事業計画は賃料に基づいて作るから循環になるとこういう説明だったわけですが、これ本当に鑑定士が、鑑定業者が事業者の計画がないとか鑑定できないんだと、こう主張してるんですか。循環論を主張した2社のうち業界トップの日本不動産研究所もこういう主張をされているということでよろしいんですね。

 

兼坂課長長

 お答えいたします。鑑定業者の方の2社につきましては、基本的には鑑定関係の話になってまいりますが、今回の質問につきましては、実際そういう主張されてるということで間違いございません。

 

井上委員

 だいぶ業界ざわついてますよ。業界トップの日本不動産研究所とは思えない珍説であります。不動産鑑定評価とは、鑑定士が依頼者や土地利用者から独立して、その土地の最有効使用を判定して評価するものであります。特定事業者の計画が必要ということはありません。

 事業者が決まっていない2019年時点で、いろんな形の国際観光拠点IRが作られる可能性がある中で、鑑定士が独自に最有効使用を決めて評価するのが当然のあり方であります。カジノの前例がなくても難易度が高いとしても不可能な鑑定評価ではありませんし、冒頭お答えいただきましたけど、それに見合う高額な、かなり高額の報酬が支払われているわけであります。

 

井上委員

 不動産評価審議会についてお聞きしますが、この評議会、この審議会に実際の「鑑定評価書」を提出せずに評価額が同じだった3社の結果をまとめた「鑑定評価内容」を提出したのはなぜでしょうか。

 

兼坂課長

 お答えいたします。大阪市不動産評価審議会事務局に対しましては、鑑定評価書を提出してございます。なお、土地に関する賃貸料を諮問する際には、所定の様式の調書や資料を作成する必要がありまして、ご指摘の不動産評価内容は賃貸料の算定内容を示し、委員への説明に資するよう、審議会の資料として提出したものでございます。

 鑑定評価した4社のうち1社を除く3社の結果をまとめたのは基礎価格や賃料が同じであったため評価額としてより妥当性が高いと判断し、同審議会へ提出したものでございます。以上でございます。

 

井上委員

 最後にお聞きをいたします鑑定評価書の方には、循環論などの主張はございませんが、鑑定評価内容の方にその記述があるのはなぜでしょうか?

 

兼坂課長

 201911月の大阪市不動産評価審議会の資料である鑑定評価内容におきまして、市が鑑定業者から聞き取っていた複数の鑑定評価の考え方の根拠を記載したものでございます。以上でございます。

 

井上委員

 鑑定評価内容にある循環論の記載については、先ほどの市の事業計画等々の説明とは明確に違います。ちょっと読み上げますが、夢洲IR事業が実施されることによる価格形成要因への影響は賃貸借人となる事業者によってもたらされるもの云々とあります。

 つまり、IR事業が土地の価値を上げるのだから、それを織り込んだ賃料を事業者に求めるのは不適切だとこういう主張なんですね。これも事業用借地の新規賃料算定ではありえない珍論だと申し上げておきます。

 循環論というのは、そもそも不動産鑑定評価基準にも、鑑定業界にも存在しない用語だとお聞きしました。したがいまして、2社とも偶然にそれぞれ循環論という言葉を使ったというなら、これまたありえない一致だと言わなければなりません。

 そうした理由でIRを考慮外として土地の価値を著しく下げるなどということは断じて認められないということを申し上げておきます。

 わたくし、先ほど鑑定業界ざわついてますよということを申し上げました。こんなことがまかり通っていいんですかという話ですよ、業界では、信じられないと、こういうことになってますよ。評価額談合の疑惑は一層深まったと思います。疑惑にまみれたIR誘致計画は即刻中止すべきだと申し上げて、私の質疑は終わります。