巨大開発を根本から見直し、

  市民の緊急切実な願いに応える予算に

2000年11月9日 わたし考一議員が補正予算反対討論

(しんぶん赤旗 2000年11月10日)

  大阪市議会本会議が9日開かれ、日本共産党の渡司考一議員は2000年度大阪市一般会計等補正予算案に反対の討論をしました。
 渡司議員は、経済が厳しい状況にあるとき、大阪市の役割はオリンピックを利用した臨海部などの巨大開発を根本から見直し、市民の緊急切実な願いにこたえることと強調しました。そして、補正予算は、国の公共事業中心の景気対策にそったものがほとんどで、市民の暮らしを支える予算が計上されていないと批判しました。
 渡司議員は、補正予算で介護保険制度の減免制度を充実させることを主張。利用料を3%に減額しても26億円、住民税非課税の人に限れば21億円もあればできること、老人医療、市民税非課税世帯の一部負担金制度の継続も28億1,000万円あればできること、切実な願いに答えるものにすべきだとのべました。
 渡司議員は、建設局など3局の庁舎の移転整備に30億6,400万円計上しているのはWTC(ワードルトレードセンタービル)事業の失敗に、家賃という形で税金を投入することで、疑問が残る移転と批判しました。
 また、夢洲トンネル建設費7億円は、オリンピック招致に間に合わせようとする大型公共事業の追加で、土地造成の完成後3年間で7mも沈下する土地ほの地下鉄工事はすすめるべきでないと批判しました。
 渡司議員は、関西空港の地盤沈下対策に1億7,500万円の出資を批判。どこまで沈下するか、解明もないまま、自治体に負担を求めるのは問題で、無謀な第2期工事は直ちに中止し、地元負担を求めるやり方や、民間活力方式を見直し、再検討するよう迫りました。

 (反対討論全文)

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま上程されました2000年度大阪市一般会計等補正予算案に反対の討論をおこないます。
 日本経済は、景気は「回復」しつつあるとの政府見通しが出されて以来、既に1年以上が経過しているにもかかわらず、最悪の水準で推移している失業者数や相次ぐ企業倒産にみられるように、今なお厳しい状況にあります。とても、自律的な回復軌道に乗ったなどといえるものではありません。
 10月31日総務庁が発表した完全失業率は4.7%に3ヶ月ぶりに再び悪化、特に近畿ブロックは前年同月より0.4ポイント上昇し6.1%となり、民間の雇用の8割を支える中小企業は、大企業のリストラ・コスト切り下げに苦しみ、倒産などで従業者は減っており雇用不安はさらに拡大の可能性もでてきています。
 こうした中で市民のくらしに直接責任を負う大阪市の役割は、いよいよ重大で、国に対しては、国民本位の施策への転換を求めると共に、自らは、オリンピックを利用した臨海部などの巨大開発を根本から見直し、市民の緊急切実な願いに応えることであります。
 わが党議員団は、今回の補正予算の編成にあたって、市民の暮らしをまもる事を最優先に、とりわけ介護保険の導入で起こっている様々な矛盾点の解決や、深刻な雇用問題の解決、不況対策に全力をあげる事などを強調してきたところでありますが、 以下、本補正予算の内容に即して反対理由をのべたいと思います。

市民の暮らしを直接支える緊急、切実な予算が計上されていない

 まず第一に、本補正予算は国の公共事業中心の景気対策にのっとったものがほとんどであり、市民の暮らしを直接支える緊急、切実な予算が計上されていないからであります。

介護保険はさらに充実した保険料減額制度と利用料減免の実現を

 特に4月にスタートした介護保険制度の問題では、この間大阪市は我が党議員団が強く要望していた保険料の減額制度にふみきりました。全国に先がけて制度をつくった点については評価するものの、住民税非課税者のごく一部にかぎられており、この補正を機会にさらに充実した減額制度にするべきであります。
 そして、今、利用料の減免を実現することが調査結果からも市民の切実な願いになっています。大阪市は、8月25日の介護保険事業計画策定委員会に「介護保険施行後に係わる居宅介護サービスの実態調査」の中間報告をおこないました。これは、ケアプランの作成依頼を行った人のなかから3,000人を抽出して調査したものですが、これを見ると利用料負担の軽減が急務であることが一目瞭然です。「介護保険が始まって支払う利用料は変わりましたか」との問いには「増えた」が66.4%、また、「介護サービスを支給限度額の上限まで利用していますか」には「利用している」はわずかに22.3%しかなく、「介護保険制度の困りごとや不満は」の問いに対しては、「利用料」が61%でダントツになっているのであります。
 厚生省も10月31日同様の調査結果を公表しましたが介護サービスの利用率は全体で43%となっており、両者の調査結果から、介護認定された人が、介護の必要よりもふところ具合で介護サービスを選択せざるを得ないという状況があきらかになりました。
 実際に介護プランをたてているケアマネージャーの方に聞くと、「その人に必要なプランをと思っても、とてもそんなに払えないと言われる。この人から、このサービス、あのサービスを削ったらいったいどうなってしまうのか、健康状態や生活はいったいどうなるのか、という思いがこみ上げて、プランをつくりながら涙が止まらない」と語っておられます。

在宅介護の利用料を10%から3%に減額した場合の費用は約26億円

 大阪市で在宅介護の利用料をすべて3%に減額した場合の費用は約26億円であり、最も必要と思われる住民税非課税の方に限れば約21億円で可能であります。介護保険施行後、半年経って、利用料減免の必要性がますます明らかになっているのであり、財源については国に求めていくと同時に、大阪市が従来、老人福祉に要した予算で介護保険導入によって軽減された金額をあてれば充分に可能であります。補正予算はこうした切実な願いに応えるものになっていないのであります。
 また、我が党は、今年8月から打ち切られた老人医療費、市民税非課税世帯の一部負担金助成制度を、大阪市単独でも継続するべきだと要望しました。これに必要な予算は28億1000万円であります。8月からこの老人医療費助成制度を打ち切られて、医者にかかりにくくなって泣いておられる年寄りは11万5800人もおられる、今後新たな65歳になられる市民税非課税世帯の方もこの制度をもう受けられない、こうした市民の切実な願いが今回の補正予算には盛り込まれていません。そればかりか大阪市はこの一部負担金助成制度で予算として組んでいた、8月から来年3月までの18億7000万円があるのに、これの使い途も明らかにしないのであります。

WTCビル「救済」の3局庁舎移転に30億6,400万円

 第二に暮らしを直接支援する補正がない反面、庁舎の移転整備費用に30億6,400万円計上されている点についてであります。
 いうまでもなく、建設局など3局が南港へ移転する事になったのはマスコミも「救済移転」と指摘しているように、WTCの経営破綻からであります。市長はじめ理事者は「21世紀の大阪市の発展をめざすうえでぜひとも必要なこと」と移転を正当化していますが全く通用しない議論であります。元々WTCは「国際交易・国際情報交流の促進に寄与する」というコンセプトの元に始められて事業であり、こうした面からも市長はじめ理事者の言い分というのは全く、説得力を持たないのであります。結局、3局移転はWTC事業の失敗に321億円という公金投入に加え、今度は家賃をはらうという形をかえた税金投入であり、市民サービス低下をまねき、職員には遠距離通勤をおしつけ、また、現在の庁舎で構成されている震災対策の機能が充分に発揮されるかという点でも大きな疑問の残る移転であります。

地盤沈下が起こるその真っ最中に駅舎建設計画の夢洲開発

 第三に、港湾事業の夢洲トンネル建設費追加の7億円でありますが、これはオリンピック招致に間に合わせて何がなんでも夢洲開発を行わんとする990億円もの大型公共事業のひとつであり、市民の立場に立った不況対策などが切実に求められている今の時期にすすめるべき事業ではありません。さらに、夢洲開発を促進するための1870億円をかける北港テクノポート線の環境アセスメントが先日発表されましたが、これから2年かけて夢洲の土地造成を行い、その完成後3年間で7mも地盤沈下が起きるその真っ最中に駅舎建設などの地下鉄工事を行うことが明らかになりました。我が党委員が環境対策委員会で「こんな無理な工事で、安全性が確保できるのか」と質したのに、港湾局はまともな答弁ができなかったのであります。
 夢洲をはじめとするベイエリアの新たな開発が必要かという点では、咲洲、夢州に港湾局が広大な土地の売れ残りを抱えておることや、経済状況、市財政状況、今後の人口動態などを考慮にいれると、市当局が正常な行政感覚の持ち主であれば、当然、計画の中止あるいは見直しをすべき事業であります。今、国でさえも、公共事業の総予算は変えないという致命的な欠点を持ちながら、少なくとも公共事業の見直しを言い始めている時に、こうした無謀な事業をまったく見直そうとしない行政のあり方は、長い歴史を持つ大阪市政のなかでも特筆すべき愚策であったと後世に評価される事でしょう。

地方自治体になし崩し的に負担を求める関空事業

 第四に、関西国際空港の地盤沈下対策の1億7500万円の出資であります。
 関空事業は今、空港島の地盤沈下と経営危機という二つの大問題に直面しています。地盤沈下の問題では、「開港後10年で11.5メートル」という予測をすでに超えて沈下していることが明るみに出され、空港会社はその応急対策として給油施設などへの地下水の浸水を防ぐための遮水壁設置を決めました。遮水壁設置そのものは現空港の安全対策から言えば必要なものではありますが、今後どこまで沈下を続けるのかなどのデーターも明らかにせず、科学的な見通しもないままに、地方自治体になし崩し的に負担を求めるやり方であり問題であります。
 経営危機の問題では、現在の一期分だけでも、累積赤字1571億円、有利子負債1兆円以上、利子払いだけでも年間4百数十億円など、赤字決算から抜け出すことができないばかりか、二期工事についても今や、来年度予算編成を前にして大蔵省からも収支見通しを危惧する声が出る、関西財界や大阪府知事は今以上に地元負担を増やしてでも工事続行を求めるなど、矛盾があらわになっているのであります。今こそ、無謀な二期工事は直ちに中止をして、現在の一期分についても、国が責任を負うべき事業なのに地元に過大な負担を求めて来たやり方や、株式会社で空港を運営する民間活力方式そのものの見直し・再検討が迫られていることを指摘をしておくものであります。

暮らしに関する公共事業などは賛成民

 最後に、学校校舎や市営住宅の補修、地下鉄駅のエレベーター・エスカレーターの設置、阪和線連続立体交差事業など暮らしに関連する公共事業など賛成できるものがあるものの、補正予算全体として、市民の切実な願いに応えるものになっていないという点から反対であることを表明して討論といたします。